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アイビーシーは17年9月期減益だが、売上高は10期連続で過去最高を更新、18年9月期は新製品も寄与して2桁増収増益予想
- 2017/11/15 07:39
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイビーシー<3920>(東1)はネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニーである。情報通信ネットワークが高度化・複雑化する中で性能監視ツールの重要性が増している。11月14日発表した17年9月期非連結業績は、先行投資負担で減益だが、売上高は10期連続で過去最高を更新。そして18年9月期は新製品も寄与して2桁増収増益予想である。株価は下値固め完了感を強めている。中期成長力を見直して反発が期待される。
■ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニー
ネットワーク機器・システムの稼働状況や障害発生の予兆などを監視して、情報通信ネットワークシステム全体の性能状態を容易に可視化できるネットワークシステム性能監視ツール(ソフトウェア)のリーディングカンパニーである。
ネットワークシステム性能監視ツールとは、ネットワークシステムを構成する様々なメーカーのネットワーク機器や仮想サーバーの状況を、俯瞰的かつきめ細やかに収集して表示・解析・通知を行うソフトウェアのことである。ネットワークシステム全体の稼働・性能状況を監視し、ネットワークシステムの障害発生を未然に防ぐことを可能にする。
クラウドコンピューティングなど新たな技術が浸透し、情報通信ネットワークシステムが高度化・複雑化・ブラックボックス化する一方で、システム環境変化による障害予兆の特定が困難になる問題が深刻化している。このためネットワークシステムの安定稼働や品質向上を実現するネットワークシステム性能監視ツールの重要性が一段と増している。
■自社開発の性能監視ツールおよび運用支援サービスを提供
マルチベンダーの機器で構成される複雑なネットワークシステム全体の稼働・性能状況を、精度の高いデータを取得して分析するネットワークシステム性能監視ツールの開発・販売および導入支援サービス、顧客のネットワークシステムに内在する問題点や課題を抽出して最適な改善策を提示する分析・性能評価サービス、ネットワークシステム設計・構築・運用支援のコンサルティングサービスを提供している。
17年9月期の事業別売上高構成比は、ネットワークシステム性能監視ソフトウェアに係る自社開発製品のライセンス(ソフトウェア使用権)販売が72%、自社製品導入支援やネットワークシステム構築に係るコンサルティングなどのサービス提供が15%、その他物販(他社製情報通信機器等の販売)が13%だった。
■マルチベンダー対応製品の自社開発とデータ・ノウハウの蓄積が強み
問題・障害発生後に気付く従来型の手法ではなく、問題・障害の予兆をいち早く検知して問題・障害発生を未然に防ぐ新たな手法で、ネットワークシステム性能監視に必要なマルチベンダー対応ソフトウェアを自社開発し、様々な環境下でのデータおよび統計分析・解析ノウハウを蓄積して、サービスをワンストップで提供していることが強みだ。
継続的に自社開発製品の機能拡張を推進して、対応メーカー数と分析ポイント数は06年9月期末22社・339ポイントから、16年9月期末108社・3390ポイントまで拡張した。ほぼ全ての主要メーカーに対応している。100社を超えるマルチベンダー対応で使い勝手の良い性能監視ソフトウェアは世界でも類がない。
■新製品「System Answer G3」発売
主力製品はネットワーク性能監視ソフトウェア「System Answer」シリーズである。マルチベンダー対応で幅広いメーカー機器の性能情報を可視化できる点が同業他社に対する圧倒的なアドバンテージとなり、業種・業態・規模を問わず幅広く採用されている。累計販売実績は08年12月リリース「System Answer」シリーズと11年7月リリース「System Answer G2」シリーズの合計で、17年3月現在1200システム以上に達している。
同社の製品開発は、システムが正しく動いているかどうかを監視し、問題が発生した際にどこで発生したのかを検知・把握する「死活監視」「状態監視」のための「保守ツール」から、性能上問題がないかどうかを分析し、障害が発生する前に問題点を検知して適切な対処を施す「性能監視」のための「収集ツール」へと発展してきた。
今後はコンピュータやネットワークシステムを維持・改善するための根拠ある「判断ツール」として活用できる「情報監視」機能を備えた製品が必要とされている。情報監視とは、コンピュータやネットワークシステム運用時に発生する数々の問題を、的確に判断するための情報や根拠をいち早く把握するための監視手法である。
