ソラストは上場来高値圏、9月の介護サービス利用状況も好調で18年3月期予想は増額の可能性

 ソラスト<6197>(東1)は医療事務・介護・保育関連サービスを展開し、地域の女性人材を活用するため女性が働きやすい職場づくりやICTの積極活用を推進している。M&A効果も寄与して18年3月期増収増益・増配予想である。9月介護サービス利用状況も好調であり、通期予想は増額の可能性が高いだろう。株価は上場来高値圏だ。好業績を評価する流れに変化はなく、上値を試す展開が期待される。なお11月9日に第2四半期決算発表を予定している。

■医療事務受託を主力に介護・保育サービスも展開

 医療事務・介護サービスのパイオニア(旧・日本医療事務センターが12年に現ソラストに社名変更)である。

 医療関連受託事業(医療事務請負・派遣)を主力として、介護事業(訪問介護、通所介護、居宅介護支援、グループホーム、有料老人ホーム・サービス付高齢者向け住宅など)・保育事業(認可保育所運営)、その他事業(教育サービスなど)を展開している。17年3月期セグメント別売上構成比は医療関連受託事業78%、介護・保育事業21%、その他事業1%だった。

 医療関連受託事業では請負が9割強を占め、大病院との長期取引を中心に医療機関取引先は1500以上に達している。介護事業は東名阪地域に展開して、17年3月期末の介護事業所数は246拠点(訪問介護63、デイサービス58、居宅介護支援58、グループホーム24、有料老人ホーム・サービス付高齢者向け住宅10、その他33)だった。保育園は13施設(東京都認証保育所12、千葉県認可保育所1)である。

 17年3月期末連結ベース従業員数2万3747人で女性比率が約90%である。地域の女性人材を活用するため、女性が働きやすい職場づくりとともに、ICTの積極活用も推進している。

■離職率低下による生産性向上やM&A活用で中期成長目指す

 中期経営ビジョンでは基本戦略を、ICTによるサービスモデル高度化、採用・キャリア支援モデルの強化、M&Aの積極活用として、経営目標値には21年3月期売上高1000億円(セグメント別成長率は医療関連受託事業3%、介護事業30%、保育事業20%)、営業利益70億円(営業利益率は医療関連受託事業15%、介護事業10%、保育事業15%)を掲げている。

 医療事務の市場規模は約6800億円(うち約5000億円が潜在市場)と推定され市場開拓余地は大きい。医療関連受託事業における利益率向上に向けた戦略としては、原価の大部分を占める人件費に関して、無駄の削減・効率性の向上、定着率・モチベーションの向上、離職率の飛躍的な低下を目指している。

 社員退職に伴う配置転換や新入社員の教育などに係る無駄を減らすことで現場の生産性を改善し、全社的なコスト競争力の向上や売上成長に繋げるため、ICTを積極活用し、コミュニケーションの向上、業務・職場環境の改善、待遇改善などを通じて離職率を大幅に低下させる方針だ。

 16年11月には沖電気工業<6703>と医療事務関連分野で業務提携した。ICTを活用して病院における患者サービスの向上や受付業務の効率化を推進することを目指し、最初の取り組みとして患者情報自動登録システムを共同開発する。その他の業務についてもICTの順次導入を推進する方針だ。

 介護事業はM&Aを積極活用して中期成長を目指している。17年3月期には、神奈川県で通所介護事業を展開する住センターなど、事業譲受や子会社化などで11件のM&Aを実行した。18年3月期売上高への貢献は15億円の見込みである。また17年9月には、通所介護(デイサービス)中心に介護事業所35ヶ所を運営するベストケア(愛媛県松山市、16年9月期売上高28億66百万円)の全株式を、10月31日付で取得すると発表した。

 さらに通所介護における業務効率化と顧客満足度向上を目的として、インフォコム<4348>と協働で介護記録システム「Daily」を構築し、全事業所への導入を推進している。

 人工知能を活用して新入社員の離職を防ぐ取り組みも開始している。データ解析事業を手掛けるFRONTEO<2158>が独自開発した人工知能エンジン「KIBIT」を用いて、新入社員の面談記録から不安や不満を抱える人を早期に発見してフォローを行い、社員の離職防止や定着率向上に向けた取り組みを推進する。

