【小倉正男の経済コラム】IoTが日本企業にもたらす思いもよらぬ需要

IoT

■ネット通販が全盛で包装箱に凄まじい需要

 IoT(インターネット・オブ・シングス)が身近なものになっている。

 紙袋・紙器企業に取材をしたら、インバウンドで紙袋の需要が旺盛だった、と。
 確かに、旅行客が大挙して買い物をすれば、紙袋に商品を入れてお客に渡さなければならない。大量の紙袋が必要になる。

 最近では、ダンボールや紙の包装箱が成長期に入っているというのである。
 これはIoTの進展というかネット通販で、商品を包装箱に入れて送る必要があり、凄まじい需要が起こっている。様々な商品を送るわけであり、包装箱の形状も多様を極めているということだ。

 ネット通販は、いまでは全盛といった状態である。ネット通販が繁盛すれば、ダンボールの包装箱に需要が飛び火する。思わぬところというか、新しい需要が生まれている。

 紙袋・紙器企業が、天から降って沸いたような需要で新たな成長期に入っていることになる。

■アメリカのお客がスマホでドレスシャツを注文

 国内のドレスシャツ企業、ドレスシャツとはワイシャツのことなのだが、アメリカのネット通販企業と提携――。アメリカのお客が、スマホからのイージーオーダーのドレスシャツを注文、日本で縫製してお客に製品を直送するシステムで販売している。

 アメリカにはイージーオーダーというものはないようで、案外、需要は旺盛というのである。このビジネスは開始されたばかりだが、1日120着の注文が舞い込んでいる。IoT、インターネットが販売チャネルを大きく変えているわけである。

 例えば、化粧品企業などにも、中国向けのEC(イー・コマース)業者がメーカーから買い取りで化粧品を仕入れるといったビジネスが出てきている。

 EC業者は、化粧品企業から、商品を買い取って自社のECサイトで販売する。化粧品企業としては、委託販売ではないから、売れ残りが戻ってくることはない。しかもEC業者が仕入れて販売しているボリュームは小さいものではない。

 IoTは、海外に店舗を構えなくても企業が世界化できるようにマーケットを変えている。企業は、本業を深掘りして磨いていれば、IoTというツールで思いもよらぬ需要を発見できる。そうした変化が始まっている。

■IoTという変化が新しい成長への切り口

 これらに紙袋・紙器企業、ドレスシャツ企業、化粧品企業は、いずれも日本ではフツーの企業である。そう特徴があると見られている企業ではない。いや悪くいえば、埋もれていたような企業である。

 しかし、IoTというツールを使って世界市場にアクセスすると有望な企業になる。
 世界マーケットから見ると、日本企業のポテンシャルは大きなものになる。IoTが、フツーの日本企業を世界マーケットに押し出している。

 経済というのは、確かに生き物で、思わぬ環境の変化で成長できたり、衰退したりする。景気が良くなっているという実感がないというが、経済の変化は確実に起こっている。

 IoTは、日本企業に新しい成長を約束する切り口になる。日本企業もそう捨てたものではない。IoTという時代の変化のなかでしたたかに生き残っていくのは間違いない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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