そして17年7月に新製品「System Answer G3」シリーズを発売した。コンセプトを「性能監視から情報監視へ」として、監視設定の自動化、監視の見落とし防止、仮想化監視機能の強化、IPMIによるハードウェア監視などの機能を盛り込んだ。情報監視作業の大部分をツールが自動で行う。
■中期成長に向けてサービス領域拡大、成長分野に進出
中期成長戦略として、M&A・アライアンスも活用したサービス領域の拡大や成長分野への進出、パートナー企業との連携強化による販売力の強化・サービス型販売の促進、情報監視機能を強化した次期製品の開発・市場投入を推進している。
サービス領域の拡大では、17年2月コーソルとデータベース運用管理ソリューションで協業開始、17年4月ネットフォースへ出資、17年8月特化型クラウドインテグレーションサービスSCIのサービスメニューの一つとして次世代MSPサービスSAMSを開始した。
成長分野への進出では、IoT分野およびブロックチェーン分野への事業展開を推進している。16年7月iBeed社を完全子会社化、16年8月コンセンサス・ベイス社とブロックチェーン分野で業務提携、17年6月Pacteraグループの一員であるパクテラ・コンサルティング・ジャパンと業務提携した。また17年7月にはiBeed社を中心にコンセンサス・ベイス社など複数社と業務・資本提携に基本合意、17年8月にはiBeed社が一般社団法人Fintech協会に入会した。
パートナー企業との連携強化による販売力強化では、伊藤忠テクノソリューションズ、富士通エフサス、日立システムズ、ユニアデックス、NECフィールディングなど、大手システムインテグレーターとの連携を強化している。サービス型販売の促進では16年8月スカイアーチネットワークス社と協業開始した。
■ソフトウェアのライセンス販売で高収益のストック型ビジネスモデル
収益面では、主力の「System Answer G2」シリーズのソフトウェアライセンス販売という、高収益のストック型ビジネスモデルが特徴である。また顧客の検収時期の影響で、第2四半期(1~3月)と第4四半期(7~9月)の構成比が高くなりやすいという季節要因がある。大手優良企業を中心とした顧客構成で売上債権の貸倒実績が無く、安定的な財務体質を維持していることも特徴だ。
利益配分については、今後の業績の推移や財務状況等を考慮したうえで将来の事業展開のための内部留保等を総合的に勘案しながら配当を検討することを基本方針としているが、現在は成長過程にあるため、事業上獲得した資金については事業拡大のための新規投資等に充当することを優先するとしている。
■17年9月期は先行投資負担で減益だが増収基調に変化なし
11月14日発表した前期(17年9月期)非連結業績は、売上高が前々期(16年9月期)比6.6%増の12億16百万円、営業利益が36.1%減の1億86百万円、経常利益が49.2%減の1億69百万円、純利益が41.0%減の1億15百万円だった。配当は無配としている。
人材確保に伴う人件費の増加、本社オフィス増床に伴う関連費用の増加、新製品開発に係る動作検証環境整備のためのシステム導入費用の発生など、中期成長に向けた先行投資負担で減益だったが、増収基調に変化はない。
事業別の売上高は、ライセンス販売が4.6%減の8億78百万円、サービス提供が52.1%増の1億84百万円、その他物販が55.1%増の1億53百万円だった。サービス提供はライセンス販売の増加に伴って構築・運用サポートが増加している。その他物販は公共分野および小売業の大型案件が寄与した。
■18年9月期は新製品も寄与して2桁増収増益予想
今期(18年9月期)非連結業績予想(11月14日公表)は売上高が前期(17年9月期)比15.1%増の14億円、営業利益が15.8%増の2億16百万円、経常利益が27.8%増の2億16百万円、純利益が12.8%増の1億29百万円としている。配当予想は未定としている。
新製品「System Answer G3」シリーズも本格寄与して2桁増収増益予想である。ネットワークシステム性能・稼働監視ソフトウェア市場は拡大基調であり、マルチベンダー対応に強みを持つ競争優位性が一段と鮮明化することが予想される。事業環境は良好であり、中期成長シナリオに変化はないだろう。
■株価は下値固め完了感、中期成長力見直して反発期待
株価は戻りが鈍く安値圏900円台でモミ合う形だが、下押す動きも見られず下値固め完了感を強めている。
11月14日の終値948円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS23円47銭で算出)は40倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS271円47銭で算出)は3.5倍近辺である。時価総額は約52億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が下値を支える形だ。そして26週移動平均線突破の動きを強めている。中期成長力を見直して反発が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)