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アイリッジは17年7月期大幅増益予想で増額余地、popinfoユーザー数は6500万を突破
- 2017/7/25 07:12
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)は、スマホ向けO2Oソリューション事業を展開し、電子地域通貨などFinTechソリューションも推進している。popinfo利用ユーザー数は増加基調で17年6月に6500万を突破した。17年7月期大幅増益予想で増額余地がありそうだ。株価は中期成長力を評価して上値を試す展開が期待される。
■O2Oソリューション事業を展開
自社開発O2Oソリューション(組み込み型プログラム)である位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfo(ポップインフォ)提供から、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を包括的に展開している。
popinfoは企業や店舗のスマホアプリに組み込み、アプリユーザーのスマホ待ち受け画面に伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報やメッセージを、プッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。位置情報・属性情報・時間を組み合わせて指定した場所・人・時間帯で配信が可能なため、実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。
収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。導入企業数増加と利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型ビジネスモデルだ。
なお現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期の構成比が高い特性がある。ただしpopinfo利用ユーザー数が増加基調であり、今後はストック型収益の月額報酬の構成比上昇が期待される。
■導入アプリ数・利用ユーザー数は増加基調
O2Oマーケティングやオムニチャネル化の進展も背景として、popinfo導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。GU、三井ショッピングパーク、三菱東京UFJ銀行、三井住友カード、阪急阪神、東急電鉄、トリンプ、朝日新聞社など、業種を問わず大企業のアプリ中心に採用され、当社の第3位株主であるNTTデータ<9613>経由の導入も増加している。O2Oソリューションを包括的に展開していることが強みだ。
16年7月イーコンテクストと共同で全国のバス事業者にスマホアプリ決済サービス「BUS PAY」の提供を開始、16年9月ファミリーマートの公式アプリ「ファミリーマートアプリ」および「Famiポートアプリ」開発を支援、16年12月ロケーションバリューが開発支援したJALカード会員向け公式アプリ「JALカードアプリ」にpopinfoを導入した。
17年4月JA全農の公式アプリ「JA全農」バージョンアップの開発を支援、東急電鉄「東急線アプリ」バージョンアップの開発を支援した。またpopinfoを活用したNTTデータの金融機関向けスマホアプリ「アプリバンキング」が機能拡張され、次世代アプリとして17年7月提供開始される。
09年サービス開始したpopinfoの利用ユーザー数(プッシュ通知配信に同意したユーザー数、アプリごとにカウント)は14年1月1000万突破、14年9月1500万突破、15年3月2000万突破、15年9月2500万突破、16年1月3000万突破、16年3月3500万突破、16年5月4000万突破、16年7月4500万突破、16年11月5000万突破、17年1月5500万突破、17年4月6000万突破、そして17年6月6500万突破と増加基調である。
■サービスラインナップ拡充、フィンテックとO2Oの融合など推進
中期成長に向けて顧客層拡大(大手企業への深堀、中堅企業への拡大)や、サービスラインナップ拡充(popinfoの情報配信機能を軸として、アナリティクス機能、クーポン機能、ポイント管理機能、iBeaconを用いた来店検知機能、ゲーム機能、アプリ決済機能など)による単価上昇に取り組んでいる。
さらに効果的なO2Oマーケティングを実現するため、ビッグデータ解析によって従来よりも精度の高いターゲティング機能の整備を図る、ポイント残高管理機能を強化するなど、従来の集客・販売促進だけでなくターゲティングや決済までを網羅する方針だ。
17年5月には飛騨信用組合と共同で、スマートフォンアプリを活用した電子地域通貨プラットフォーム「さるぼぼコイン(仮称)」の実証実験を開始した。金融機関による地域通貨の電子化は業界初となる。また17年7月には、スマートフォンを活用した電子地域通貨のプラットフォーム「MoneyEasy(マネーイージー)」の技術をベースとして、企業内電子通貨「オフィスコイン」の提供開始を発表した。
■アライアンスも活用
15年12月テックビューロと業務提携した。popinfoとテックビューロのプライベート・ブロックチェーン技術「mijin」を組み合わせて、FinTechとO2Oの融合を推進する。
