【小倉正男の経済コラム】アベノミクスの出口戦略

■「セイコノミクス」を明らかにしないではフェアではない

 野田聖子総務相が、金融緩和の出口戦略を含めてアベノミクスを総括し、次の経済政策を展開する必要性を訴えた。

――「異次元(の金融緩和)をやってきて、ある程度の効果はあったとしても予想を下回っている。これでは厳しい」「若い人にどんなツケを回すのか、うすうす国民はわかっている」

 少しバイアスをかけて見ると、大手新聞メディアの安倍一強批判なのだろうというところか。
 ともあれ野田聖子総務相としては、次期総裁選を意識し、「出馬の準備を進めている」と意欲を示した模様だ。

 少し遠慮しながらも、しかし、言わないではいられないということなのか。ただ、批判の中身は一般論というか、これでは民進党と同じ程度の批判である。

 自身の「次の経済政策」の中身を明らかにしないではフェアとはいえない。メディアの安倍一強批判の空気に乗っているだけにみられることになりかねない。どうせなら「セイコノミクス」の中身を聞かせてほしいものである。

■企業は「アベノミクス・バブル」のなかにいる

 確かに、異次元金融緩和は、一撃としてはインパクトが大きかった。ゼロ金利、マイナス金利ということで、企業活動にとっては凄まじい恩恵になっている。

 100億~200億円を借り入れしても、金利負担は微々たるものだ。以前だったら金利負担だけで大きな赤字になる会社が黒字を計上できるのがいまの環境である。

 潰れるような下手な経営をやっても、ゾンビのように生き残れる。甘い環境でヌクヌクとやっていられる。いわば、「アベノミクス・バブル」のなかにいる。

 それだけに、「次の経済政策」といえば、次の経済政策が重要になる。ただ、下手に出口戦略を誤れば、甘い環境にあまりに慣れ親しんでいることから、倒産企業が続出することになりかねない。

■アベノミクスの出口戦略

 もっとも、まだ安倍晋三首相がまだ現職でやっているのに「次の経済政策」というのも少し不謹慎である。
 アベノミクスの出口戦略は、アベノミクスのなかで行うのが筋である。あるいは、筋というよりも責任というものである。

 このままでは、真珠湾で戦果は上げたが、その後は泣かず飛ばず、そして散々といった結果と同じではないか、という批判が当てはまることになる。

 北朝鮮の核・ミサイル問題、国内ではモリカケ(森友学園・加計学園)問題で、アベノミクスはすっかり影を潜めてしまっている。

 そんなところで、野田聖子総務相がせっかくアベノミクスに目を向けさせてくれた。
アベノミクスはアベノミクスのなかで完結すべきである。懸案の規制緩和に本気で取り組むようなら、少なくとも「次の経済政策」云々は完封できるはずである。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)

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