日本エンタープライズは18年5月期大幅営業増益予想

 日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信、店頭アフィリエイト広告、企業向けソリューションなどを展開し、EC分野やM2M/IoT分野への事業領域拡大戦略も推進している。17年5月期は減収減益だったが、18年5月期は大幅営業増益予想である。株価は調整一巡して反発展開が期待される。

■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開

 交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのモバイルコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。17年5月期セグメント別売上高構成比はコンテンツサービス事業37%、ソリューション事業63%だった。

 なお18年5月期からセグメント区分を変更して、クリエーション事業(旧コンテンツサービス事業、および旧ソリューション事業のビジネスサポートサービス、太陽光発電など)と、ソリューション事業(システム受託開発・運用サービス、店頭アフィリエイトを中心とした広告代理サービス、海外サービスなど)とする。

 自社サービスの提供を通じて新しいライフスタイル・ビジネススタイルを創造するクリエーション事業、ITソリューションの開発を通じて顧客ビジネスに新しい価値を提案するソリューション事業、という区分である。

■中国では携帯電話販売事業を展開

 中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営や電子コミック配信サービスなどを手掛けている。15年10月には中国向けサンリオキャラクター商品卸売事業を行う合弁子会社NE銀潤を設立した。中国における事業展開については、携帯電話等販売事業、卸売をはじめとしたソリューション事業(NE銀潤に対するサンリオキャラクター商品の日本からの輸出など)、モバイルコンテンツ事業を積極展開する。

■中期成長に向けて事業領域拡大を推進

 中期成長に向けて、M&A・アライアンスも積極活用し、ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化、成長分野のM2M/IoTへの事業領域拡大などを推進している。

 13年3月andOneを子会社化、14年4月子会社HighLab設立、14年11月ア会津ラボを子会社化、15年6月山口再エネ・ファクトリー設立、15年7月プロモートを子会社化、15年12月クルーズ<2138>が運営するフリマアプリ「Dealing」サービスを譲り受けてEC分野に参入、16年2月スマートバリュー<9417>と業務資本提携、16年4月エキサイト<3754>と業務提携した。

 なおゲーム開発・運営の連結子会社HighLabを17年5月吸収合併した。早期収益確保・拡大に向けて、チャットアプリ「Fivetalk」を軸に品質向上、機能強化、IoTインターフェース等に向けた各種施策に取り組む。

■法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針、BtoB分野に本格参入

 法人向け事業では、14年8月スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリ「AplosOneソフトフォン」開発、14年10月ビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」発表、15年5月会津ラボが会津若松市の「次世代型食品生産トライアル事業」に対するスマート農業支援発表、15年6月IDCフロンティアと業務提携してクラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービス開始した。

 16年1月千葉県山武群横芝光町「横芝光町情報発信アプリサービス開発業務」を受託、16年2月静岡県下田市の子育て支援アプリ「しもだこどもDiary」を発表した。16年6月東京都中央卸売市場築地市場・東京魚市場卸協同組合と協業で、電子商取引事業の子会社いなせりを設立して企業間(BtoB)EC分野に本格参入した。

 16年10月パートナーエージェント<6181>と共同で、長野県南佐久郡川上村「女性活躍推進および結婚環境向上推進」における官民連携施策「KAWAKAMI SMART PROJECT」にシェアリングエコノミーシステム「MAKETIME」の提供を開始した。

 17年6月、いなせりと業務用酒類専門商社の河内屋が鮮魚ECサービス「いなせり」の利用活性化に向けて業務提携した。河内屋の飲食店への営業力と販売網を活用して「いなせり」会員拡大を促進する。

■IoT、ドローン、ブロックチェーン関連の事業化目指す

 ドローン関連は、会津ラボが会津大学との産学連携でドローン群制御技術「Dronet(ドロネット)」を開発し、17年1月には会津ラボと鈴与マタイが風力発電設備点検での有線ドローン実用化を目指して実証実験を開始した。

 IoT関連では16年7月、会津ラボがタカショー<7590>および会津大学と協業し、ガーデニング・エクステリア製品をインターネットに接続して快適な癒し空間を作るIoT商品の共同開発を行うと発表した。17年2月には会津ラボが、IoTにおけるコミュニケーションツールとして「モノ」の感情を可視化する「mononome(もののめ)」を開発した。

