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メディカル・データ・ビジョンは日柄調整完了して上値試す、17年12月期大幅増収増益予想
- 2017/9/4 07:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
メディカル・データ・ビジョン<3902>(東1)は医療分野のビッグデータ関連ビジネスを展開している。17年8月末現在の大規模診療データベース実患者数は1871万人となった。また民間最大級の大規模診療データベースを活用し、新規事業として治験事業などにも進出している。17年12月期大幅増収増益予想である。株価は日柄調整完了して上値を試す展開が期待される。なお9月1日に株式売出を発表している。
■医療分野のビッグデータ関連ビジネスを展開
医療分野のビッグデータ関連ビジネスとして、医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツール・サービスを販売するデータ利活用サービスを展開している。
データネットワークサービスで医療機関向けに医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報を分析し、データ利活用サービスとして主に製薬会社向けに提供するビジネスモデルだ。さらに民間最大級の大規模診療データベースを活用して、新規分野への事業展開も推進している。
医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、および製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)が収益源で、16年12月期事業別売上構成比はデータネットワークサービス55%、データ利活用サービス45%だった。収益面では特にデータ利活用サービスにおいて下期偏重の特性がある。
■医療機関向けデータネットワークスサービス
医療機関向けデータネットワークサービスは、DPC制度(急性期病院における入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度)導入対象病院向けDPC分析ベンチマークシステム「EVE」と、病院経営支援システム「Medical Code」を主力としている。
EVEは自院の診療内容や状況を他院と比較しながら分析できるシステムである。16年12月期末の導入病院数は15年12月期末比23病院増加の791病院となり、DPC制度を導入している全国1667病院のうち約45%と圧倒的シェアを獲得している。Medical Codeは病院経営全般に関わる事項を分析できるシステムである。16年12月期末の導入病院数は15年12月期末比48病院増加の224病院となった。
今後の戦略としてEVEは45%の市場シェアを維持しながら純増を目指すが、販売の軸足をMedical Codeに移す方針としている。
■病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」拡販
病院向けデジタル健康ソリューション「CADA-BOX」は16年10月提供開始した。患者自身が診療情報の一部を閲覧できるWEBサービス「カルテコ」や医療費後払いサービス「CADA決済」などを融合した。
CADA-BOXを介し、検査結果などを含むリアルタイムなデータを集積することで、データ利活用ビジネスの拡大を目指す考えだ。またCADA-BOXを既存の電子カルテシステムに連携させるため、CEホールディングス<4320>の子会社で電子カルテシステム大手のシーエスアイ(CSI)と16年8月業務提携した。
CADA-BOXは16年12月期に3病院への導入が決定し、17年2月には大同病院(名古屋市)でCADA-BOXが全国で初めて稼働した。19年までに2次医療圏(医療法に基づき厚生労働省が決定している医療の地域圏)344エリアの地域中核病院への導入を推進する計画だ。
■製薬会社向けデータ利活用サービス
製薬会社向けのデータ利活用サービスは、医療機関向けのデータネットワークサービスで集積した医療ビッグデータを活用し、処方数、処方診療科、併用薬などの分析ツールおよび分析調査サービスを提供している。
製薬会社の個別ニーズに対応した「アドホック調査サービス」を主力として、医療機関における処方実態が把握可能な診療データ分析ツール「MDV analyzer」も提供している。MDV analyzerは比較的大規模な製薬会社を対象としており、当面はアドホック調査サービスの成長でデータ利活用ビジネスを拡大していく方針だ。
■民間最大規模の診療データベース
データ利活用ビジネスを支えるのは大規模診療データベース(病院から2次利用の許諾を得て匿名化処理がなされた入院患者ごとの診断名、治療方法、薬剤処方が分かる実臨床データ)である。17年8月末現在の大規模診療データベース実患者数は、1939万人(16年12月末比216万人増加)となった。全保険種類を網羅した民間最大級のデータベースである。
■大規模診療データベースを活用して新規分野にも事業展開
民間最大級の大規模診療データベースを活用して、新規分野への事業展開も推進している。OTC(一般用医薬品)とH&BC(ヘルス&ビューティケア)分野を対象とした各種調査分析サービスでは、診療統計データ分析レポート、インシュアランス(保険)業界向けデータ分析サービス、医療材料に関するメーカー別・製品別シェア分析調査サービスなどを提供している。
