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ジャパンフーズは調整一巡感、18年3月期増益予想で低PBRも評価
- 2017/9/21 06:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託生産の国内最大手である。加工料収入が堅調に推移して18年3月期(連結決算に移行)増益予想である。中期経営計画では「日本一のパッカー」を目指し、既存設備のS&B(スクラップ&ビルド)など積極投資を推進している。株価は7月の戻り高値圏から反落したが調整一巡感を強めている。低PBRも評価して戻りを試す展開が期待される。
■飲料受託生産の国内最大手、フレキシブルな生産が強み
伊藤忠商事<8001>系で飲料受託生産の国内最大手である。主要得意先はサントリー食品インターナショナル<2587>、伊藤園<2593>、アサヒ飲料などの大手飲料メーカーで、品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。
17年3月期製造数量(ケース数)の品目別構成比は炭酸飲料63.7%、茶系飲料13.7%、酒類飲料6.6%、コーヒー飲料5.5%、果実飲料4.2%、機能性飲料等6.2%だった。容器別構成比はPETボトル70.6%(うち大型PET26.2%、小型PET・ボトル缶44.4%)、SOT缶19.8%、広口ボトル缶(TEC缶含む)6.3%、瓶1.7%、その他1.7%だった。
本社工場の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン(EラインおよびTライン)では、さまざまな容器(ペットボトル、瓶、缶)の飲料を生産している。市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産が強みだ。
■新規ビジネスも積極展開
新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)も積極展開している。
17年4月当社の水宅配事業を子会社JFウォーターサービスに承継させ、18年3月期から連結決算に移行した。国内で水宅配事業を展開するウォーターネット、中国の清涼飲料受託製造会社である東洋飲料(東洋製罐と合弁)については、18年3月期から持分連結を開始した。
自社ブランド商品は、本社工場がある千葉県産の農林水産物を使用した商品「おいしい房総サイダー」シリーズなどを千葉県中心に販売している。
■上期(4月~9月)繁忙期、下期(10月~3月)閑散期の収益構造
個人消費や天候などの影響を受けやすいことに加えて、飲料業界全体が夏場の上期(4~9月)に繁忙期となり、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。
なお16年3月期から一部飲料メーカーとの取引形態が、有償支給(顧客指定の原材料を購入し、加工料+原材料費で売上計上する方法)から、無償支給(顧客指定の原材料を受給し、加工料を売上計上する方法)に変更された。このため見かけ上の売上高は大幅に減少しているが、実質的な売上高である加工料収入に影響はない。
配当の基本方針は、健全な財務体質を目指し、将来の事業発展に備えた設備投資等のための内部留保を確保する一方、業績に応じた安定かつ継続的な配当を行うとしている。
■18年3月期(連結決算に移行)1Qは受託製造数量が堅調
今期(18年3月期、連結決算に移行)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が45億63百万円、営業利益が10億30百万円、経常利益が10億27百万円、純利益が7億08百万円だった。前年同期の非連結業績との比較で見ると、売上高は6.9%減収、営業利益は1.3%減益、経常利益は1.1%減益、純利益は1.1%減益だった。
セグメント別(連結調整前)に見ると、国内飲料受託事業は売上高が45億37百万円で経常利益が10億21百万円だった。飲料業界全体の販売数量は前年並みだったが、積極的な受注活動で受託製造数量は5.0%増の1385.9万ケースと順調だった。
その他事業は売上高が47百万円で経常利益が6百万円だった。水宅配事業は新規顧客開拓でボトルドウォーターの出荷が増加した。海外飲料受託製造事業(持分法)は閑散期のため5百万円の赤字、水宅配フランチャイズ事業(持分法)は6百万円の黒字だった。
■18年3月期(連結決算に移行)通期増益予想
今期(18年3月期、連結決算に移行)の連結業績予想(4月27日公表)は、売上高が159億80百万円、営業利益が12億10百万円、経常利益が12億20百万円、純利益が8億円としている。前期(17年3月期)の非連結業績との比較で見ると売上高が5.7%増収、営業利益が4.9%増益、経常利益が4.5%増益、純利益が11.7%増益となる。
新規商材受託などで受託製造数量が増加し、実質的な売上高となる加工料収入および売上総利益が増加する。コストダウン効果も寄与して増益予想である。配当予想は前期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。予想配当性向は16.3%となる。
閑散期となる冬場の下期(10~3月)に営業損益が赤字となる収益構造だが、第1四半期の進捗率は順調であり、通期ベースで好業績が期待される。
■中期経営計画で19年3月期ROE10.9%目標
16年度~18年度対象の新中期経営計画「“JUMP+2018”-躍動-」では、成長戦略の方向性・キーワードを「戦略的パートナーシップ」「自立自発」「100年企業」「イノベーション」とした。そして2つの成長戦略は、コアビジネス(国内飲料受託製造事業)の収益拡大と、新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)の着実な推進としている。
コアビジネスでは「名実ともに日本一のパッカー」を目指し、経営課題としている「ふ(防ぐ)」「け(削る)」「か(稼ぐ)」を確実に実行する。品質向上の追求、ローコストオペレーション(生産効率・稼働率・原単位の向上)、新規商材の取り込みを積極推進するとともに、既存設備S&B(スクラップ&ビルド)などの積極投資を推進して競争力向上を図る。
新規ビジネス分野では戦略的パートナーシップも活用して業容拡大を目指す。中国の(TPC)は東洋飲料16年度に黒字化し、17年度には経常黒字化を目指している。ウォーターネットは黒字が定着し、さらなる収益拡大を目指している。
経営目標値には19年3月期の連結売上高168億円、営業利益19億円、経常利益16億円(コアビジネス80%、新規ビジネス20%)、当期純利益10億円、ROE10.9%、ROA4.9%を掲げている。
設備投資額は17年3月期実績が24億13百万円で、18年3月期は79億50百万円、19年3月期は10億円の計画である。S&Bの第1フェーズとして本社工場内に工場建屋、ペットボトルブロー成型機および充填ラインの新設を行う。投資額は約65億円、稼働時期は18年1月予定である。
■飲料受託生産の役割・存在感高まり、競争力強化で中期成長期待
飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量の減少を懸念する見方もあるようだが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。
このため飲料受託生産の役割や存在感は一段と高まっている。そして当社は飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮することが期待される。さらに一段の競争力強化に向けた投資の成果により、受託製造数量増加、プロダクトミックス改善、コストダウンが進展して中期成長が期待される。
■株主優待制度は毎年3月末に実施
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈している。
■株価は調整一巡して戻り試す
株価は7月下旬~8月上旬の戻り高値圏1440円近辺から反落したが、大きく下押すことなく推移して調整一巡感を強めている。
9月20日の終値1385円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS165円88銭で算出)は8~9倍近辺で、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は1.9%近辺、前期実績PBR(前期実績の非連結BPS1659円85銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約71億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が下値を支えている。低PBRも評価して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)