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ワイヤレスゲートは調整一巡感、中期成長に向けてBtoB事業へ集中投資
- 2017/9/27 08:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ワイヤレスゲート<9419>(東1)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを展開し、中期成長に向けてWi-Fiインフラ構築やIoTプラットフォームなどBtoB事業に集中投資する方針を打ち出している。17年12月期は先行投資負担で減益予想だが中期成長を期待したい。株価は調整一巡感を強めている。なお11月6日に第3四半期決算発表を予定している。
■ワイヤレス・ブロードバンド事業が主力
通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。
16年12月期事業別売上高構成比は、ワイヤレス・ブロードバンド事業(BtoC事業)のモバイルインターネットサービス92%、公衆無線LANサービス6%、オプションサービス1%、ワイヤレス・ビジネスドメイン事業(BtoB事業)の認証プラットフォームサービス0%、その他法人向けサービス1%だった。販売チャネルはヨドバシカメラと携帯電話販売最大手ティーガイアを主力としている。
個人向けワイヤレス・ブロードバンド事業は有料会員に対する月額課金収入、法人向けWi-Fiインフラ事業はアクセスポイント管理(クラウド管理)に対する月額課金収入が主力である。有料会員数およびアクセスポイント数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型ビジネスモデルである。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)を重視し、機動的かつ柔軟な自社株買いも実施する方針としている。
■中期成長に向けてBtoB事業に経営資源を集中投資
中期経営計画「ワイヤレスゲート2020年ビジョン中期経営計画」では、経営目標値に20年12月期売上高150億円~200億円規模、営業利益20億円~30億円規模、営業利益率13%~15%程度を掲げている。
事業戦略としては、安定収益源であるBtoC事業を堅持(Wi-Fiインフラの強化、通信サービスの再編成、通信サービスと親和性の高い周辺機器ベンダーとの協業、通信サービスの卸販売などによる販売経路の多様化)しつつ、成長事業であるBtoB事業に経営資源を集中投資(持続可能なフリーWi-Fi環境の構築、セキュアで高速・大容量な通信インフラの構築、投資を含めたビジネスアライアンス推進)する。また安定的な配当を行いつつ、中期的な企業価値の増大を目指す。
BtoB事業分野では、14年11月スペインのFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年11月フォン・ジャパンを持分法適用関連会社化している。Fon社のルータを活用して国内Wi-Fiエリア構築を推進する。また16年9月、モバイル・インターネットキャピタルと動弁でLTE-Xを設立し、産業用IoTプラットフォーム事業に本格参入した。
17年9月にはハタプロと共同で、来店者に合わせて商品ガイドできるAI搭載ガイドロボット「ZUKKU(ズック)」を、ヨドバシカメラマルチメディアAkiba店に試験導入した。またIOT商品を集約する情報サイト「Monoteras(モノテラス)」を開設した。さらにLTE-XがVAIO社とLTE over Wi-Fi技術を活用したセキュリティソリューションの共同開発で業務提携した。VAIO社からLTE-Xへの出資も検討する。
■17年12月期第2四半期累計は減収減益だが、利益は計画比上振れ
今期(17年12月期)第2四半期累計(1月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比1.6%減の60億30百万円、営業利益が31.4%減の4億37百万円、経常利益が33.0%減の3億58百万円、純利益が38.9%減の2億01百万円だった。
計画に対して、新たなSIMサービスの投入を見送ったことなどが影響して売上高は下振れたが、利益面は上振れた。想定していた新たなSIMサービス関連の経費が発生しなかったこと、子会社LTE-Xのコストが想定を下回ったこと、さらに「ワイヤレスゲートWi-Fi+WiMAX」サービスの利益率が想定を上回ったことも寄与した。
事業別売上高は、ワイヤレス・ブロードバンド事業が4.7%減の57億71百万円(モバイルインターネットサービスが4.2%減の54億16百万円、公衆無線LANサービスが13.2%減の3億03百万円、オプションサービスが5.0%減の51百万円)だったが、ワイヤレス・ビジネスドメイン事業が3.6倍の2億40百万円(認証プラットフォームサービスが3.2倍の51百万円、その他法人向けサービスが3.8倍の1億89百万円)と拡大した。その他は3.5倍の18百万円だった。
売上総利益は5.4%減少し、売上総利益率は24.1%で0.9ポイント低下した。販管費は13.1%増加し、販管費比率は16.8%で2.2ポイント上昇した。なお営業外費用では前年同期と同額の持分法投資損失(フォン・ジャパンののれん償却)77百万円を計上している。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期30億52百万円、第2四半期29億78百万円、営業利益は2億17百万円、2億20百万円だった。
■17年12月期通期も先行投資負担で減益予想だが利益を増額修正
今期(17年12月期)の連結業績予想(8月3日に売上高を据え置き、利益を増額修正)は、売上高が前期(16年12月期)比7.0%増の130億97百万円、営業利益が34.5%減の8億19百万円、経常利益が37.8%減の6億83百万円、純利益が40.2%減の4億15百万円としている。
事業ポートフォリオ転換に向けて経営資源を集中投資するため、前期との比較では先行投資負担で減益予想だが、第2四半期累計の利益超過達成分を上乗せした。配当予想は同1円増配の年間28円(期末一括)で、予想配当性向は69.9%となる。
ワイヤレス・ブロードバンド事業においては会員数が堅調に増加しており、さらなる新規会員の獲得、既存顧客の退会防止、販売単価の向上に向けた追加施策を実施する。ワイヤレス・ビジネスドメイン事業においては、子会社LTE-Xの業務展開が本格化する。なお営業外費用では、フォン・ジャパンの持分法適用関連会社化に伴うのれん償却(10年で約16億円を償却予定)を、持分法投資損失として前期と同程度計上する。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が46.0%、営業利益が53.4%、経常利益が52.4%、純利益が48.4%と順調な水準である。
■株価は調整一巡して反発期待
株価は9月8日に年初来安値となる1255円まで調整したが、その後は切り返して調整一巡感を強めている。
9月26日の終値1313円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円07銭で算出)は32~33倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間28円で算出)は2.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS287円91銭で算出)は4.6倍近辺である。時価総額は約139億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、調整一巡して反発が期待される。