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カーリットホールディングスは過熱感解消して上値試す、18年3月期増収増益予想で低PBRも見直し
- 2017/10/24 12:56
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
カーリットホールディングス<4275>(東1)は化学品事業を主力に、M&Aも積極活用して規模拡大や事業多様化を推進している。当社はロケット用固体推進薬原料を国内で唯一製造しており、宇宙関連銘柄の一つである。18年3月期増収増益予想である。株価はEV(電気自動車)車載電池関連として人気化した9月高値から反落したが、過熱感が解消して上値を試す展開が期待される。低PBRも見直し材料だろう。なお10月31日に第2四半期決算発表を予定している。
■化学品、ボトリング、産業用部材を展開、M&Aで規模拡大と事業多様化
グループ収益基盤と総合力強化に向けたM&A戦略で、規模拡大と事業多様化を推進している。
12年1月工業用塗料販売・塗装工事の富士商事を子会社化、12年8月耐火・耐熱金物製造販売の並田機工を子会社化、13年10月一級建築士事務所の総合設計を子会社化、14年2月各種スプリング製造・販売の東洋発條工業を子会社化、15年10月並田機工がアジア技研からスタッド事業を譲り受け、16年2月合成樹脂原材料販売の三協実業を子会社化、17年3月総合設計がエスディーネットワークを子会社化した。
17年3月期売上高構成比は、化学品事業(産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、信号炎管、危険性評価試験受託、二次電池試験受託、ロケット固体推進薬原料などの化成品関連、電子材料・機能性材料など)43%、ボトリング事業37%、産業用部材事業(半導体用シリコンウェーハ、耐火・耐熱金物・スプリングワッシャーなど)17%、その他3%である。
化学品事業の自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用を展開し、国内市場シェアは約8~9割と想定されている。ボトリング事業は伊藤園<2593>向けが主力である。産業用部材事業の半導体用シリコンウェーハは小口径4~6インチのニッチ市場を主力としている。海外は並田機工がベトナムで耐火・耐熱金物を製造販売する子会社を設立した。
■中期経営計画「礎100」で事業基盤確立を推進
中期経営計画「礎100」では、18年の創業100周年を迎え、次の100年企業の礎となる事業基盤確立を推進する方針としている。
基本戦略には、成長基盤強化(新商品・新規事業の創出と育成、M&Aや資本・技術提携)、収益基盤強化(経営資源の有効配分、新商品開発のスピードアップ)、グループ経営基盤強化(グループシナジーの最大化、子会社・事業の再編・統廃合、R&Dの新体制構築、海外展開の強化、CSR経営の推進)を掲げている。
新商品・新規事業の創出と育成に関しては、高エネルギー研究所における低コストで高性能な推進薬の製品化、環境エネルギー研究所における次世代蓄電デバイスへの展開、ライフサイエンス研究所における茶殻から有用成分を抽出する技術の高付加価値製品化、新材料技術研究所における光学用途シリコン材料の製品化など、重点分野を一段と強化する。
目標数値(事業環境変化、事業拡大計画修正、新規開発品立ち遅れなどで17年5月に下方修正)は18年度売上高540億円、営業利益24億円、営業利益率4%、連結配当性向20~30%としている。
■18年3月期1Qは大幅増益
今期(18年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.7%増の119億49百万円、営業利益が5.0倍増の2億29百万円、経常利益が3.1倍の3億11百万円、そして純利益が2.0倍の2億07百万円だった。化学品や産業用部材の損益が改善して大幅増益だった。売上総利益は11.8%増加し、売上総利益率は14.8%で1.3ポイント上昇した。販管費は0.2%増加にとどまり、販管費比率は12.9%で0.2ポイント低下した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、化学品は売上高が0.6%減の53億37百万円で営業利益が49.5%増の2億63百万円だった。自動車用緊急保安炎筒は新車装着用、車検交換用とも増加した。受託評価分野ではリチウムイオン2次電池向けの試験が増加した。化成品分野はロケット固体推進薬の原料である過塩素酸アンモニウムなどが減少した。電子材料分野では電気二重層キャパシタ用電解液などが増加した。
ボトリングは売上高が2.8%増の42億61百万円で営業利益が1億09百万円の赤字(前年同期は1億18百万円の赤字)だった。例年実施している定期修理のあったものの、主力の茶系飲料の受注が増加した。産業用部材は売上高が2.4%増の20億35百万円で営業利益が2.4倍の1億02百万円だった。耐火・耐熱金物は減収だったが、金属加工品のばね・座金製品が好調だった。
■18年3月期増収増益予想
今期(18年3月期)連結業績予想(5月15日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比6.8%増の510億円、営業利益が11.0%増の15億円、経常利益が7.7%増の15億50百万円、純利益が11.1%増の8億50百万円としている。ボトリングラインの生産設備増強や電子材料関係の復調もあり増収増益予想である。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)で予想配当性向は27.8%となる。
セグメント別(連結調整前)計画は、化学品の売上高が9.3%増の225億円で営業利益が3.4%増の8億円、ボトリングの売上高が5.2%増の185億円で営業利益が22.0%増の4億60百万円、産業用部材の売上高が0.2%増の80億円で営業利益が3.2%減の2億10百万円としている。
自動車用緊急保安炎筒のガラス破壊機能付への交換促進、受託評価の設備増強と受注増による稼働率向上、ロケット打ち上げ数増加による過塩素酸アンモニウムの順調推移、ペットボトル飲料製造ラインの設備増強、耐火・耐熱金物製品の海外展開、建機・自動車用ばね・座金製品の生産能力増強などの効果を見込んでいる。
■株価は車載電池関連で人気化、過熱感解消して上値試す
株価はEV(電気自動車)車載電池関連として人気化した9月高値813円から反落し、過熱感が解消した。
10月23日の終値761円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS35円91銭で算出)は21倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1010円55銭で算出)は0.7倍台である。時価総額は約183億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が接近して過熱感が解消した。0.7倍台の低PBRも見直して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)