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イワキは17年11月期大幅増益予想で増額の可能性
- 2017/7/27 08:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
イワキ<8095>(東1)は医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社で、メーカー機能も強化している。ジェネリック医薬品関連の好調や化学品の収益改善で17年11月期第2四半期累計は大幅増益だった。通期も大幅営業増益予想である。そして増額の可能性が高いだろう。株価は06年来の高値圏だ。依然として1倍割れの低PBRも見直して上値を試す展開が期待される。
■医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社
医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社で、岩城製薬(医薬品)やメルテックス(表面処理薬品)のメーカー機能も強化している。
事業区分は医薬・FC(Fine Chemical)事業(医薬品原料の製造・販売、医薬品の製造・販売、体外診断薬・研究用試薬・医療機器の販売)、HBC(Health & Beauty Care)事業(化粧品原料・機能性食品原料の販売、一般用医薬品・関連商品の卸売、化粧品通信販売)、化学品事業(表面処理薬品・電子工業薬品・化成品の製造・販売、表面処理設備の製造・販売)、食品事業(食品原料の製造・販売)の4事業とし、4事業をさらに分解したBU(ビジネスユニット)を戦略単位としている。
16年11月期の売上高構成比(連結調整前)は医薬・FC事業39%(原料薬品26%、医薬品11%、その他2%)、HBC事業40%(HBC原料18%、ファルマネット18%、オリジナル製品4%)、化学品事業10%(表面処理薬品6%、スペシャリティマテリアル1%、表面処理設備2%)、食品事業7%だった。
なお化学品事業は表面処理薬品分野での業務提携解消に伴って一時的に売上が大幅減少したが、新規導入製品のプリント配線板用「ルーセントカパー」シリーズへの切り替えなどで収益回復を推進している。
■卸売・商社・メーカー機能の連携を強化、天然界面活性剤市場に参入
全国の医薬品卸・医療機関・ドラッグストアなどに医薬品や機能性食品などを供給する卸売機能、国内外のメーカーなどを開拓して輸出入する商社機能、グループ内に岩城製薬とメルテックスのメーカー機能を併せ持つことが強みで、卸売・商社・メーカー機能の連携を強化している。なお17年1月に調剤薬局運営の子会社パートナー・メディカル・システムズを譲渡して経営資源の集中も推進している。
中期的な事業基盤強化と収益拡大に向けて、医薬品事業での共同開発・受託品の拡大、ドラッグストア向けPB商品など自社企画商品の開発強化、医薬品原料事業における市場シェア拡大、海外サプライヤーとの連携強化、岩城製薬の生産能力増強と新製品開発、メルテックスの新製品拡販、海外展開強化などを推進している。
16年7月にはシンガポールのASC社と業務提携して天然界面活性剤市場に参入した。ASC社は非可食天然物「マフア」の種から抽出した油脂を発酵させて天然界面活性剤を製造する高度な技術を有している。ASC社がインドの子会社で商業生産化する天然界面活性剤「ACS-Sophor」を、医薬品・化粧品・健康食品・食品の事業分野において当社が優先的に販売する権利を得た。
■17年11月期第2四半期累計は計画超の大幅増益
今期(17年11月期)第2四半期累計(12月~5月)連結業績(6月19日に売上高を減額、利益を増額修正)は、売上高が前年同期比4.5%増の280億43百万円、営業利益が2.5倍の8億26百万円、経常利益が2.7倍の9億07百万円、純利益が9.1倍の8億67百万円だった。ジェネリック医薬品関連が好調に推移し、化学品事業の収益改善も寄与して大幅増益だった。営業利益は第2四半期累計として過去最高だった。純利益は特別利益に投資有価証券売却益を計上したことも寄与した。
売上総利益は8.8%増加し、売上総利益率は20.9%で0.8ポイント上昇した。販管費は0.4%減少し、販管費比率は17.9%で0.9ポイント低下した。営業外では持分法投資損益が改善し、為替差損が減少した。特別利益では和光純薬工業の自己株式取得に応じた投資有価証券売却益2億19百万円を計上した。
医薬・FC事業は売上高が3.3%増の105億74百万円で営業利益(連結調整前)が30.5%増の8億円だった。医療用医薬品分野で主力の外皮用剤、医薬品原料分野で新規開発医薬品向け原料やジェネリック医薬品原料が好調に推移し、生産性改善効果も寄与した。
HBC事業は売上高が5.0%増の114億16百万円で営業利益が33.5%減の14百万円だった。機能性食品原料、化粧品原料、および通販化粧品が堅調に推移したが、通販化粧品分野における広告宣伝費の増加で減益だった。
