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インフォマートは減損損失計上で17年12月期純利益予想減額だが、利用企業数増加基調で中期成長シナリオに変化なし
- 2017/8/28 07:49
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1)は企業間電子商取引「BtoBプラットフォーム」を運営している。17年12月期第2四半期累計はソフトウェア償却費が増加して営業微減益だった。また減損損失計上で通期純利益予想を減額修正した。ただし利用企業数が増加基調であり、中期成長シナリオに変化はないだろう。株価は6月の上場来高値から反落したが、調整一巡して戻りを試す展開が期待される。
■企業間(BtoB)電子商取引プラットフォームを運営
企業間の商行為を電子化する企業間電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」として、企業間受発注業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注、食の安全・安心の商品仕様書DBであるBtoBプラットフォーム規格書、企業間請求書発行・受取業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム請求書、BtoB専用の販売・購買システムであるBtoBプラットフォーム商談を運営している。17年6月には受発注の新システム(卸・食品メーカー)の提供を開始した。
システムをネット経由で提供するクラウド型サービスである。利用企業数が増加基調であり、利用企業数増加に伴って月額課金のシステム使用料収入が拡大するストック型収益モデルである。
16年12月期の事業セグメント別売上構成比は受発注事業(BtoBプラットフォーム受発注)61%、規格書事業(BtoBプラットフォーム規格書)19%、ES事業(BtoBプラットフォーム請求書とBtoBプラットフォーム商談)20%、その他(海外・メディア事業など)2%だった。
■国内最大級のBtoBプラットフォームで利用企業数は増加基調
フード業界向けで外食と食材卸の間の受発注をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注を主力として、全業界を対象とするBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数も増加基調である。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
17年6月末のBtoBプラットフォーム利用企業数(無料利用含む全業界ID数で集計、海外除く)は16年12月末比1万9789社増加の14万4839社、事業所数(本社・支店・営業所・店舗)は3万7775事業所増加の44万2332事業所となった。また16年度の流通金額(全業界の受発注金額と請求書金額の合計)は2兆2942億円となった。
受発注(外食・卸)は買い手企業数(外食)が114社増加の2140社、売り手企業数(卸)が1087社増加の3万982社、17年6月提供開始の受発注(外食・食品メーカー)は買い手企業数(卸)が6社、売り手企業数(卸・食品メーカー)が69社となった。システム連携は92社・112ソリューションとなった。
規格書は、買い手機能が51社増加の501社、卸機能が19社増加の556社、メーカー機能が26社増加の6211社なった。
15年1月サービス開始した請求書の利用企業数合計は1万9816社増加の14万4217社(うち有料契約数は447社増加の2263社)となった。増加ペースが加速して、利用企業数合計は17年8月に15万社を突破し、17年7月時点での流通金額は1兆4524億円となった。
商談は、買い手企業数が17社減少の6838社、売り手企業数が128社減少の1584社となった。
■業界標準化に向けたシステム連携を強化
業界標準化に向けたシステム連携を強化しており、17年6月末におけるBtoBプラットフォーム受発注システムの連携は92社・112ソリューションに拡大している。企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を追求し、BtoB標準プラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化して利用企業数100万社への普及を目指すとしている。
また16年7月には、BtoBプラットフォーム受発注の英語版をシンガポールの日本の外食15店舗へ提供開始している。世界の英語圏各国にBtoBプラットフォーム受発注を提供できるシステムが整い、利用促進を行う。
■FinTech分野にも参入
FinTech分野に関しては、16年8月3メガバンクと連携してFinTech分野に参入すると発表、16年9月野村証券へのBtoBプラットフォーム請求書提供を発表、16年11月三井住友カードと法人カードの決済データを活用した電子請求書サービスの提供に向けて協業することに合意した。
請求書関連業務の新たなモデル作りのため各金融機関・パートナーとともにFinTech分野の実証実験を行い、17年12月に利用企業数30万社、電子請求の年間流通金額2兆円を目指すとしている。なおリクルートホールディングス<6098>が16年8月、新規事業としてオンライン完結型融資の事業展開を目指してFinTech企業との提携を検討し、当社と協業検討開始に関する基本合意書を締結したと発表している。
■17年12月期2Q累計は償却増で営業微減益、減損損失で最終赤字
17年12月期第2四半期累計(1月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比8.0%増の32億22百万円、営業利益が1.7%減の9億53百万円、経常利益が1.2%増の9億43百万円、純利益が2億07百万円の赤字(前年同期は6億円の黒字)だった。
