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アイビーシーは調整一巡、18年9月期は新製品も寄与して収益拡大期待
- 2017/9/25 06:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイビーシー<3920>(東1)はネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニーである。情報通信ネットワークが高度化・複雑化する中で性能監視ツールの重要性が増している。17年9月期は先行投資負担で減益予想だが、18年9月期は新製品も寄与して収益拡大が期待される。なおIoT・ブロックチェーン分野の子会社iBeed社が10月5日開催のINSURANCE FORUMに参加し、業務提携しているパクテラ・コンサルティング・ジャパンと共にテーマ講演を行う。株価は調整一巡し、中期成長力を評価して出直りが期待される。
■ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニー
ネットワーク機器・システムの稼働状況や障害発生の予兆などを監視して、情報通信ネットワークシステム全体の性能状態を容易に可視化できるネットワークシステム性能監視ツール(ソフトウェア)のリーディングカンパニーである。国内システム性能・稼働監視ソフトウェア業界において、大手システムインテグレーターを除く専業首位クラスである。
■複雑化するネットワークシステムにおいて性能監視ツールの重要性が増す
ネットワークシステム性能監視ツールとは、ネットワークシステムを構成する様々なメーカーのネットワーク機器や仮想サーバーの状況を、俯瞰的かつきめ細やかに収集して表示・解析・通知を行うソフトウェアのことである。ネットワークシステム全体の稼働・性能状況を監視し、ネットワークシステムの障害発生を未然に防ぎ、ICTインフラの性能維持・改善さらにコスト削減を可能にする。
現在の情報通信ネットワークはクラウドコンピューティングやリソース仮想化など新たな技術が浸透し、ビッグデータの活用やデータ量の増大、ネットワーク環境やデバイスの多様化などが進展している。また最近ではコンピュータ・ネットワークシステムの特徴を生かしたブロックチェーン(分散台帳技術)が注目されている。
ネットワークシステムが高度化する一方で、システム環境変化による障害予兆の特定が困難になる問題が深刻化している。またネットワークシステム障害を介したサービス停止や通信遅延なども社会問題化している。そして高度化・複雑化かつブラックボックス化するネットワークシステムにおいて、ネットワークシステムの安定稼働や品質向上を実現するネットワークシステム性能監視ツールの重要性が一段と増している状況だ。
■自社開発の性能監視ツールおよび運用支援サービスを提供
マルチベンダーの機器で構成される複雑なネットワークシステム全体の稼働・性能状況を、精度の高いデータを取得して分析するネットワークシステム性能監視ツールの開発・販売および導入支援サービス、顧客のネットワークシステムに内在する問題点や課題を抽出して最適な改善策を提示する分析・性能評価サービス、ネットワークシステム設計・構築・運用支援のコンサルティングサービスを提供している。
16年9月期の事業別売上高構成比は、ネットワークシステム性能監視ソフトウェアに係る自社開発製品のライセンス(ソフトウェア使用権)販売が82%、自社製品導入支援やネットワークシステム構築に係るコンサルティングなどのサービス提供が12%、その他物販(他社製情報通信機器等の販売)が6%だった。
自社エンジニアによる手厚い顧客サポート体制も好評のため、ライセンス販売における継続利用率は約9割と極めて高い。大手優良企業を中心とした顧客構成で、売上債権の貸倒実績が無く、安定的な財務体質を維持していることも特徴だ。
■マルチベンダー対応製品の自社開発とデータ・ノウハウの蓄積が強み
問題・障害発生後に気付く従来型の手法ではなく、問題・障害の予兆をいち早く検知して問題・障害発生を未然に防ぐ新たな手法で、ネットワークシステム性能監視に必要なマルチベンダー対応ソフトウェアを自社開発し、様々な環境下でのデータおよび統計分析・解析ノウハウを蓄積してサービスをワンストップで提供していることを強みとしている。
様々なネットワーク関連機器を詳細に分析し、潜在的な問題点を洗い出して改善策を提示する。そして高度化・複雑化かつブラックボックス化しているネットワークシステム環境でも、安心安全なサービス提供によってネットワークインフラの品質向上とコスト削減を実現する。
継続的に自社開発製品の機能拡張を推進して、対応メーカー数と分析ポイント数は06年9月期末22社・339ポイントから、16年9月期末108社・3390ポイントまで拡張した。ほぼ全ての主要メーカーに対応している。100社を超えるマルチベンダー対応で使い勝手の良い性能監視ソフトウェアは世界でも類がなく、一朝一夕で同社と同等の製品を作ることは困難であり、マルチベンダー対応の競争優位性を表す数字だ。
