建設技術研究所の株価は下げ過ぎ感が強く、今期の好業績予想を材料に反発へ
- 2015/2/23 11:16
- 決算発表記事情報
建設コンサルタントの建設技術研究所<9621>(東1)の株価は下げ過ぎ感が強く、今期の好業績予想を材料に反発が見込まれる。
14年12月期連結業績は、受注高403億48百万円(前年同期比6.3%減)、売上高395億24百万円(同8.5%増)、営業利益23億88百万円(同57.2%増)、経常利益25億25百万円(同54.1%増)、純利益14億90百万円(同51.7%増)と受注高は計画を上回ったものの前年同期を下回った。売上高は計画を下回ったものの前年同期を上回った。利益については、計画も前年同期も上回った。売上高、営業利益、経常利益、純利益共に過去最高を達成した。利益面で大幅増益となった要因は、原価率の低減によるもの。
連結子会社の受注概況は、建設技研インターナショナルは前年13年に3件の大型案件があったことから約37億30百万円であったが、14年は約29億円に減少した。福岡都市技術は、前年とほぼ横ばいの約16億20百万円、地圏総合コンサルタントは災害・火山関係の受注が増えていることから順調で、13年は約19億20百万円、14年は約21億円であった。
14年の契約方式別受注高の個別の構成比率は、特命随意契約9%(前年9%)、プロポーザル45%(同43%)、総合評価落札方式20%(同22%)、指名競争入札方式26%(同26%)と品確法の影響もあり、総合評価落札方式からプロポーザルへの比重が高まっている。
同社の一件当たりの契約額(個別)と上位50社の平均契約金額を比較すると、同社の1580万円に対して上位50社の平均契約金額は960万円である。これは、前期も同社が大型案件を獲得することが出来たことの表れであり、技術競争に勝っているということが伺える。
建設コンサルタントの事業環境として、もっとも影響の大きい公共事業関連予算の推移を見ると、1995年から2014年までの間では、98年の15兆円がピークで、その後、ほぼ毎年減少傾向が継続し、2013年の6兆3000億円が最少額である。しかし、2014年には6兆4,000億円と僅かに増加したので、ようやく下げ止まりの兆しが出てきた状況といえる。ところが、同社の受注額は、2013年がピークとなり、2014年はやや減少したものの、高水準といえる。
そのような状況の中で、インフラ整備の課題に対する政府のプランとして、国土強靭化基本計画のアクションプランを14年6月3日に閣議決定した。15年度の予算は、国土強靭化プログラム関係3.2兆円(概算要求額)(前年度2.7兆円)、道路の老朽化対策等戦略的維持管理2,965億円(予算案)(同2,684億円)、河川管理施設等の戦略的維持管理・更新の充実強化1,792億円(予算案)(同1,739億円)と関連予算項目では前年度を上回る額が見込まれている。
同じく昨年の6月に品確法基本方針の改正が行われた。関連の深い事項としては、発注者責務の明確化、多様な入札制度の導入・活用、国として講ずべき施策の3つがある。
発注者責務の明確化としては、担い手の育成・確保のための適正な利潤が確保できるような予定価格の適正な設定が挙げられている。また、「歩切り」の根絶や「ダンピング受注」の防止として最低制限価格の設定等がある。更に、計画的な発注、適切な工期設定、適切な設計変更が求められている。
多様な入札制度の導入・活用では、技術提案交渉方式による民間ノウハウ活用と必要な価格での契約が求められている。更に、若手技術者・技能者の育成・確保、災害時の体制等を審査・評価まで踏み込んでいる。
国として講ずべき施策では、調査及び設計の品質確保のため、技術者の資格等を評価することが求められている。従って、技術力のある同社にとっては、品確法基本方針の改正は追い風といえる。
昨年7月には、インフラ整備の課題に対する政府のアクションとして、「社会資本の維持管理に関する資格制度のあり方について(案)」が出されている。「改正品確法」や「インフラ長寿命化計画」を踏まえ、点検や診断、補修設計等に関する技術者・技能者を評価する資格制度の構築を提言した。これを受け、今年4月より資格制度の構築が施行される。
このように、技術者・技能者を評価する環境が整いつつあることから、近年の技術者単価は上昇傾向にある。
海外に関しては、新興国を中心としたインフラ需要が増大している。全世界のインフラ需要は年間で230兆円、そのうちアジアでの需要は80兆円と見られている。特に、道路、水、鉄道、港湾、空港、エネルギー等の分野でのインフラ需要が高まっている。そのため、民間活用型の交通プロジェクトが急増している。
以上のような事業環境の中での14年度の同社事業展開を総括すると、業績面では、利益については、個別、連結ともに過去最高を達成した。
復興事業については、釜石、女川、山田等の復興CM(コンストラクションマネジメント)での、継続的な復興への貢献を行い、地域に根差した業務対応により、自治体から高い評価を得た。
新技術については、橋梁・ダム堤体をロボットを使って点検するシステムを開発した。
また、立命館大学と共同でSOFIX(土壌肥沃度診断)分析による有機肥料の土壌改良効果の評価技術開発に着手した。
釜石市と太陽光発電事業に関わる協定書を締結した。
グローバル展開に関しては、海外事業展開の新たな拠点として「CTIミャンマー」を14年3月に設立し、現地情報の収集や地域に根差した事業の展開を強化する。6月には、「日本防災プラットフォーム」に、防災関連の海外プロジェクトに関連する国内の産官学連携への発起人として参画した。
品質確保・向上に関するトピックスとしては、局長表彰25年(前年度23件)、事務所長表彰47件(同45件)、全建賞7件(同6件)と前年度実績をすべて上回っている。この様な賞をもらうことは技術力が優れていることの表れであるが、品確法によって技術力が重要視されるため、受注の際に優位に働くことになる。
技術者資格の新規取得者数は、技術士20部門で47名、技術士総合技術監理部門で10名、RCCM(建設コンサルティング業務の管理技術者・照査技術者になるための資格)16名であった。
15年12月期連結業績予想は、受注高400億円(前期比0.9%減)、売上高410億円(同3.7%増)、営業利益25億円(同4.6%増)、経常利益26億円(同3.0%増)、純利益15億50百万円(同4.0%増)と増収増益で、今期も最高益更新を見込む。
中長期経営計画では、10年先を見越したグループビジョンを策定中であり、2025年の受注目標として、600億円とする予定である。内訳は、国内500億円、海外100億円。
目指す方向性として、マルチインフラ企業、グローバル企業となり、技術にこだわり、社員の活力がみなぎる「アクティブテクの企業」を目指す。
今期15年12月期の経営計画では、安定的な経営を維持すると共に、マルチインフラ企業、グローバル企業へ向けて第一歩を踏み出す年として位置付けている。
受注と利益の安定的な確保策として、プロポーザル及び総合評価落札方式への対応の再強化を行う。また、受注・生産時の業務リスク管理を挙げている。
事業戦略としては、マーケット動向を反映した事業展開を促進する方針である。そのため、社会ニーズに即応した業務を推進する。新事業開発、技術の開発を強化する。海外事業展開の整備を行う。
採用に関しては、多様な人材を確保し、育成していく方針。今期の新卒採用技術者は70名を目標としている。
品質管理については、専門照査者制度を導入することで、業務実施体制の再点検を行い、品質の確保を実現する。また、CTI-PMS(プロジェクトマネジメントシステム)の開発などによる品質管理のIT化を図る。