建設技術研究所は目先的な売り一巡して戻り試す、17年12月期通期利益予想減額だが一過性要因

 建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタント大手で、マルチインフラ&グローバル企業を目指している。17年12月期第通期の利益予想を減額修正したが、英Waterman Group Plcの連結子会社化に伴う諸費用発生という一過性要因であり、18年12月期は収益拡大が期待される。株価は急落する形となったが、目先的な売りが一巡して戻りを試す展開が期待される。

■総合建設コンサルタントの大手

 総合建設コンサルタント大手で河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。収益面では案件ごとの採算性や売上計上時期によって四半期収益は変動しやすい特性がある。

 13年9月農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを設立、14年4月太陽光発電事業に着手、15年6月環境総合リサーチ(旧ユニチカ環境技術センター)を完全子会社化(非連結子会社)、15年11月組織建築設計事務所の日総建を連結子会社化、16年9月グループ企業の福岡都市技術が日本都市技術に社名変更した。

 5月9日発表した英Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)への公開買い付けについて、6月6日に50.1%の株主による応募の結果、連結子会社すると発表した。さらに6月22日に公開買い付け期間の延長、7月7日に公開買い付け期間の再延長を発表した。既に90%以上を取得しているが、再延長で完全子会社化を目指すとしている。

■17年12月期第2四半期累計は営業微減益だが売上総利益率上昇

 8月7日発表した今期(17年12月期)第2四半期累計(1月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比2.4%増の226億78百万円、営業利益が0.1%減の14億02百万円、経常利益が3.6%増の14億27百万円、純利益が0.6%増の9億04百万円だった。受注高は11.3%増の247億71百万円だった。

 需要が堅調に推移し、売上総利益率が上昇して販管費の増加を吸収した。売上総利益は9.2%増加し、売上総利益率は27.0%で1.7ポイント上昇した。販管費は12.3%増加し、販管費比率は20.8%で1.8ポイント上昇した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期75億86百万円、第2四半期150億92百万円、営業利益は5百万円、13億97百万円だった。

■17年12月期通期利益予想を減額修正だが一過性要因

 8月7日に今期(17年12月期)通期の連結業績予想を修正(売上高を増額、利益を減額修正)した。前回予想(2月13日公表)に対して、売上高は60億円増額して前期(16年12月期)比19.0%増の500億円、営業利益は2億円減額して3.3%減の23億円、経常利益は2億円減額して1.4%減の24億円、純利益は3億50百万円減額して6.7%減の13億50百万円とした。

 英Waterman Group Plcを第3四半期から連結子会社化(みなし取得日は第2四半期末)することに伴い、売上高を増額したが、諸費用が発生するため各利益を減額した。一過性要因であり、18年12月期は英Waterman Group Plcが通期寄与して収益拡大が期待される。

 なお受注高は同3.6%増の440億円の計画としている。配当予想は前期と同額の年間20円(期末一括)で予想配当性向は20.9%となる。

■中期経営計画で18年連結受注高470億円目指す

 15年5月にグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定し、15年11月に中期経営計画2018を発表した。中期経営計画2018では、中長期ビジョン「CLAVIS2025」の最初の3年間の計画として、企業体力を強化するとともに事業ドメインの拡大を図り、マルチインフラ&グローバル企業へ向けての基盤を築くことを基本的な考え方とした。

 そして中長期ビジョン「CLAVIS2025」目標(25年単体受注高400億円、連結受注高600億円)達成に向けて、中期経営計画2018では目標値として18年単体受注高350億円、連結受注高470億円、単体営業利益率7.0%(営業利益24億円)、連結営業利益率6.5%(営業利益30億円)を掲げている。株主還元については安定配当を維持する方針だ。

 また16年6月には、マルチインフラ&グローバル展開を担う3つの主要グループ会社の中長期ビジョンを策定した。

 建設技研インターナショナルは、アジアを中心とした拠点整備や都市インフラ部門の基幹分野の育成を進め、100億円の事業規模を目指す。福岡都市技術は、区画整理事業をコアとして周辺事業へ展開し、日総建および本体とあわせ、CTI都市・建築グループとして都市プロジェクト事業計画から設計・監理・運営までワンストップで担うことを目指す。また地圏総合コンサルタントは、土壌・地盤・地質分野の新規顧客開拓、新事業開拓へと大きく舵を切り、これらの分野の事業規模を30億円まで拡大させることを目指す。

 16年9月には、マルチインフラ企業への展開の中核として15年グループ化した日総連と環境総合リサーチの中期経営計画を策定した。日総連はインフラ関連事業、建築・都市総合事業などの新規分野へ展開して事業規模20億円を目指す。環境総合リサーチは環境コンサルタントの基礎を構築して事業規模12億円を目指す。

■中期的に事業環境は良好

 中期的に事業環境は良好である。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。

 防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も期待される。そして、技術力によって契約企業を選定するプロポーザル方式において優位性を発揮している。

 中期的に良好な事業環境も背景に、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」で掲げた新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等への事業領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。

■株価は目先的な売り一巡して戻り試す

 株価は利益減額修正を嫌気する形で8月7日の終値1167円から8月9日の終値1049円まで急落した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 8月9日の終値1049円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円47銭で算出)は11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.9%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1746円31銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約149億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。減額修正は一過性要因であり、目先的な売りが一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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