さらに近年では、システム要件やビジネスサイクルに応じてパブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミス環境などを組み合わせて、セキュアかつ柔軟なインフラ環境を構築・運用する「ハイブリッドクラウド」のニーズが高まっている。またOffice365やVDI(仮想デスクトップ)導入後に、システム遅延の原因調査やネットワークインフラの見直し案件も急増している。こうした顧客ニーズに対して運用課題を適切に解決できるノウハウ、およびコンサルティングサービスも強みとしている。
■新製品「System Answer G3」発売
現在の主力製品は11年7月リリースしたネットワーク性能監視ソフトウェア「System Answer G2」シリーズである。マルチベンダーのネットワーク機器や仮想サーバーで構成される膨大で複雑なネットワークシステムの性能情報を、1分間隔できめ細かく詳細なデータを収集し、瞬時に性能指標データを作成して可視化できる独自の性能監視専用ソフトウェアである。
マルチベンダー対応で幅広いメーカー機器の性能情報を可視化できる点が同業他社に対する圧倒的なアドバンテージとなり、官公庁・地方自治体、金融業、製造業、物流業、情報通信業、医療・文教分野など、業種・業態・規模を問わず採用され、累計販売実績は08年12月リリース「System Answer」シリーズと11年7月リリース「System Answer G2」シリーズの合計で、17年3月現在1200システム以上に達している。
同社の製品開発は、システムが正しく動いているかどうかを監視し、問題が発生した際にどこで発生したのかを検知・把握する「死活監視」「状態監視」のための「保守ツール」から、性能上問題がないかどうかを分析し、障害が発生する前に問題点を検知して適切な対処を施す「性能監視」のための「収集ツール」へと発展してきた。
今後はコンピュータやネットワークシステムを維持・改善するための根拠ある「判断ツール」として活用できる「情報監視」機能を備えた製品が必要とされている。情報監視とは、コンピュータやネットワークシステム運用時に発生する数々の問題を、的確に判断するための情報や根拠をいち早く把握するための監視手法である。
そして17年7月に新製品「System Answer G3」シリーズを発売開始した。コンセプトを「性能監視から情報監視へ」として、監視設定の自動化、監視の見落とし防止、派生アラートの集約、仮想化監視機能の強化、IPMIによるハードウェア監視、そして動的しきい値(ベースライン)監視の強化などの機能を盛り込んだ。情報監視作業の大部分をツールが自動で行うため、大規模システムへの対応も可能となる。今後さらに、継続的にオプション機能の充実を推進する方針だ。
■中期成長に向けてサービス領域拡大
中期成長戦略として、付加価値を高めるためにM&A・アライアンスも活用したサービス領域の拡大や成長分野への進出、パートナー企業との連携強化による販売力の強化・サービス型販売の促進、情報監視機能を強化した次期製品の開発・市場投入を推進している。
サービス領域の拡大では、16年3月統合ログ管理市場で豊富な実績を誇るインフォサイエンス社「Logstorage」と連携して「System Answer G2 ログオプション」提供開始、16年4月アットマークテクノ社とIoTを活用した製造ライン統合管理ソリューションで協業、16年5月NRIセキュアテクノロジーズ社とセキュリティソリューションで協業した。
16年9月アプリケーションパフォーマンス管理分野でラック社と協業して「Dynatrace」販売開始、16年11月特化型クラウドインテグレーションサービスSCI提供開始、16年11月リンクと協業、アマゾンウェブサービス(AWS)のパートナープログラムである「AWSパートナーネットワーク(APN)テクノロジーパートナー」に認定された。
17年2月コーソルとデータベース運用管理ソリューションで協業開始、17年4月ネットフォースへ出資、17年8月特化型クラウドインテグレーションサービスSCIのサービスメニューの一つとして次世代MSPサービスSAMSを開始した。
■IoTやブロックチェーンなど成長分野に進出
成長分野への進出では、16年4月IoT分野およびブロックチェーン分野への事業展開を目的としてSkeed社と合弁会社iBeed社設立、16年7月Skeed社との合弁を解消してiBeed社を完全子会社化、16年8月コンセンサス・ベイス社とブロックチェーン分野で業務提携、17年6月Pacteraグループの一員であるパクテラ・コンサルティング・ジャパンと業務提携した。
17年7月にはiBeed社を中心にコンセンサス・ベイス社など複数社と業務・資本提携に基本合意、17年8月にはiBeed社が一般社団法人Fintech協会に入会した。
■パートナー企業との連携強化
パートナー企業との連携強化による販売力の強化では、伊藤忠テクノソリューションズ、富士通エフサス、日立システムズ、ユニアデックス、NECフィールディングなど、大手システムインテグレーターとの連携を強化して公共系システムや大手企業への販売促進を継続する。
サービス型販売の促進では、15年10月ITホールディングスグループのTIS社のITインフラ管理・運用支援マネージドサービス「MOTHER」の性能分析サービスに「System Answer G2」が採用された。また16年8月スカイアーチネットワークス社と協業開始した。
■ソフトウェアのライセンス販売で高収益のストック型ビジネスモデル
