PALTEKは目先的な売り一巡して戻り試す、17年12月期予想を減額したが前期比大幅増益予想に変化なし

 PALTEK<7587>(東2)はザイリンクス社のFPGAを主力とする半導体輸入商社である。17年12月期第2四半期累計は計画をやや下回ったが大幅増益だった。為替影響などで通期予想を減額修正したが、前期比では大幅増益予想に変化はない。また為替次第で一転増額の可能性がありそうだ。株価は減額修正を嫌気する形になったが、目先的な売りが一巡して戻りを試す展開が期待される。

■FPGAなどの半導体事業が主力

 ザイリンクス社のFPGA(PLDの一種で設計者が手元で変更を行いながら論理回路をプログラミングできるLSI)を主力として特定用途IC、汎用IC、アナログ、メモリなどを扱う半導体事業、および試作ボードや量産ボードなどを受託設計・開発・製造(ODM、EMS、OEM)するデザインサービス事業、新規分野としてスマートエネルギー事業(病院・介護施設向け停電対策システム)を展開している。海外は香港に拠点展開している。

 16年12月期売上構成比は半導体事業94.6%(FPGA36.0%、特定用途IC16.6%、汎用IC10.3%、アナログ7.6%、メモリ24.2%)、デザインサービス事業5.0%、その他0.4%だった。

 主要仕入先は、FPGAがザイリンクス社、汎用ICがNXPセミコンダクターズ社、マイクロチップテクノロジー社、アナログがリニアテクノロジー社、メモリがマイクロンテクノロジー社である。用途別には産業機器向けを主力としてFA機器、通信機器、放送機器、医療機器、車載機器向けなどに展開し、センサ分野ソリューションも強化している。主要販売先はNEC<6701>、京セラ<6971>、オリンパス<7733>などである。

 連結子会社はレート制御機能搭載「H.264コーデック装置」を開発しているエクスプローラ、半導体事業およびMEMS(微小電気機械システム)事業のテクノロジー・イノベーションである。

■M&A・アライアンスも活用して事業領域拡大

 M&A・アライアンスも活用して事業領域を拡大している。16年2月沖電気工業<6703>とIoT市場向け無線通信製品の販売パートナー契約を締結、IoT市場向けゲートウェイのロバステル社(中国)と販売代理店契約を締結、16年4月米フリアーシステムズ社の高度道路交通システム(ITS)市場向け赤外線製品の販売を開始、16年10月IoT通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコムの「SPS認定済デバイスパートナー」に認定された。

 17年3月ソラコムおよびIoTクラウドプラットフォームのUPRと連携してインダストリアルIoTソリューションパッケージの販売を開始、企業向けビデオソリューションのHaivision社(カナダ)と販売代理店契約を締結、産業用コンピュータモジュール専業メーカーcongatec社(独)と販売代理店契約を締結した。

 7月6日には紙梱包資材・システムのRanpak社との販売代理店契約締結、8月3日にはTPMS・車両向けセンサーネットワークのLDLテクノロジーとの販売代理店契約締結、8月4日にはスカイロボットの世界初の赤外線カメラ搭載ヘッドマウントディスプレイの開発支援を発表している。

■仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動する収益特性

 一部の主要仕入先に対して保有する仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動し、売上総利益の増減に影響を与える収益特性がある。ドル高・円安は売上総利益押し上げ要因、ドル安・円高は売上総利益押し下げ要因となる。為替影響は15年12月期が4億31百万円の売上総利益増加要因、16年12月期が5億30百万円の売上総利益減少要因だった。

■17年12月期第2四半期累計は計画を下回ったが前年同期比では大幅増益

 8月3日発表した今期(17年12月期)第2四半期累計(1月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比7.0%減の160億74百万円、営業利益が5.5倍の5億33百万円、経常利益が4.8倍の5億63百万円、純利益が7.2倍の3億70百万円だった。

 半導体事業の通信機器向けFPGA、およびデザインサービス事業が想定を下回ったため、全体として売上・利益とも計画をやや下回ったが、前年同期との比較では売上総利益率の低い製品の売上が減少して売上総利益率が上昇し、仕入値引きドル建て債権の評価額も寄与して大幅増益だった。

 事業別売上高は半導体事業が6.5%減の152億39百万円(内訳はFPGAが4.9%減の59億51百万円、特定用途ICが1.6%増の28億30百万円、汎用ICが22.5%減の16億15百万円、アナログが30.8%増の16億17百万円、メモリが18.3%減の32億20百万円)で、デザインサービスが17.0%減の7億67百万円、その他が25.0%増の68百万円だった。

