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TACは急動意で年初来高値更新、18年3月期1Q減益だが通期は2桁営業増益・連続増配予想
- 2017/8/29 08:01
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
TAC<4319>(東1)は「資格の学校」運営を主力に、中期成長に向けて新事業領域への展開を強化している。18年3月期第1四半期は減益だったが、通期は2桁営業増益予想・連続増配予想である。株価は日本金融人材育成協会設立を好感して急動意の展開となり、年初来高値を更新した。上値を試す展開が期待される。
■財務・会計分野を中心に「資格の学校」を運営
財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営している。また法人研修事業、出版事業、人材事業も展開している。
17年3月期セグメント別売上高構成比(連結調整前)は個人教育事業60%、法人研修事業20%、出版事業16%、人材事業3%だった。
■新事業領域への展開を強化
中期成長に向けて新事業領域への展開を強化している。13年12月増進会出版社(子会社のZ会が通信教育事業などを展開)と資本業務提携し、14年8月増進会出版社が第2位株主となって資本関係を強化した。
14年6月クボ医療(兵庫県加古郡)と医療事務スタッフ関西(兵庫県神戸市)を子会社化、14年11月関西4校舎で「医療事務講座」開講、14年12月子会社TAC医療事務スタッフ(17年2月TAC医療に商号変更)設立して関東エリアで医療事務スタッフ派遣事業や診療報酬請求事務請負事業を開始した。
14年11月トーハン・コンサルティングと業務提携、15年1月トーハン・コンサルティングの介護系資格取得教室を主要校舎において「介護教室ケアマイスター TAC教室」の名称で開講した。
15年3月一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)公認で、日本初の大規模公開オンライン講座提供サイト「gacco」に対して無料の実務・資格講座の提供を開始、15年4月日本商工会議所と連携して「高等学校日商簿記学習支援プログラム」を開始、15年7月TMMCと資本業務提携した。
出版分野では、16年4月旅行ガイド本シリーズ「おとな旅プレミアム」を発刊した。また8月3日には資格試験対策書籍「みんなが欲しかった!はじめの一歩シリーズ」発刊を発表した。
17年4月には新しい検定試験創設と対策講座開講を発表した。企業人材・企業経営アドバイザー検定の第1回試験を17年12月実施予定で、対策講座を5月開講した。そして8月22日には、検定試験の実施主体として一般社団法人日本金融人材育成協会を9月1日付で設立すると発表した。
■四半期業績には季節変動要因
四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。
また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。
■18年3月期1Qは販管費増加で減益
今期(18年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.1%増の57億28百万円、営業利益が5.2%減の7億16百万円、経常利益が7.8%減の6億88百万円、純利益が16.8%減の4億63百万円だった。
営業・販促活動の拡充に伴って広告宣伝費や人件費が増加して減益だったが、売上面では発生・現金ベースとも堅調に推移した。差引売上総利益は2.0%増加し、差引売上総利益率は46.7%で0.9ポイント上昇した。販管費は4.9%増加し、販管費比率は34.2%で1.6ポイント上昇した。なお特別利益で受取和解金1億20百万円が一巡した。
セグメント別(発生ベース、連結調整前)動向を見ると、個人教育事業は売上高が2.0%増の37億03百万円で営業利益が7.7%増の5億68百万円、法人研修事業は売上高が2.4%減の11億21百万円で営業利益が12.3%減の3億01百万円、出版事業は売上高が8.2%減の7億22百万円で営業利益が30.6%減の1億08百万円、人材事業は売上高が15.6%増の1億90百万円で営業利益が12.7%増の25百万円だった。
受講者数は個人が2.0%増の5万1404人、法人が3.2%増の2万7583人、合計が2.4%増の7万8987人だった。また分野別には、経営・税務分野が7.2%増、金融・不動産分野が6.9%増、財務・会計分野が4.9%増、法律分野が2.8%増、情報・国際・医療・福祉・その他分野が1.3%増だった。一方で公務員・労務分野は3.2%減だった。
■18年3月期通期は2桁営業増益・連続増配予想
今期(18年3月期)連結業績予想(5月15日公表)は売上高が前期(17年3月期)比2.3%増の209億円、営業利益が13.6%増の8億10百万円、経常利益が12.6%増の7億80百万円、純利益が10.2%減の4億40百万円としている。配当予想は同1円増配の年間5円(第2四半期末2円、期末3円)で予想配当性向は21.0%となる。
純利益は特別利益が一巡して減益予想だが、各事業とも堅調に推移し、適切な経費コントロールも寄与して2桁営業増益・経常増益予想、そして連続増配予想である。差引売上総利益率は0.2ポイント上昇の40.1%、販管費比率は0.2ポイント低下の36.2%の計画としている。第1四半期は減益だったが、通期ベースでは好業績が期待される。
■株価は年初来高値更新の展開、指標面の割安感も見直し
株価は日本金融人材育成協会設立を好感して急動意の展開となり、一気に年初来高値を更新した。8月24日には322円まで上伸した。
8月28日の終値287円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS23円78銭で算出)は12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS267円76銭で算出)は1.1倍近辺である。時価総額は約53億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から急反発してサポートライン確認の形となった。上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)