 また女性が働きやすい環境づくりの一環として、育児・介護等を理由とする短時間勤務制度・時差勤務制度の利用期間上限を撤廃し、仕事と家庭の両立支援策を大幅に拡充した。

■18年3月期1Qは2桁増益

 今期(18年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比8.6%増収で、営業利益が14.5%増益、経常利益が20.6%増益、純利益が21.8%増益だった。医療関連受託事業、介護・保育事業とも好調に推移し、医療関連受託事業の利益率上昇も寄与した。売上総利益は10.3%増加し、売上総利益率は16.8%で0.3ポイント上昇した。販管費は8.5%増加したが、販管費比率は11.4%で横ばいだった。

 医療関連受託事業は売上高が5.6%増の132億44百万円で営業利益(連結調整前)が15.4%増の12億69百万円だった。医療機関からの新規契約獲得、既存顧客との取引拡大、15年9月の労働者派遣法改正に伴う派遣売上の増加、業務全般の生産性向上、処遇改善等の総合的施策の成果としての離職率の低下などが寄与した。営業利益率9.6%は第1四半期として過去最高だった。

 介護・保育事業は売上高が21.4%増の39億97百万円で営業利益が3.4%増の2億47百万円だった。介護事業はM&Aに伴う一時的費用が増加したが、M&Aによる事業所数増加や訪問介護・デイサービスの利用者増加による増収効果、生産性向上効果で増益だった。保育事業は事業拡大に伴う先行投資費用が発生して減益だった。期末の事業所数は介護事業が17年3月末比14ヶ所増加の260ヶ所、保育事業が1ヶ所増加の14ヶ所となった。

 その他事業は売上高が13.6%減の1億84百万円で営業利益が50百万円の赤字(前年同期は39百万円の赤字)だった。教育事業の受講者数が減少した。

■18年3月期通期も増収増益・増配予想で増額の可能性

 今期(18年3月期)連結業績予想(5月9日公表)は売上高が前期(17年3月期)比7.0%増の700億03百万円、営業利益が10.3%増の40億32百万円、経常利益が10.7%増の40億15百万円、純利益が6.7%増の26億40百万円としている。5期連続増収増益予想である。

 医療関連受託事業では離職率低下による生産性向上と営業利益率改善が進展し、介護事業では前期のM&Aも寄与して利用者数が増加基調である。M&A関連費用や社員待遇改善に伴う人材投資費用の増加を吸収する。なお介護事業において17年4月以降に完了したM&A契約は8月4日時点で7件(年間売上高17億円)となった。

 配当予想は同1円増配の年間44円(第2四半期末21円、期末23円)としている。予想配当性向は50.6%となる。配当政策は、安定した配当を継続することを基本方針として、配当性向は50%を目安としている。

 セグメント別計画は、医療関連受託事業の売上高が2.3%増の520億円で営業利益(連結調整前)が13.0%増の55億95百万円、介護・保育事業の売上高が24.7%増の172億88百万円で営業利益が14.7%増の10億14百万円、その他事業の売上高が2.5%減の7億15百万円で営業利益が3億84百万円の赤字(前期は2億26百万円の赤字)としている。

 17年9月介護サービス利用状況(速報値)によると、月間サービス利用者数は訪問介護が前年同月比25.9%増、デイサービスが27.4%増といずれも好調に推移している。施設系サービスの月末入居率はグループホーム97.8%、有料老人ホーム98.8%、サービス付高齢者向け住宅94.7%だった。いずれも高水準を維持している。介護サービス拠点数は合計282拠点で17年3月末比36拠点増加した。なお17年8月31日付で子会社化したピナクルの利用者数や入居率を9月分から反映している。

 第1四半期の進捗率は、第2四半期累計(4~9月)に対して売上高51.1%、営業利益52.8%、経常利益53.2%、純利益53.2%、通期予想に対して売上高24.9%、営業利益23.5%、経常利益23.6%、純利益23.2%である。下期偏重の期初計画であることを考慮すれば通期予想は増額の可能性が高いだろう。また中期成長シナリオに変化はなく収益拡大基調が期待される。

■株価は上場来高値圏、好業績評価して上値試す

 株価は9月22日に上場来高値2344円まで上伸し、その後も高値圏で堅調に推移している。

 10月20日の終値2207円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS86円90銭で算出)は25~26倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS337円64銭で算出)は6.5倍近辺である。時価総額は約675億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインだ。好業績を評価する流れに変化はなく、上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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