【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォマートは利益確定売り優勢だが、中期成長力を考慮すれば押し目買いの好機

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 企業間電子商取引プラットフォームのインフォマート<2492>(東マ)の株価は調整局面です。2月13日に発表した今期(15年12月期)連結業績見通しの増益率鈍化が嫌気されて利益確定売りが優勢になったようですが、中期成長力を考慮すれば売られ過ぎの水準と考えられます。押し目買いの好機でしょう。

 フード業界向けのEC(電子商取引)プラットフォーム「FOODS info Mart」で、企業間(BtoB)電子商取引の「ASP受発注システム」「ASP規格書システム」「ASP商談システム」「ASP受注・営業システム」「クラウドサービス」などを提供しています。月額システム使用料収入が収益柱のストック型収益構造です。

 サービス拡充の一環として、フード業界企業向け総合マーケティングサービス「BtoB F-Marketing」や、フード業界向け情報発信の総合ポータルサイト「フーズチャネル」も開始しています。子会社はインフォライズがクラウドサービス事業、インフォマートインターナショナル(香港)が海外「FOODS info Mart」事業を展開しています。

 中期成長を加速させる戦略として業界標準化に向けたフード業界向けBtoBビジネスの強化、他業界BtoB展開の美容業界向け「BEAUTY info Mart」や、医療業界向け「MEDICAL info Mart」による事業領域拡大、次世代BtoB&クラウドプラットフォームの拡販を推進しています。14年11月にはフード業界だけでなく、請求書のやり取りがある全ての業界に対応できる電子請求の新サービス「ASP請求書システム」を開始しました。

 アライアンス戦略では13年5月にJFEシステムズ<4832>、13年6月に東芝テック<6588>、13年11月に東京システムハウス、14年10月にヤマトホールディングス<9064>傘下のヤマトシステム開発とデータ連携しました。

 15年1月には全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と、全国の企業へ電子請求を推進することを目的として業務提携しました。電子請求「ASP請求書システム」による企業のコスト削減・効率化で企業の利益アップを応援し、3年後までに100万社の普及を目指します。

 14年12月末時点の「FOODS info Mart」利用企業数(海外事業を除く)は、13年12月末比2958社増加の3万7160社(売り手企業が同2662社増加の2万9919社、買い手企業が同296社増加の7241社)となりました。大手の食材卸売企業や外食・中食チェーンも利用し、電話やFAXからWebに切り替えて受発注する企業・店舗が増加基調です。

 また14年の「FOODS info Mart」年間取引高は9806億円となり、13年に比べて1188億円増加しました。中期目標として掲げた年間システム取引高1兆円は15年に達成が濃厚となりました。また14年の外食産業における仕入金額ベースのシェアは、13年の12.4%から1.2ポイント上昇して13.6%となりました。

 2月13日に発表した前期(14年12月期)連結業績は売上高が前々期比14.8%増の49億79百万円、営業利益が同77.7%増の19億45百万円、経常利益が同77.2%増の19億62百万円、純利益が同86.6%増の11億77百万円となりました。計画をやや下回りましたが大幅増収増益でした。

 配当予想は年間19円38銭(第2四半期末9円69銭、期末9円69銭)としました。13年7月1日付の株式2分割および14年1月1日付の株式2分割を考慮すると、実質的に前期比8円82銭増配となります。

 各システムの利用拡大に伴ってシステム使用料が順調に増加しました。中期成長に向けた人員増加(新卒採用中心)に伴い販管費で人件費が増加しましたが、既存システムの期間短縮による償却が前々期末に完了したため、ソフトウェア償却費が大幅に減少して売上原価率は11.4ポイント低下しました。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)11億57百万円、第2四半期(4月~6月)12億06百万円、第3四半期(7月~9月)12億66百万円、第4四半期(10月~12月)13億48百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期4億17百万円、第3四半期5億46百万円、第4四半期5億57百万円です。ストック型収益構造で売上高、利益とも拡大基調です。

 今期(15年12月期)の連結業績見通し(2月13日公表)については、売上高が前期比19.5%増の59億48百万円、営業利益が同17.4%増の22億83百万円、経常利益が同16.2%増の22億79百万円、純利益が同19.3%増の14億04百万円としています。

 配当予想については年間11円76銭(第2四半期末5円88銭、期末5円88銭)としています。15年1月1日付の株式2分割を考慮すると実質的に2円07銭の増配となります。配当方針は個別業績に応じた配当性向(基本配当性向50%)としています。

 今期から事業セグメントを変更し、ASP受発注事業(従来のASP受発注事業)、ASP規格書事業(従来のASP規格書事業)、ES事業(従来のASP商談事業とASP受注・営業事業、およびASP請求書システム)、その他(従来のクラウドサービス事業と海外事業)としました。

 セグメント別売上高の計画は、ASP受発注事業が同12.5%増の33億13百万円、ASP規格書事業が同31.8%増の9億77百万円、ES事業が同28.3%増の15億39百万円、その他が同29.3%増の1億19百万円としています。

 利益面ではサーバー増強によるデータセンター費用の増加、新システムリリースによるソフトウェア償却費の増加、中期成長に向けた人員増加(新卒採用中心)による人件費の増加で、前期に比べて増益幅が縮小する見通しですが、ASP受発注システムなど各システムの利用企業・店舗数増加に伴ってシステム使用料が増加基調であり、好業績が期待されます。

 今期の重点施策として、フード業界BtoBのシェア拡大を加速して「FOODS info Mart」利用企業数4万社を目指し、電子請求プラットフォームのデファクト化を推進する方針です。業界標準化が進展し、サービス拡充、ホテル・給食業界への利用企業開拓、さらに新規分野への事業展開も寄与して中期的に成長加速が期待されます。

 株価の動き(15年1月1日付で株式2分割)を見ると、14年12月の戻り高値1169円から反落して調整局面となりました。2月26日には895円まで下押して、14年10月22日以来となる900円割れの場面がありました。今期業績見通しの増益率鈍化が嫌気されて利益確定売りが優勢になった可能性が考えられますが、中期成長力を考慮すれば売られ過ぎ感を強めています。

 2月26日の終値900円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円26銭で算出)は38~39倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間11円76銭で算出)は1.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS66円75銭で算出)は13倍近辺です。

 週足チャートで見ると26週移動平均線に続いて52週移動平均線を割り込んで調整局面の形です。ただし中期成長力を考慮すれば売られ過ぎの水準と考えられます。押し目買いの好機でしょう。

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