 半導体事業の用途別売上高は産業機器向けが7.2%減の75億14百万円、通信機器向けが13.6%減の20億79百万円、民生機器向けが39.1%減の19億45百万円、コンピュータ向けが2.6倍の18億36百万円、その他が2.0%減の18億60百万円だった。

 為替影響含む売上総利益は30.8%増加し、売上総利益率は13.2%で3.8ポイント上昇した。為替影響額は49百万円の売上総利益増加(前年同期は4億42百万円の売上総利益減少)要因だった。為替影響を除く実力値ベースの売上総利益は12.9%増加し、売上総利益率は12.9%で1.0ポイント上昇した。半導体事業で売上総利益率の低い案件の売上が減少した。販管費は4.1%増加し、販管費比率は9.9%で1.1ポイント上昇した。

 営業利益増減分析では、増益要因が売上総利益率上昇1億50百万円、仕入値引きドル建て債権評価額増加を含む為替影響4億92百万円、減益要因が売上高の減少1億44百万円、販管費増加61百万円としている。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期77億34百万円、第2四半期83億40百万円、営業利益は3億60百万円、1億73百万円だった。

■17年12月期通期予想を減額修正だが、前期比大幅増益予想に変化なし

 今期(17年12月期)通期連結業績予想は8月3日に減額修正した。売上高は前回予想(5月2日に増額修正)に対して17億円減額して前期(16年12月期)比3.1%減の325億円、営業利益は2億70百万円減額して2.0倍の10億50百万円、経常利益は2億20百万円減額して9.6倍の10億60百万円、純利益は1億40百万円減額して7億円(16年12月期は11百万円)とした。

 メモリ製品の民生機器向け、デザインサービスの医療・航空・宇宙向けなどが想定を下回る見込みだ。また為替が計画に対してややドル安・円高水準で推移していることを考慮し、第3四半期の前提為替レートを1ドル=110円32銭として、仕入値引きドル建て債権の評価額減少を含む為替影響を織り込んだ。配当予想は据え置いて前期と同額の年間13円(期末一括)としている。予想配当性向は20.3%となる。

 通期予想を期初計画に対して減額修正したが、前期比では大幅増益予想に変化はない。売上総利益率の想定は前期比2.5ポイント上昇の13.2%である。また為替動向次第で通期予想は一転して増額の可能性があるだろう。

■FPGAの市場拡大に注目

 中期的な収益向上に向けた取り組みとして、半導体事業では高付加価値製品の取り扱い拡大、中核製品であるFPGAのさらなる拡販、第2の柱となる製品の売上拡大(センサー関連やIoT関連製品の拡充など)、医療・産業・通信・放送など成長分野への注力、デザインサービス事業では医療・放送・通信分野の受託設計・開発・ODM強化、自社製品の開発・販売強化、スマートエネルギー事業では病院・介護施設向け停電対策システムの構築・販売を強化する方針だ。

 中核製品のFPGAは、通信・産業・放送・医療・車載機器分野において、新規顧客獲得を含めて拡販を強化する。FPGAは論理回路構成を自由に書き換えられるため、世界的なトレンドとしてプロセッサーを内蔵したFPGAをメインチップとする傾向を強めている。そして今後は自動車の先進運転支援システム(ADAS)分野やIoT関連などを中心として市場拡大が予想されている。

 センサ関連に関しては、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の赤外線カメラモジュールを、産業機器(検査機器、防災機器、産業向け携帯情報端末)やセキュリティ用監視カメラ向けに拡販する方針だ。

 中期経営計画では数値目標に、20年12月期売上高400億円以上、営業利益率5%以上を掲げている。為替動向に注意が必要となるが、高度なデザイン力やソリューション力を武器として中期的に収益拡大基調が期待される。

■株主優待制度は12月末に実施、16年12月期末から導入

 株主優待制度は毎年12月31日現在100株以上保有株主を対象として、保有株式数と継続保有期間に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HPを参照)する。16年12月期末から実施した。

■株価は目先的な売り一巡して戻り試す

 株価は減額修正を嫌気する形で戻り高値圏1000円から急反落したが、売られ過ぎ感を強めている。

 8月7日の終値841円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS63円90銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS812円01銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約100億円である。

 週足チャートで見ると一気に26週移動平均線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。目先的な売りが一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る