16年3月NTTドコモのO2O戦略子会社であるロケーションバリューと業務提携した。国内最大級のO2O連携である。16年3月クレディセゾン<8253>が当社株式を追加取得し、当社、クレディセゾンおよびデジタルガレージ<4819>との3社連携を強化した。FinTechソリューションの共同開発を推進する。
17年2月サイバーエージェントのアドテクノロジー商品開発を行うアドテクスタジオと、位置情報を活用した行動分析や広告配信分野で機能連携を開始した。17年5月にはメディカルネットと共同で宝くじ業界向けポイントサービス「たかポン」の提供開始を発表した。
■17年7月期第3四半期累計は大幅増収増益
今期(17年7月期)第3四半期累計(8月~4月)非連結業績は、売上高が前年同期比27.1%増の11億05百万円、営業利益が同2.0倍の1億60百万円、経常利益が同2.0倍の1億61百万円、純利益が同2.2倍の1億14百万円だった。月額報酬、アプリ開発・コンサル等とも順調に推移し、内製化進展による原価率改善も寄与して大幅増収増益だった。
サービス別の売上高は、O2O関連が同27.1%増の11億05百万円(月額報酬が同69.9%増の3億51百万円、アプリ開発・コンサル等が同13.8%増の7億54百万円)だった。月額報酬の売上構成比は31.8%で同8.0ポイント上昇した。
月額報酬はユーザー数が大幅伸長し、クーポンやポイントなど新たなサービス付与による単価上昇も寄与した。17年4月末popinfo利用ユーザー数は6117万で、16年7月末の4500万に対して1617万増加した。アプリ開発・コンサルでは大型案件を計上した。
売上総利益は同32.3%増加し、売上総利益率は38.2%で同1.5ポイント上昇した。増収効果に加えて、開発内製化が進展して外注費比率が低下した。販管費は同9.1%増加したが、販管費比率は23.7%で同3.9ポイント低下した。採用費や人件費などの増加を増収効果で吸収した。17年4月末の従業員数は61名で16年7月期末比2名増加した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期3億75百万円、第2四半期2億68百万円、第3四半期4億62百万円、営業利益は65百万円、9百万円、84百万円だった。第1四半期は大型のアプリ開発案件が寄与した。
■17年7月期通期も大幅増収増益予想で増額余地
今期(17年7月期)非連結業績予想(9月9日公表)は売上高が前期(16年7月期)比30.1%増の16億円、営業利益が同46.1%増の2億円、経常利益が同45.5%増の2億円、純利益が同49.7%増の1億38百万円としている。
サービス別売上高の計画は、O2O関連が同30.1%増の16億円(月額報酬が同35.2%増の4億円、アプリ開発・コンサル等が同28.4%増の12億円)としている。月額報酬ではpopinfo利用ユーザー数2000万~2500万ユーザー増加を見込み、アプリ開発・コンサル等では既存取引先との取引拡大や新規取引先の開拓が順調に推移する見込みだ。新規サービス・事業は織り込んでいない。
利益面では、新規サービス・事業への取り組みなどの先行投資負担を、増収効果や内製化進展による売上総利益率上昇で吸収する。売上総利益率は1ポイント程度の上昇を想定している。また新規事業・新規サービスへの取り組みを強化して、下期に採用関連コストや開発関連コストが増加する見込みだ。今期の採用は10人程度で17年7月期末の人員は69名の想定としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.1%、営業利益が80.2%、経常利益が80.5%、純利益が83.3%と高水準である。第3四半期の構成比が高い収益特性があり、下期に採用関連コストや開発関連コストが増加する見込みだが、通期予想に増額余地がありそうだ。
■popinfo利用ユーザー数増加基調でストック型収益拡大期待
popinfo利用ユーザー数の目標は20年を目途に1億人超としている。顧客層の拡大、ポイントやアプリ決済などサービスラインナップ拡充による単価上昇、開発内製化進展による売上総利益率上昇、そしてpopinfo利用ユーザー数増加に伴うストック型収益(月額報酬)の構成比上昇などで、中期的にも収益拡大基調が期待される。
なお配当は無配継続としている。利益配分については成長過程にあるため、人材確保・育成やサービス強化のための投資、営業強化のための広告宣伝は販売促進、その他成長投資に対して迅速に対応することが重要と考え、現在まで配当を実施していない。今後においても当面は成長投資に備えて内部留保の充実を図る方針としている。将来的には利益還元を検討するが、配当実施の可能性および実施時期等については現時点において未定としている。
■株価は中期成長力を評価して上値試す
株価(17年5月1日付で株式2分割)は6月の戻り高値圏から反落してやや上値の重い展開だが、一方では着実に下値を切り上げている。
7月24日の終値2358円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS25円02銭で算出)は94倍近辺、実績PBR(前期実績に株式2分割を考慮したBPS161円73銭で算出)は15倍近辺である。また時価総額は約130億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインの形だ。中期成長力を評価して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)