収益面では、主力の「System Answer G2」シリーズの継続利用率や複数年契約の比率が高く、ソフトウェアのライセンス販売が積み上がる高収益のストック型ビジネスモデルを特徴としている。
13年9月期から「System Answer G2」シリーズのライセンス販売にシフトしたことに伴い、販売先の規模が拡大して販売数も大幅に伸長し、売上原価におけるハードウェアの仕入が減少したため、13年9月期以降は売上総利益率が80%台と高水準で推移している。また顧客の検収時期の影響で、四半期別業績は第2四半期(1~3月)および第4四半期(7~9月)の構成比が高くなりやすいという季節要因がある。
利益配分については、今後の業績の推移や財務状況等を考慮したうえで将来の事業展開のための内部留保等を総合的に勘案しながら配当を検討することを基本方針としているが、現在は成長過程にあるため、事業上獲得した資金については事業拡大のための新規投資等に充当することを優先するとしている。
■17年9月期第3四半期累計は先行投資負担で減益だが増収基調
今期(17年9月期)第3四半期累計(10~6月)の非連結業績は、売上高が前年同期比12.4%増の7億99百万円、営業利益が87.6%減の18百万円、経常利益が99.8%減の0百万円、純利益が1百万円の赤字(前年同期は88百万円の黒字)だった。
人材確保やシステム投資などの先行投資負担で減益だったが、増収基調に変化はないようだ。売上高の内訳は、ライセンス販売が5.8%減の5億23百万円、サービス提供が34.3%増の1億38百万円、その他物販が2.6倍の1億38百万円だった。
ライセンス販売は減収だが、パートナー企業との連携強化による公共・文教分野の開拓、直接販売を中心とした大型案件獲得に向けた活動、更新・追加案件の積み重ねなどを推進した。サービス提供は、ライセンス販売の受注数増加に伴って構築・運用サポートが拡大している。その他物販は、公共分野および小売業における大型案件受注によって大幅増加した。
売上総利益は同横ばいだったが、物販の売上構成比が上昇したため、売上総利益率は78.2%で9.6ポイント低下した。販管費は26.5%増加し、販管費比率は75.9%で8.5ポイント上昇した。販管費は人件費や本社オフィス関連費用が増加したが、計画に対してはやや下回ったようだ。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期2億38百万円、第2四半期4億円、第3四半期1億61百万円、営業利益は58百万円の赤字、1億42百万円の黒字、66百万円の赤字だった。
■17年9月期は先行投資負担で減益だが、18年9月期は収益拡大期待
今期(17年9月期)通期の非連結業績予想(11月14日公表)は、売上高が前期(16年9月期)比14.4%増の13億05百万円、営業利益が19.1%減の2億36百万円、経常利益が37.0%減の2億10百万円、純利益が35.4%減の1億26百万円としている。
人材確保に伴う人件費の増加、本社オフィス増床に伴う関連費用の増加、新製品開発に係る動作検証環境整備のためのシステム導入費用の発生など、中期成長に向けた先行投資負担で減益予想だが、ライセンス販売を中心として大幅増収基調に変化はない。特化型クラウドインテグレーションサービスSCIの提供開始も寄与する。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が61.3%、営業利益が7.6%、経常利益が0.1%である。低水準だが、第4四半期の構成比が高い収益特性を考慮すれば達成可能だろう。また来期(18年9月期)は新製品「System Answer G3」シリーズも寄与して収益拡大が期待される。
■ネットワークシステム性能・稼働監視ソフトウェア市場は拡大基調
パソコンや携帯電話・スマホ、高性能サーバーや大規模データセンター、さらに家電や自動車まで、あらゆる機器がネットワークで繋がる時代が到来し、ネットワークシステムが正しく稼働するように見守り、障害の発生を未然に防ぐことは企業や官公庁など、あらゆる組織にとって極めて重要な危機管理策の一つとなっている。このためネットワークシステム性能・稼働監視ソフトウェア市場は拡大基調が予想される。
ネットワークシステム全体が一段と高度化・複雑化・ブラックボックス化している状況を考慮すれば、100社を超えるマルチベンダー対応に強みを持つ同社の競争優位性が一段と鮮明化することが予想される。事業環境は良好であり、中期成長シナリオに変化はないだろう。
■株価は調整一巡して出直り期待
株価は水準を切り下げて9月6日に880円まで調整する場面があった。ただし4月の年初来安値777円まで下押す動きは見られず調整一巡感を強めている。
9月22日の終値911円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS23円07銭で算出)は39倍近辺、前期実績PBR(前期実績BPS250円06銭で算出)は3.6倍近辺である。時価総額は約50億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、調整一巡し、中期成長力を評価して出直りが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)