利用企業数が増加基調であり、受発注、規格書、ESともストック型のシステム使用料が順調に増加したが、システム開発強化でソフトウェア償却費が増加して営業微減益だった。またBtoBプラットフォーム請求書に関するソフトウェアについて減損損失を計上したため純利益は赤字だった。なお計画に対しては、売上高は1億82百万円下振れ、営業利益は1億01百万円上振れ、経常利益は92百万円上振れ、純利益は7億70百万円下振れた。
売上総利益は1.6%増加したが、売上総利益率は66.4%で4.2ポイント低下した。ソフトウェア償却費が増加した。販管費は4.4%増加したが、販管費比率は36.8%で1.3ポイント低下した。採用費などが増加した。営業外では為替差損が減少した。特別損失には減損損失11億81百万円を計上した。
セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、受発注事業は売上高が9.9%増の19億77百万円で営業利益が0.3%増の9億28百万円、規格書事業は売上高が10.9%増の6億21百万円で営業利益が64.9%増の2億72百万円、ES事業は売上高が3.2%増の6億06百万円で営業利益が償却費の増加で2億19百万円の赤字(前年同期は1億06百万円の赤字)、その他は売上高が32.5%減の17百万円で営業利益が25百万円の赤字(同14百万円の赤字)だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期15億87百万円、第2四半期16億33百万円、営業利益は5億16百万円、4億37百万円だった。
■17年12月期通期の純利益を減額だが、営業増益予想は据え置き
今期(17年12月期)通期の連結業績予想は7月31日、第2四半期に減損損失11億81百万円を計上したことに伴い、純利益を前回予想(2月14日公表)に対して8億35百万円減額修正した。売上高、営業利益、経常利益は据え置いて、売上高が前期(16年12月期)比28.4%増の79億円、営業利益が33.1%増の26億03百万円、経常利益が33.5%増の26億円、純利益が26.4%減の8億87百万円とした。
減損損失計上で純利益が減益となるが、利用企業数が増加基調でストック型収益の月額課金システム使用料が伸長し、ソフトウェア償却費や人件費の増加を吸収して大幅増収・営業増益・経常増益予想に変化はない。売上総利益率は0.6ポイント低下の69.9%、販管費比率は1.7ポイント低下の37.0%の想定としている。
なおセグメント別計画は、受発注の売上高が29.5%増の48億29百万円で営業利益が10.6%増の21億92百万円、規格書の売上高が18.9%増の13億76百万円で営業利益が97.3%増の6億06百万円、ESの売上高が26.7%増の15億35百万円で営業利益が2億09百万円の赤字(前期は2億92百万円の赤字)、その他の売上高が2.1倍の1億97百万円で営業利益が18百万円の黒字(同39百万円の赤字)としている。
配当予想は年間6円54銭(第2四半期末3円27銭、期末3円27銭)としている。17年1月1日付株式2分割を考慮して前期の11円80銭を5円90銭に換算すると、実質的に64銭増配となる。予想配当性向は89.5%である。配当政策は個別業績に応じた配当性向50%を基本方針としている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は、売上高が40.8%、営業利益が36.6%、経常利益が36.3%と低水準の形だが、ストック型収益構造のためネガティブ要因とはならない。通期ベースで好業績が期待される。
■中期経営計画で18年12月期の受発注5万社と請求書100万社目標
中期経営計画では基本方針を、フード業界におけるBtoBプラットフォーム受発注の利用拡大・シェア拡大、BtoBプラットフォーム請求書の全業界展開・デファクト化、BtoB電子商取引プラットフォームの構築としている。
フード業界におけるシェア拡大では18年12月期までの目標として利用企業数5万社(15年12月期実績3.9万社)およびシステム取引高・外食シェア2兆円・30%(同1.2兆円・16%)を目指す。電子請求プラットフォームのデファクト化では18年12月期までの目標として利用企業数100万社(同4.8万社)およびシステム取引高3兆円(同1261億円)を目指す。BtoB電子商取引プラットフォームの構築ではシステムコンセプトとして全業界対応BtoBプラットフォーム(同フード業界ASPシステム)を目指す。
目標値には18年12月期売上高95億円(受発注47億28百万円、規格書15億44百万円、ES28億39百万円、その他4億29百万円)、営業利益36億03百万円、経常利益36億円、純利益24億23百万円を掲げた。配当については個別業績に基づく基本配当性向50%を継続し、17年12月期年間配当13円08銭、18年12月期の年間配当17円48銭を計画している。
そして2020年までに、あらゆる業界にBtoBプラットフォームを提供し、グローバルなBtoBインフラ企業を目指すとしている。積極的な事業展開で中期成長シナリオに変化はないだろう。
■株価は調整一巡して戻り試す
株価(17年1月1日付で株式2分割)は、6月21日の上場来高値965円から反落して調整局面だったが、8月14日の直近安値713円から切り返しの動きを強めている。調整が一巡したようだ。
8月25日の終値762円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS7円31銭で算出)は104倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円54銭で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS76円02銭で算出)は10倍近辺である。時価総額は約988億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。調整一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)