【決算記事情報】科研製薬は第3四半期累計の高進捗率を評価して急伸、中期成長力や株主還元姿勢も評価して上値追い

 科研製薬<4521>(東1)の第3四半期累計(4月~12月)連結業績は大幅増益となりました。今期(15年3月期)見通しに対する高進捗率を評価して株価は14年11月高値2820円を突破し、2月20日の3480円まで急伸しました。中期成長力や積極的な株主還元姿勢も評価して、目先的な過熱感を冷ましながら上値追いの展開が想定されます。

整形外科、皮膚科、内科といった領域を得意とし、農業薬品や飼料添加物なども展開する医薬品メーカーです。医薬品・医療機器では、生化学工業<4548>からの仕入品である関節機能改善剤「アルツ」を主力として、癒着防止吸収性バリア「セプラフィルム」、高脂血症治療剤「リピディル」、創傷治癒促進剤「フィブラストスプレー」などを展開し、ジェネリック医薬品も急拡大しています。

日本初の外用爪白癬治療剤「クレナフィン」(一般名エフィナコナゾール)については、日本では当社が14年7月に製造販売承認を取得し、海外ではカナダのバリアント社が13年10月にカナダで承認を取得、14年6月に米国で承認を取得しました。

開発中のテーマとしては、歯周病を適応症とするKCB-1Dの申請を準備中(15年3月期中に申請予定、16年の早い時期に承認予定)です。この他に腱・靱帯付着部症を適応症とするSI-657(生化学工業と共同開発、アルツの効能追加、16年承認予定)や、潰瘍性大腸炎を適応症とするKAG-308(旭硝子<5201>と共同開発の経口プロスタグランジン製剤)などがあります。

なお14年12月には扶桑薬品工業<4538>と、スリー・ディー・マトリックス<7777>が医療機器として製造販売承認申請中の吸収性局所止血材「TDM-621」の日本国内における販売提携に関して、準独占的販売権許諾契約を合意解約したと発表しています。申請から3年以上経過して当初の目的から大きく外れることとなったためとしています。

2月5日に発表した今期(15年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比6.2%増の711億55百万円、営業利益が同40.4%増の166億11百万円、経常利益が同41.8%増の164億74百万円、純利益が同29.3%増の96億05百万円となりました。

セグメント別に見ると、医薬品・医療機器は同6.4%増収、同44.4%営業増益となりました。薬価改定の影響で関節機能改善剤「アルツ」は減収となりましたが、癒着防止吸収性バリア「セプラフィルム」が堅調に推移し、ジェネリック医薬品が大幅増収となりました。農業薬品も含めて主要医薬品の売上動向は概ね計画水準のようです。利益面では外用爪白癬治療剤「クレナフィン」の発売やバリアント社からのライセンス収入も寄与したようです。不動産事業(文京グリーンコート関連の賃貸収入)は同1.2%減収、同1.5%営業増益となりました。

四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)214億64百万円、第2四半期(7月~9月)227億68百万円、第3四半期(10月~12月)269億23百万円で、営業利益は第1四半期40億85百万円、第2四半期47億21百万円、第3四半期78億05百万円です。外用爪白癬治療剤「クレナフィン」の出荷やライセンス収入が第3四半期から本格化しているようです。

通期の連結業績見通しは前回予想(5月12日公表)を据え置いて、売上高が前期比2.8%増の914億円、営業利益が同5.8%増の168億円、経常利益が同5.7%増の164億円、純利益が同9.9%増の107億円、配当予想が同6円増配の年間54円(第2四半期末27円、期末27円)としています。13期連続の増配予定です。

主要医薬品・医療機器の売上高計画(単体ベース)は、関節機能改善剤「アルツ」が薬価改定の影響などで同4.9%減の305億円、癒着防止吸収性バリア「セプラフィルム」が新材形追加などで同3.5%増の111億円、高脂血症治療剤「リピディル」が脂質関連ガイドラインおよび糖尿病診療ガイドライン情報の活用などで同1.6%増の45億円、創傷治癒促進剤「フィブラストスプレー」が同2.3%減37億円、ジェネリック医薬品(合計)が14年12月発売の2品目も寄与して同9.3%増の120億円としています。

通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高77.9%、営業利益98.9%、経常利益100.5%、純利益89.8%と高水準です。通期利益見通しの増額は濃厚でしょう。また来期(16年3月期)についても外用爪白癬治療剤「クレナフィン」の収益寄与本格化が期待されます。

なお株主還元の一環として、14年5月に自己株式500万株の消却を実施し、14年5月~9月には自己株式159万株を取得しています。

株価の動きを見ると、1月7日の直近安値2221円から切り返し、さらに2月5日発表の第3四半期累計連結業績の大幅増益、および通期見通しに対する高進捗率を好感して急伸しました。6日には3280円を付けて14年11月高値2820円を一気に突破し、さらに20日には3480円まで上伸しています。

2月20日の終値3470円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS129円12銭で算出)は27~28倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間54円で算出)は1.6%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS805円89銭で算出)は4.3倍近辺です。

急伸したため目先的な過熱感を強めていますが、週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じ、強基調への転換を確認した形です。中期成長力や積極的な株主還元姿勢を評価して、目先的な過熱感を冷ましながら上値追いの展開が想定されます。

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