17年1月には歯科分野の医師向け会員型サービスを展開するDoctorbookの全株式を取得して子会社化した。17年2月にはOTC医薬品・H&BC製品の製造販売を目的として子会社MDVコンシューマー・ヘルスケアを設立(基礎化粧品「KISOU」シリーズを7月からウェルシアグループ店舗で販売開始)した。17年3月にはメディパルホールディングス<7459>の子会社メディエと協業した。医療材料の市場把握が可能となる日本最大規模の診療データベースを目指す。
17年6月にはSMO(治験施設支援機関)事業のコスメックスを子会社化した。大規模診療データベースを利活用することで治験対象者の事前抽出が可能となり、マンパワーに頼らない迅速的で効率的な治験が可能となる。25年12月期以降売上高500億円規模の事業展開を目指す。
■17年12月期2Q累計は大幅増収増益
今期(17年12月期)第2四半期累計(1~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比28.6%増の13億33百万円、営業利益が1億44百万円(前年同期は7百万円の赤字)、経常利益が1億42百万円(同8百万円の赤字)、純利益が85百万円(同9百万円の赤字)だった。
データネットワークサービス、データ利活用サービスとも好調に推移した。増収効果で人件費などの増加を吸収して大幅増益だった。売上総利益は29.4%増加し、売上総利益率は81.3%で0.4ポイント上昇した。販管費は11.2%増加したが、販管費比率は70.5%で11.1ポイント低下した。
データネットワークサービスの売上高は12.9%増の7億円(パッケージが2億59百万円、メンテナンスが4億28百万円、新規が13百万円)だった。データ利活用サービスは52.2%増の6億32百万円(アドホックが4億56百万円、MDV analyzerが1億50百万円、新規が26百万円)だった。アドホックが認知度向上効果で71.7%増と大幅伸長した。
EVE導入病院数は16年12月末比8増加の799病院、Medical Code導入病院数は15増加の239病院、MDV analyzer利用社数は13社となった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期6億45百万円、第2四半期6億88百万円、営業利益は64百万円、80百万円だった。
■17年12月期通期も大幅増収増益予想
今期(17年12月期)連結業績予想(2月13日公表)は売上高が前期(16年12月期)比36.8%増の36億円、営業利益が25.9%増の5億42百万円、経常利益が29.9%増の5億40百万円、純利益が74.9%増の3億11百万円としている。
営業人員を積極採用し、投資回収に向けた積極的な営業活動で基盤事業を再成長させるとともに、新規事業の収益化も推進する。採用拡大(約40名採用予定)による人件費増加を吸収して5期連続増収増益予想である。
売上高の計画は、データネットワークサービスが34.5%増の19億94百万円(パッケージが7億41百万円、メンテナンスが8億71百万円、新規が3億80百万円)で、データ利活用サービスが38.6%増の16億05百万円(アドホックが10億75百万円、MDV analyzerが2億76百万円、新規が2億54百万円)としている。
通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は低水準の形だが、特にデータ利活用サービスにおいて下期偏重の特性があるためネガティブ要因とはならない。通期ベースでも好業績が期待される。
■成長の第4フェーズで17年12月期から投資回収
中期成長イメージでは17年12月期~19年12月期を、成長の第4フェーズとして投資回収期に位置付けている。患者のリアルタイムデータ、地域医療の診療データ・画像データなども統合してデータ利活用ビジネスの急拡大を図り、売上高の増加とともに投資回収を開始する方針だ。
重点取り組みとして、2次医療圏344病院へのCADA-BOX導入、データ基盤のさらなる拡大、データ利活用ビジネスの拡大、M&Aを含めた他社との協業を推進する。データ利活用の新領域では治験分野を推進する。中期的に収益拡大基調、そして一段の高収益化が期待される。
■株主優待制度は12月末に実施
株主優待制度は毎年12月31日現在の100株(1単元)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。配当については、患者のリアルタイムデータ集積によるデータ利活用サービスの拡大に目途がついた段階で検討していく方針だ。
■株価は日柄調整完了して上値試す
なお9月1日に株式売出を発表した。株数はメディパルホールディングス<7459>の売出230万株、およびオーバーアロットメントによる売出34万5000株である。売出によってメディパルホールディングスは主要株主に該当しなくなるが、従来どおり良好な関係を継続する。
株価(17年5月1日付で株式2分割)は6月の上場来高値2863円から反落したが、8月21日の直近安値2260円から切り返しの動きを強めている。9月1日には2562円まで上伸した。日柄調整が完了したようだ。
9月1日の終値2515円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS16円34銭で算出)は154倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式2分割を考慮した連結BPS140円44銭で算出)は18倍近辺である。時価総額は約503億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。日柄調整完了して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)