【小倉正男の経済コラム】小池百合子・希望の党代表『失敗の本質』

小倉正男の経済コラム

■政治の人気はそうしたものだが激しい騰落

 小池百合子氏(東京都知事・希望の党代表)の「失敗」はどこに問題があったのだろうか。

 日の出の勢いだった小池氏がいまや人気が凋落――。政治における人気とはそうしたものだが、あまりにも激しい騰落である。

 「排除」「リセット」「さらさらない」「キャンキャン吠えた」という小池流のキーワードが記憶に残っているが、これらはいまや奢りを物語るものになっている。

■小池氏の差別化戦略の大きな失敗

 小池氏の「排除」は、憲法改正をめぐるものだった。民進党からの合流組に憲法改正で「踏み絵」を迫ったものである。

 これは共産党の志位和夫委員長から、「自民党の補完勢力」という批判を受けた。希望の党は、「第二自民党」という的を穿った指摘である。

 選挙では、“自民党はふたつも要らない”、という票の流れとなった。小池氏に排除された立憲民主党のほうが、「反安倍」「反自民」ということでむしろ票が取れた。

 仮に、希望の党というか、小池氏が、「規制緩和を断行する」と踏み絵を迫ったらどうだったろうか。

 それなら、規制緩和ができない自民党と差別化ができる。「革新を目指す保守」というポジションを確立できたのではないか。小池氏は差別化戦略を残念なことに間違えたといえそうである。

■負けたら「鉄の天井」とは・・・

 希望の党は、「安倍一強反対」を掲げていた。「安倍一強反対」というなら、民進党を全部まとめて飲みこむ選択もあったはずだ。

 まとめて呑み込めないなら、「安倍一強反対」などという矮小な目標はいうべきではなかった。

 自民党の規制緩和はスピードが遅い、希望の党は規制緩和をワン&オンリーで行うというべきだった。
それなら、「自民党の補完勢力」「第二自民党」とは指摘されなかったに違いない。

 規制緩和を掲げると同時に都知事の座は投げ捨てて、選挙に出るべきだった。戦場を設定したのだから、大将として選挙に出るしかなかったのではないか。国政か都政かといえば、それは国政という結論になる。

 選挙に負けたら、「鉄の天井」に阻まれた、というのでは、これも奢りめいたことになりかねない。
 希望の党の先行きはわからないが、千載一遇のチャンスを失った感が否定できない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)

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