化学品事業は売上高が17.9%増の30億78百万円で営業利益が17百万円の赤字(前年同期は3億21百万円の赤字)だった。表面処理薬品分野で見込んでいた大型案件が遅延したが、国内における拡販効果などで営業赤字が大幅に縮小した。
食品事業は売上高が3.1%増の19億47百万円で営業利益が1百万円(同14百万円の赤字)だった。その他は売上高が17.4%減の10億25百万円で営業利益が27.9%減の24百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期130億91百万円、第2四半期149億52百万円、営業利益は3億51百万円、4億75百万円だった。
■17年11月期通期も大幅増益予想で増額の可能性
今期(17年11月期)通期の連結業績予想(1月12日公表)は、売上高が前期(16年11月期)比5.2%増の580億円、営業利益が同39.2%増の13億60百万円、経常利益が同30.6%増の14億円、純利益が8億40百万円(前期は8百万円)としている。配当予想は前期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)で予想配当性向は23.7%となる。
営業利益は過去最高更新の見込みだ。医薬・FC事業で政府の後発医薬品使用促進策も追い風となってジェネリック医薬品関連が伸長する。化学品事業は表面処理薬品分野で新規導入製品への切り替え・採用が進展し、減価償却費減少も寄与して収益トントンへの回復を目指している。
セグメント別の売上高計画は、医薬・FC事業が同3.3%増の220億円、HBC事業が同5.5%増の235億円、化学品事業が同19.8%増の63億円、食品事業が同3.6%増の39億円、その他が同1.5%減の23億円としている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.4%、営業利益が60.7%、経常利益が64.8%、純利益が103.2%と高水準である。医薬・FC事業が好調であり、化学品事業の収益改善も寄与して、通期予想も増額の可能性が高いだろう。
■中長期ビジョンで25年11月期ROIC10%以上目指す
創業111年を迎える25年11月期に向けて、グループ中長期ビジョン「Vision i-111」および新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)を策定している。
グループ中長期ビジョン「Vision i-111」では、基本戦略を「策揃え企業になる=Intelligent」「ナンバーワン製品・事業に注力する=Innovative」「海外市場への事業展開を図る=International」「資本効率を意識した事業運営を行う=Investment」として、数値目標に25年11月期連結売上高1000億円、ROIC10.0%以上を掲げた。
また新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)では目標に18年11月期売上高600億円、営業利益10億円、ROIC4.0%以上を掲げた。
医薬・FC事業(イワキ、岩城製薬)では、原料の選定から最終製品の提供までを「策揃え」で提供するほか、国内外の医薬関連企業との協業を通して、さらなる市場拡大に努める。
HBC事業(イワキ、アプロス)では、OEMやPB製品の自社企画・提案を通して国内の健康食品原料市場における高シェアを維持・拡大する。海外市場の開拓も推進する。化粧品通信販売では「シルキーカバーオイルブロック」の拡販を図る。
化学品事業(メルテックス)では、高い技術力・ブランド力を持つIチップ抵抗向けスズめっき「メルプレートSN」シリーズの世界市場シェアNO.1を確保するとともに、15年から販売開始した大型新製品のプリント配線板向け硫酸銅めっき「ルーセントカパー」シリーズのグローバルシェア拡大を図る。
食品事業(イワキ、持分法適用会社のボーエン化成)では、商品開発効率化、生産コスト低減、ボーエン化成における国産・高付加価値原料の受託加工強化などを推進する。海外展開に関してはハラル対応原料に特化したマーケティングを開始し、マレーシア、インドネシア、中近東諸国の市場開拓に注力する。
■株価は06年来の高値圏、依然としてPBR1倍割れ
株価は水準を切り上げて7月10日の480円まで上伸した。06年来の高値圏である。
7月26日の終値451円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS25円27銭で算出)は17~18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS506円23銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約155億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線サポートラインとなって上昇トレンドだ。依然として1倍割れの低PBRも見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)