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パシフィックネットは下値固め完了感、18年5月期業績予想は非開示だが収益改善期待
- 2017/7/27 08:20
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パシフィックネット<3021>(東2)は、中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス企業である。18年5月期業績予想は非開示としたが、収益改善が期待される。株価は下値固め完了感を強めている。反発展開が期待される。
■中古情報機器のリユース・データ消去などを展開
中古パソコン・モバイル機器のリユースやデータ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。パソコン、タブレット端末、スマホなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、事業者向けレンタル事業も展開している。
収益面では中古情報機器の流通量の影響を受けやすい特性がある。配当については継続的な利益還元を基本としたうえで、業績連動型の配当方式を採用し、当期純利益の30%以上を配当性向の目安として決定することを基本方針としている。
■データ消去・処分サービスなどセキュリティ体制に強み
全国主要都市8ヶ所の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のセキュリティ体制に強みを持つ。IT機器データ消去・処分サービスではマイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。
15年5月には電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定された。マイナンバー完全対応データ消去サービスに関しては16年1月都築テクノサービスとパートナーシップ締結、16年1月米国方式のハードディスク破壊サービス(NSA/DoD準拠のV字型破壊)を開始した。
■買取・回収サービスを強化
14年10月日本初のIT機器処分管理Webサービス「P-Bridge」の無償提供開始、15年10月特許取得した。ソリューション・プラットフォームと位置付けて16年1月には「P-Bridge」と、15年9月公開の情報システム部門向けWEBメディア「ジョーシス」を連携して会員アカウントを共通化した。
■リユースの社会的取り組みを強化
14年11月Windowsクラスルーム協議会「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を開始した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。
15年7月特定非営利活動法人.sopa.jpと子どもの学習支援と企業の使用済みパソコンの最活用を行うCSRプログラム「リユースforキッズ」を開始し、環境省の「平成27年度使用済製品等のリユースに関するモデル事業」として採択された。
■周辺領域への事業展開も推進
中期成長に向けて新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業への展開も推進している。15年10月光通信<9435>と合弁会社2B(トゥー ビー)を設立してBtoB専門MVNO(仮想移動体通信事業者)事業に進出、15年11月ドローンの法人向けレンタル開始、16年3月thisisと協業して法人向けレンタルアートサービス開始、16年8月AED(自動体外式除細動器)レンタル・販売を開始した。
17年1月には、ドローンによる太陽光発電所のソーラーモジュールIR検査サービス「ドローンアイ」の提供を開始した。開発・販売を行うエナジー・ソリューションズのパートナーとして「ドローンアイ」を全国展開する。17年6月にはM&Aアドバイザリ・仲介サービス事業を行う子会社エムエーピー(MAP)を設立した。
■17年5月期は大幅減益
前期(17年5月期)連結業績は売上高が前々期(16年5月期)比1.8%増の46億43百万円、営業利益が86.1%減の16百万円、経常利益が78.2%減の29百万円、純利益が6百万円の赤字(前々期は90百万円の黒字)だった。計画を下回り大幅減益だった。
国内16年4月~17年3月のビジネス向け新品パソコンの出荷台数は9.8%増加(出典:MM総研)したが、新たな機器が導入されてから使用済み機器が排出されるまでに少なくとも半年以上のタイムラグがあるため、企業等からの使用済み情報機器の排出台数は低調に推移した。中古モバイル機器市場は拡大基調で個人販売は堅調に推移したが、仕入競争が激化し、事業拡大に向けた先行投資、一部店舗の統廃合に伴う移転・閉鎖関連費用なども影響した。
売上総利益は4.2%減少し、売上総利益率は40.8%で2.5ポイント低下した。販管費は1.0%増加したが、販管費比率は40.4%で0.3ポイント低下した。特別損失では事務所移転費用17百万円を計上した。ROEはマイナス0.3%で5.0ポイント低下、自己資本比率は57.3%で6.1ポイント低下した。配当は前々期と同額の年間19円(期末一括)とした。
セグメントに見ると、引取回収・販売事業は売上高が2.8%減の37億21百万円で営業利益が4百万円の赤字(前々期は33百万円の黒字)だった。レンタル事業は売上高が25.2%増の9億22百万円で営業利益が75.8%減の20百万円だった。レンタル事業は営業強化などで増収だったが、事業拡大に向けた先行投資などで減益だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期11億47百万円、第2四半期11億04百万円、第3四半期11億38百万円、第4四半期12億54百万円、営業利益は45百万円の赤字、20百万円の赤字、39百万円の黒字、42百万円の黒字だった。収益は第1四半期および第2四半期で底打ちした可能性がありそうだ。
■18年5月期業績予想は非開示だが収益改善期待
今期(18年5月期)連結業績予想および配当予想は非開示とした。Windows10入れ替え需要による市況の本格回復、収益構造改革や戦略的投資の効果発現、連結子会社2BやMAPの事業拡大などで増収増益を計画しているが、現時点で合理的な予測は困難なため、合理的に予測することが可能になった時点で速やかに業績予想を開示する予定としている。収益改善を期待したい。
■中期経営計画の目標値見直しだが基本戦略に変更なし
15年7月策定の中期経営計画「VISION2018」も目標値を未定とした。
成長に向けた基本戦略に変更はなく、競争優位確立と営業マーケティング強化による顧客拡大、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応したレンタル市場・リユース市場・周辺事業の創出と展開、レンタル事業拡大とリユース事業との相乗効果の発揮、そして戦略実行力の強化と自律型組織・人財への変革としている。
事業モデルとサービス分野にも変更はない。機器の導入・運用から使用済み機器の処分・再利用までをトータルにカバーするLCM(ライフサイクルマネジメント)を事業ドメインに設定し、LCMを高い相乗効果のある5つの事業・サービス分野に分け、新たな成長モデルを構築する。
5つの事業・サービス分野は、ITファイナンス(最新のIT機器導入と運用を中長期レンタル・付帯サービスで支援)、ITセキュリティ(使用済み機器のデータ消去等で情報漏えいを防止)、ITエコロジー(リユースで資源再利用を促進)、IT通信(モバイル化やIoTを通信等で支援)、ITメディア(ITに携わる方々に活きた情報と交流の場を提供)としている。
■株価は下値固め完了感
株価は安値圏500円近辺でモミ合う展開だ。ただし17年5月期大幅減益に対するネガティブ反応は限定的で、下値固め完了感を強めている。
7月26日の終値508円を指標面で見ると、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS353円49銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約26億円である。
週足チャートで見ると500円近辺が下値支持線の形だ。下値固め完了して反発展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)