【決算記事情報】科研製薬はほぼ底値圏、18年3月期1Q減益で通期も減益予想だが上振れ余地

 科研製薬<4521>(東1)は整形外科、皮膚科、外科などの領域を主力とする医薬品メーカーである。18年3月期第1四半期は減収減益だった。通期も研究開発費増加などで減益予想だ。ただし上振れ余地がありそうだ。株価は減益予想を織り込んでほぼ底値圏だろう。

■整形外科、皮膚科、外科領域を主力とする医薬品メーカー

 整形外科、皮膚科、外科などの領域を主力とする医薬品メーカーで、農業薬品や飼料添加物、不動産賃貸(文京グリーンコート関連賃貸)なども展開している。

 医療用医薬品・医療機器は、生化学工業<4548>からの仕入品である関節機能改善剤アルツを主力としている。14年9月国内販売開始した日本初の外用爪白癬治療剤クレナフィンも主力製品に成長した。また癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、高脂血症治療剤リピディル、創傷治癒促進剤フィブラストスプレー、ジェネリック医薬品も展開している。

 外用爪白癬治療剤クレナフィンは、海外では導出先であるカナダのバリアント社がJubliaの商品名で、米国およびカナダにおいて14年から販売している。また17年5月には韓国の導出先である東亞STが韓国において販売承認を取得し、17年6月に発売した。さらに中国、台湾での申請および導出先について検討中である。米国およびカナダ以外のバリアント社テリトリーである欧州およびアジア地域についても、バリアント社と検討・協議中である。

■歯周組織再生剤「リグロス」は16年12月発売

 歯周組織再生剤「リグロス歯科用液キット」は、歯周炎による歯槽骨の欠損の効能・効果で16年9月国内製造販売承認を取得し、16年12月に発売した。

 組換え型ヒトbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)を有効成分とする世界初の歯周組織再生医薬品である。国内には歯周組織の再生を効能とする医療用医薬品がなく「リグロス」は初めての歯周組織再生医薬品として歯周炎治療の新たな選択肢となることが期待されており、18年3月期から本格展開している。

■パイプライン充実が課題で新規導入目指す

 潰瘍性大腸炎を適応症とする「KAG-308」(旭硝子<5201>と共同開発の経口プロスタグランジン製剤)は、第2相臨床試験を実施中である。

 原発性局所多汗症を適応症とする「BBI-4000」(外用抗コリン剤)(15年3月米ブリッケル・バイオテック社から導入、日本とアジア主要国における独占的開発・販売・製造権取得)は、第2相臨床試験を実施中である。

 熱傷焼痂除去剤「KMW-1(海外での商品名NexoBrid)」(16年4月イスラエルのメディウンド社から導入、日本における独占的開発・販売権)は、治験準備中である。熱傷で生じる焼痂と呼ばれる壊死組織を除去する外用酵素製剤である。

 16年7月には杏林製薬と、杏林製薬が日本における独占販売権を取得したアレルギー性疾患治療薬デザレックスについて、両社によるコ・プロモーション(共同販促・1ブランド1チャネル)に関する基本覚書を締結した。杏林製薬は2016年11月にデザレックスを発売し、当社は皮膚科を対象にプロモーションを行う。

 17年6月スイスのNumab社と、Numab社が有する多重特異性抗体医薬を創製する技術に基づき、炎症性疾患を対象疾患とする新規抗体医薬候補品の創薬を目的とした共同研究契約を締結した。Numab社は2011年設立で、がん免疫および免疫領域において独自の多重特異性バイオ医薬のパイプラインを保有している。

 パイプライン充実が課題で新規導入は18年3月期以降となる見込みだ。

■18年3月期1Qは減収減益

 今期(18年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.8%減の249億67百万円、営業利益が5.5%減の76億49百万円、経常利益が4.9%減の78億13百万円、純利益が5.7%減の54億63百万円だった。

 関節機能改善剤アルツおよび外用爪白癬治療剤クレナフィンの売上は概ね前年並みだったが、クレナフィン海外導出先からの収入減少などが影響して減収減益だった。売上総利益は3.9%減少したが、売上総利益率は57.9%で0.6ポイント上昇した。販管費は2.0%減少したが、販管費比率は27.2%で0.7ポイント上昇した。研究開発費は3.3%減の18億36百万円だった。

 主要医薬品・医療機器の売上高(単体ベース)はアルツが1.1%減の76億69百万円、クレナフィンが1.0%減の57億41百万円、セプラフィルムが2.3%減の26億39百万円、リピディルが0.9%減の11億23百万円、フィブラストスプレーが1.0%減の9億32百万円、ジェネリック医薬品(合計)が1.1%減の30億11百万円だった。

■18年3月期は研究開発費増加で減益予想だが上振れ余地

 今期(18年3月期)連結業績予想(5月10日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比0.2%増の1017億円、営業利益が12.7%減の268億円、経常利益が12.9%減の270億円、純利益が13.2%減の191億円としている。

 薬価改定がなく国内は堅調に推移するが、バリアント社向けJublia関連の減少などにより、売上高は横ばい予想である。またリグロスの売上本格化は先としている。利益面では、研究開発費の増加(69.0%増加の109億円の計画)で減益予想としている。研究開発費については開発費の増加および導入費用を見込んでいる。

 主要医薬品・医療機器の売上高(単体ベース)は、アルツが2.5%増の297億円、クレナフィンが6.4%増の230億円、セプラフィルムが1.5%増の112億円、リピディルが3.8%増の46億円、フィブラストスプレーが2.7%増の38億円、ジェネリック医薬品(合計)が0.8%増の120億円の計画としている。

 配当予想は前期と同額の年間150円(第2四半期末75円、期末75円)としている。また、5月10日公表の予想配当性向は32.1%である。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高24.5%、営業利益28.5%、経常利益28.9%、純利益28.6%と順調であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。

■中期経営計画で19年3月期売上高1100億円目標

 中期経営計画2018では、19年3月期売上高1100億円を目指している。

 パイプライン充実を最優先課題として可能な限りの経営資源を配分する。また爪白癬治療剤クレナフィンおよび新製品の価値最大化を図り、かつ既存製品に関して営業基盤の強化と効率化に取り組む方針だ。

■株価は18年3月期減益予想を織り込んでほぼ底値圏

 5月10日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限55万株、取得価額総額の上限40億円、取得期間17年5月11日~17年12月29日)は、17年7月24日時点の累計で取得株式総数55万株、取得価額総額34億3331万6000円となって終了した。

 株価は8月14日に5600円まで調整し、2月の年初来安値5410円に接近する場面があった。その後は下げ渋る動きだ。

 8月24日の終値5660円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS470円49銭で算出)は12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間150円で算出)は2.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2511円68銭で算出)は2.3倍近辺である。なお時価総額は約2741億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、6000円割れ水準が下値支持線の形だ。18年3月期減益予想を織り込んでほぼ底値圏だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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