【アナリスト水田雅展の銘柄分析】トレックス・セミコンダクターは3月末の株式分割、ウェアラブル端末関連のテーマ性、中期成長力を評価して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アナログ電源IC専門メーカーのトレックス・セミコンダクター<6616>(JQS)の株価は、13日発表の株式分割を好感して16日にストップ高の7780円まで急伸しました。その後一旦反落しましたが7000円近辺で下値固め完了感を強めています。指標面に割高感はなく3月末の株式4分割、今期(15年3月期)経常利益と純利益増額の可能性、ウェアラブル端末関連のテーマ性、そして中期成長力を評価して切り返し展開が期待されます。

 アナログ電源ICに特化して開発・販売する国内唯一の専業メーカーで、入力電圧を希望の出力電圧に変換するVR(電圧レギュレータ)、出力電圧が常に一定となるように制御するDC/DC(コンバータ)、入力電圧を監視して設定電圧以下となった時にアラームを出すVD(電圧検出器)を主力製品としています。

 小型化と低消費電力化に20年以上の実績を持ち、世界トップクラスの技術力を誇っています。超小型・薄型化と高放熱を両立する独自の超小型パッケージ技術「USP」などをベースとして、顧客の電子機器開発ニーズに対してソリューション提案できる「超小型電源ICに特化したアナログCMOSのプロフェッショナル集団」が特徴です。

 生産面では一部製品の後工程だけをベトナム工場で対応し、大半の生産を外部に委託するファブレスメーカーであることも高収益に繋がっています。技術力や収益力の高さに加えて、財務面の健全性の高さも特徴です。今期(15年3月期)第3四半期累計(4月~12月)末の自己資本比率は81.8%と高水準です。

 中期的な売上成長や一段の高収益化に向けて、注力領域をスマートフォン、デジタルカメラ、パソコン、デジタル家電などの民生用機器分野から、ヘルスケアやGPS関連などのウェアラブル機器分野、カーナビゲーション、モニタカメラ、ETC車載器、パワーウインドウなどの車載機器分野、ロボット、スマートメーター、監視カメラなどの産業機器分野に広げて新製品開発を強化しています。

 14年4月には世界的なパワー半導体メーカーである米IXYS社と相互販売提携契約を締結しました。米IXYS社の製品は大きな電力を扱う分野で強みを持っているため、電力制御機器や太陽光発電関連など当社の産業機器分野の品揃え拡充に活用する一方で、米IXYS社の販売網を活用して当社製品の拡販に繋げる方針です。

 2月13日発表の今期(15年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は前年同期比5.0%増の73億83百万円、営業利益が同6.3%減の10億24百万円、経常利益が同23.5%増の13億40百万円、純利益が同23.4%減の8億81百万円となりました。

 期前半に国内の家電・情報機器分野およびアジアのPC機器分野の売上が低迷した影響で営業減益、税金費用の増加で最終減益となりましたが、為替のドル高・円安進行に伴う為替差益3億38百万円計上が寄与して経常利益は大幅増益となりました。

 第3四半期累計のセグメント別売上動向は日本が同3.3%増収、アジアが同2.2%増収、欧州が同17.2%増収、北米が同29.7%増収となりました。製品別にはVRが同5.8%増収、VDが同4.3%増収、DC/DCが同1.8%増収、その他が同13.8%増収となりました。分野別には産業機器が同18.2%増収、車載機器向けが同25.6%増収と好調で、売上構成比も上昇傾向を強めています。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)22億87百万円、第2四半期(7月~9月)24億78百万円、第3四半期(10月~12月)26億18百万円、営業利益は第1四半期2億47百万円、第2四半期3億20百万円、第3四半期4億55百万円で、売上高営業利益率は第1四半期10.8%、第2四半期12.9%、第3四半期17.3%です。売上高営業利益率は期前半に低下しましたが、その後は改善傾向を強めています。

 通期の連結業績見通しについては、前回予想(11月14日に売上高と営業利益を減額)を据え置いて売上高が前期比5.4%増の99億円、営業利益が同0.4%増の14億20百万円、経常利益が同12.0%増の15億円、純利益が同18.9%減の11億円としています。下期の想定為替レートは1ドル=108円としています。配当予想(5月13日公表)は記念配当20円を含む年間100円(第2四半期末50円、期末50円)で、前期との比較では60円増配となります。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.6%、営業利益が72.1%、経常利益が89.3%、純利益が80.1%です。産業器向けや車載機器向けが好調に推移し、為替のドル高・円安進行も寄与して経常利益と純利益は増額の可能性が高いでしょう。

 中期経営計画では目標値として17年3月期売上高120億円強、営業利益20億円強を掲げています。民生用機器分野は価格競争が激化しているため、需要変動幅が比較的小さく利益率が比較的高い産業機器分野、車載機器分野、医療機器分野、ウェアラブル機器分野を中心に拡販を推進する方針です。

 17年3月期の売上構成比の計画は、既存の民生用機器分野37.7%、産業機器分野33.7%、車載機器分野14.0%、その他(ウェアラブル機器分野など)14.6%としています。ウェアラブル機器分野は16年3月期から本格寄与する見通しです。

 アナログ電源ICの市場規模は17年に向けて年平均6.6%の成長が予想されています。そして寡占企業が少ないため、技術優位性を武器として当社の市場シェア拡大余地は大きいと考えられます。中期的に収益拡大基調で一段の高収益化が期待されます。

 なお2月13日に株式分割を発表しました。15年3月31日を基準日(効力発生日15年4月1日)として1株を4株に分割します。

 株価の動きを見ると、14年11月の上場来高値1万2750円から反落して上値を切り下げる展開となりましたが、2月13日発表の株式分割を好感して16日にはストップ高の7780円まで急伸しました。その後一旦反落しましたが、7000円近辺で下値固め完了感を強めています。

 2月24日の終値6960円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS416円79銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間100円で算出)は1.4%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS3433円14銭で算出)は2.0倍近辺です。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となって26週移動平均線を割り込みましたが、7000円近辺で下値を固める動きです。指標面に割高感はなく、3月末の株式4分割、今期経常利益と純利益増額の可能性、ウェアラブル端末・LED関連というテーマ性、そして中期成長力を評価して切り返し展開が期待されます。

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