 17年5月には会津ラボがソラミツのブロックチェーン基盤「Hyperledger Iroha」の電力領域におけるユースケース・パートナーとなり、ブロックチェーン技術を活用した様々な電力サービスの検討を開始した。また今回のパートナー参画を通じて、エナリス<6079>が推進する新しい電力サービスの商用化に向けた実証等を共同で行う。さらに17年6月には会津ラボとエナリスが「ブロックチェーンを活用した電力取引サービス」の共同検証を進めていると発表した。福島県の再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業に採択され、福島県内で実証事業を実施する。

■17年5月期は売上高が計画下回り減収減益

 前期(17年5月期)連結業績は、売上高が前々期(16年5月期)比12.5%減の48億38百万円、営業利益が同12.6%減の1億92百万円、経常利益が同8.9%減の2億29百万円、純利益が同69.6%減の99百万円だった。

 売上高が計画を下回り、貸倒引当金繰入額の追加計上も影響して減収減益だった。コスト面で広告宣伝費を中心に販管費が減少したが、コンテンツサービス事業が広告投資抑制による会員数減少、キャリア定額制でのUU単価低下などでキャリア月額制・定額制向けコンテンツの減収が続き、ソリューション事業における広告代理サービスの市場縮小、海外の市場成長鈍化などで減収となり、受託開発の売上構成比上昇による売上総利益率低下も影響した。

 売上総利益は15.5%減少し、売上総利益率は40.5%で1.5ポイント低下した。販管費は15.8%減少し、販管費比率は36.6%で1.4ポイント低下した。ROEは2.0%で4.4ポイント低下、自己資本比率は80.2%で3.3ポイント低下した。配当は期末1円減額し、前々期比1円減配の年間2円(期末一括)とした。配当性向は81.6%である。

 セグメント別に見ると、コンテンツサービス事業は売上高が18.1%減の17億97百万円(交通情報13.8%減、エンターテインメント22.0%減、ライフスタイル17.6%減)で営業利益(連結調整前)が4.4%増の7億15百万円、ソリューション事業は売上高が8.8%減の30億40百万円(受託開発・ソリューション9.3%増、広告代理サービス26.7%減、海外25.0%減)で営業利益が27百万円の赤字(前々期は93百万円の黒字)だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期12億45百万円、第2四半期12億49百万円、第3四半期11億69百万円、第4四半期11億75百万円、営業利益は67百万円、99百万円、59百万円、33百万円の赤字だった。

■18年5月期は大幅営業増益予想

 今期(18年5月期)連結業績予想(7月12日公表)は、売上高が前期(17年5月期)比1.4%減の47億70百万円、営業利益が30.2%増の2億50百万円、経常利益が10.9%増の2億55百万円、純利益が5.5%増の1億05百万円としている。配当予想は前期と同額の年間2円(期末一括)としている。予想配当性向は77.2%となる。

 売上面ではクリエーション事業のビジネスサポートサービスが伸長するが、ソリューション事業の広告代理サービスの市場縮小の影響で減収見込みとしている。利益面では原価率改善や販管費減少で大幅営業増益見込みとしている。収益改善を期待したい。

■6つのコンテンツプラットフォームを核としてサービス連携・拡充を推進

 重点戦略としては、ヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」、総合電子書籍サービス「BOOKSMART」、フリマアプリ「Dealing」、道路・渋滞情報サービス「交通情報サービス」、メッセンジャーアプリ「Fivetalk」、クーポンアプリ「振ってクーポン」の6つのコンテンツプラットフォームを核として、サービス連携・拡充を推進する。

 コンテンツサービス事業ではキャリアプラットフォーム(定額制・月額制)が下降トレンドのため、ヒットコンテンツ創出に向けて新規サービス推進部を新設した。VRゲームの初リリースを機に、多様な取り組みに挑むとしている。ソリューション事業では企業・自治体向けアプリ・システム受託開発・運用を積極推進し、ECやIoT分野などでの新サービス開発・事業化に取り組む方針だ。

■株価は調整一巡して反発期待

 株価は6月20日に築地市場移転問題を材料視して年初来高値350円まで急伸する場面があったが、買いが続かず反落した。その後やや水準を切り下げたが、260円近辺で推移して調整一巡感を強めている。

 7月27日の終値262円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円59銭で算出)は101倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間2円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS122円14銭で算出)は2.1倍近辺である。時価総額は約106億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、調整一巡して反発展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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