ゼリア新薬工業は自律調整一巡して上値試す、18年3月期1Q大幅減益だが通期は増収増益・増配予想、自己株式取得拡大も評価

 ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。18年3月期第1四半期は大幅減益だったが、通期は増収増益・増配予想である。株価は自律調整が一巡し、自己株式取得拡大も評価して上値を試す展開が期待される。

■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。

 17年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業53%、コンシューマーヘルスケア事業47%、その他0%、営業利益構成比(連結調整前)は医療用医薬品事業17%、コンシューマーヘルスケア事業80%、その他2%だった。海外売上比率は24.6%である。

 医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、H2受容体拮抗剤アシノン、亜鉛含有胃潰瘍治療剤プロマック、機能性ディスペプシア治療剤アコファイド、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン(要指導医薬品)なども展開している。17年5月には潰瘍性大腸炎治療剤アサコールの用法・用量を追加(開発番号Z-206、協和発酵キリンと共同開発)した。

 コンシューマーヘルスケア事業は、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力としている。また連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品を全国の薬局・薬店・ドラッグストアに販売している。

■グローバル展開を推進

 M&Aを活用してグローバル展開も推進している。08年10月基礎化粧品のイオナ、09年9月「アサコール」の開発会社ティロッツ社(スイス)、10年9月コンドロイチン原料のZPD社(デンマーク)を子会社化した。13年8月ビフォーファーマ社(スイス)と鉄欠乏症治療剤「Ferinject」の日本国内における独占的開発・販売契約締結、ZPD社の株式を追加取得して完全子会社化した。15年4月ベトナムの中堅医薬品製造販売会社F.T.Pharma社の株式49.0%を取得した。

 15年7月子会社ティロッツ社がアストラゼネカ社から炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの米国を除く全世界における権利を取得した。IBDは潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を含めて世界中に約500万人の患者が存在すると推定されている疾患である。CDを適応症とするEntocortの権利取得により、IBD治療においてUCの第1選択薬として用いられているアサコールを補完する。そして16年11月国内でCDを適応症するゼンタコートカプセルを発売した。

■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進

 新薬開発は消化器分野を最重点領域と位置付けて、国際的に通用する新薬の創製を念頭に置き、自社オリジナル品の海外での臨床試験を積極的に推進するとともに、海外で実績のある薬剤を導入して国内での開発を進めている。

 膵臓癌を適応症とする「Z-360」は日本を含むアジア地域でフェーズ2国際共同治験中、子宮頸癌を適応症とする「Z-100」は日本を含むアジア地域でフェーズ3国際共同治験中、ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズ3段階である。

 海外は、中国で潰瘍性大腸炎を適応症として「Z-206」を承認申請中、欧州で潰瘍性大腸炎を適応症とする「TP05」を承認申請中である。自社開発「Z-338」は欧州で機能性ディスペプシアを対象としたフェーズ3を実施し、北米ではフェーズ2が終了している。導入品で家族性大腸腺腫症を適応症とする「TP09」は欧州・米国でフェーズ3段階である。

■18年3月期1Qは大幅減益

 今期(18年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.1%減の159億70百万円、営業利益が65.3%減の5億97百万円、経常利益が63.8%減の6億63百万円、純利益が50.5%減の6億57百万円だった。

 医療用医薬品事業は後発医薬品使用促進の影響、コンシューマーヘルスケア事業は競争激化の影響で、いずれも減収となった。またEAファーマとの新規プロトンポンプ阻害剤(Z-215)ライセンス契約終了に伴って、清算に係る費用を研究開発費として計上したため大幅減益だった。

 差引売上総利益は8.2%減少し、差引売上総利益率は70.2%で3.8ポイント低下した。販管費は1.2%増加し、販管費比率は66.4%で2.8ポイント上昇した。また特別利益では投資有価証券売却益が増加(前期2億16百万円、今期5億62百万円)した。

 医療用医薬品事業は売上高が4.8%減の89億58百万円で営業利益(連結調整前)が94.9%減の59百万円だった。潰瘍性大腸炎治療剤アサコールは堅調で、炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortも順調に拡大したが、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドは市場構築が計画に対して遅れ、H2受容体拮抗剤アシノンや亜鉛含有胃潰瘍治療剤プロマックは後発医薬品使用促進の影響で苦戦した。

 コンシューマーヘルスケア事業は売上高が0.9%増の69億75百万円で営業利益が6.7%減の17億65百万円だった。テレビCMなどの広告宣伝活動によってヘパリーゼW群が好調だったが、コンドロイチン群およびウィズワン群が競争激化で苦戦した。その他(保険代理業・不動産賃貸収入)は売上高が7.9%増の36百万円で営業利益が1.6%減の58百万円だった。

■18年3月期通期は増収増益・増配予想

 今期(18年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は売上高が前期(17年3月期)比4.9%増の680億円、営業利益が10.1%増の50億円、経常利益が12.7%増の50億円、純利益が7.2%増の38億円としている。配当予想は2円増配の年間34円(第2四半期末17円、期末17円)としている。予想配当性向は47.0%となる。

 医療用医薬品事業では、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールが海外で伸長し、炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの寄与、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドの市場構築などで増収を見込んでいる。コンシューマーヘルスケア事業では、ヘパリーゼ群などの主力製品の伸長を見込んでいる。研究開発費が高水準に推移して広告宣伝費も増加するが、増収効果で吸収して増益・増配予想である。

■株主優待は毎年9月末と3月末の年2回実施

 株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主に対して、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈する。

■株価は自律調整一巡して上値試す

 なお6月16日発表した自己株式取得に関して8月4日に拡大を発表し、取得株式総数の上限360万株(従来は180万株)、取得価額総額の上限72億円(同36億円)、取得期間17年6月19日~17年11月2日(変更なし)とした。17年8月3日現在の累計で取得株式総数159万7100株、取得価額総額32億5345万3800円となっている。

 株価は6月16日発表の自己株式取得を好感して7月7日に年初来高値2124円まで上伸した。その後は利益確定売りで一旦反落したが、大きく下押す動きは見られない。自律調整の範囲だろう。

 8月18日の終値1951円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS72円34銭で算出)は27倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間34円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1192円73銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約1036億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が接近して切り返す動きだ。自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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