- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- Jトラストは売り一巡感、タイGLに関して具体的な対応を確定すべく努力
Jトラストは売り一巡感、タイGLに関して具体的な対応を確定すべく努力
- 2017/11/29 07:34
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
Jトラスト<8508>(東2)は、銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指して事業基盤を強化している。18年3月期は第2四半期累計が大幅営業増益・最終黒字となり、通期も大幅増収増益予想である。株価は出資先のタイGL社を巡る不透明感で急反落したが売り一巡感を強めている。なお11月13日に「当社のGLに対する現状の認識と今後の予想される方向性について」をリリースしている。今後の考えられる方向性として三つのシナリオを想定し、関係当局とも密接に協議しつつ、11月末までに具体的な対応を確定すべく努力するとしている。
■国内外で金融事業を中心に業容拡大
国内外でM&Aや債権承継などを積極活用して業容を拡大している。そして銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指し、国内外において事業基盤の強化に取り組み、特に韓国やインドネシアなどアジア地域での金融事業拡大を推進している。
事業セグメントは、国内金融事業(信用保証、債権回収、クレジット・信販、その他の金融)、韓国金融事業(貯蓄銀行、債権回収、キャピタル)、東南アジア金融事業(銀行、債権回収、販売金融)、総合エンターテインメント事業(アミューズメント施設運営など)、不動産事業(戸建分譲中心の不動産売買、流動化不動産中心の収益物件仕入・販売)、投資事業、その他事業としている。
17年3月期のセグメント別営業収益構成比は国内金融事業13%、韓国金融事業34%、東南アジア金融事業21%、総合エンターテインメント事業18%、不動産事業8%、投資事業3%、その他事業3%だった。
国内金融事業は日本保証、Jトラストカードなどが展開している。韓国金融事業はJT親愛貯蓄銀行、JT貯蓄銀行、JTキャピタル、TA資産管理など総合金融サービスを展開するための事業基盤整備が完了している。東南アジアでは、金融事業はJトラスト銀行インドネシア、投資事業はJトラストアジアを中心に展開している。
Jトラストアジアは販売金融事業のタイGL社に順次出資し、東南アジアにおける戦略的パートナーとしている。JトラストアジアがタイGL社と共同でインドネシアに設立した割賦販売金融事業のGLFI社(出資比率20%で持分法適用関連会社)は16年7月営業開始した。
総合エンターテインメント事業および不動産事業は、KeyHolder(アドアーズが17年10月1日付で持株会社に移行して商号変更)<4712>が展開している。
■収益はM&A・のれん償却・事業再編・不良債権処理などで変動
収益はM&A・のれん償却・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。18年3月期から国際財務報告基準(IFRS)を任意適用した。利益配分については、将来の経営環境や業界動向を総合的に勘案しながら、積極的な利益還元を図ることを基本方針としている。
■18年3月期(IFRS)2Q累計は大幅営業増益・最終黒字化
11月13日発表した今期(18年3月期)第2四半期累計の連結業績は、営業収益が前年同期比6.3%増の414億11百万円、営業利益が41億87百万円(前年同期は2億66百万円)、そして親会社の所有者に帰属する純利益が22億69百万円(同21億72百万円の赤字)だった。
前期にJトラストアジアでマヤパダ銀行の株式売却益を計上した反動減がマイナス要因となり、総合エンターテインメント事業も低調だったが、韓国銀行業における貸出金の増加、Jトラスト銀行における純金利収入の増加なども寄与して大幅営業増益となり、最終黒字化した。
セグメント別営業利益は、国内金融事業が7.0%減の24億88百万円、韓国金融事業が93.8%増の24億49百万円、東南アジア金融事業が2億56百万円の赤字(同28億15百万円の赤字)、総合エンターテインメント事業が3億57百万円の赤字(同2億52百万円の黒字)、不動産事業が21.1%増の1億56百万円、投資事業が75.6%増の10億73百万円、その他が53百万円の黒字(同26百万円の赤字)だった。
■18年3月期(IFRS)は実質大幅増収増益予想
今期(18年3月期、IFRS)連結業績予想(5月12日公表)は、営業収益が894億90百万円、営業利益が100億58百万円、親会社の所有者に帰属する純利益が81億37百万円としている。前期の実績をIFRS表示した場合の営業収益791億円、営業利益9億円、純利益22億円の赤字に対して、営業収益は103億円増収、営業利益は91億円増益、純利益は103億円増益となる。実質的に大幅増収増益予想である。
セグメント別営業利益の計画は、国内金融が46億48百万円、韓国金融が32億60百万円、東南アジア金融が24億57百万円、総合エンターテインメントが3億51百万円、不動産が4億82百万円、投資が25億41百万円、その他が5百万円としている。国内金融事業は安定した営業収益を確保する。韓国金融事業は貸出ポートフォリオの調整で収益基盤安定を推進する。東南アジア金融事業はリスク管理徹底による貸倒費用の減少や経費削減を推進する。
通期営業利益予想に対する第2四半期の進捗率は、連結ベース41.6%(国内金融事業が53.5%、韓国金融事業が75.1%など)である。国内金融事業は安定した営業収益の確保が期待されル。韓国金融事業の進捗率は高水準であり、通期上振れが期待される。東南アジア金融事業は営業損益改善基調である。通期ベースでも好業績が期待される。
なお配当予想は前期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としている。予想配当性向は15.2%となる。
■18年3月期ROE10.0%目標
中期経営計画では、中期ビジョンとして「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業を目指す」を掲げている。事業拡大が望めるアジア銀行業からの利益貢献を中心として、成長市場におけるIRR15%以上の投資案件をターゲットに3年間で500億円~1000億円の投資を目指す。また株式価値の最大化を経営の最重要課題の一つとして位置付け、株価が割安であると判断したときには機動的に自社株買いを実施する。
国内金融事業では消費者金融事業を縮小し、不動産関連の信用保証事業および債権回収事業を拡大する。またM&Aを活用して新分野への進出を目指す。韓国金融事業ではグループ内の相互連携を通じて各事業を有機的に連携させ、債権残高積み増しと収益拡大に取り組む。東南アジア金融事業では、Jトラストインドネシア銀行の不良債権回収事業の収益強化と財務健全性の向上に取り組むとともに、さらなるM&Aを推進する方針だ。
中期成長に向けて、M&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、M&A・事業再編および事業構造改革に伴う一時的利益・費用の計上で収益が大幅に変動する可能性もあるが、韓国金融事業の収益改善、東南アジアへの積極的な業容拡大、グループシナジーなどの効果で銀行業の収益が本格化し、中期的に収益拡大が期待される。なお16年5月には東証1部への申請に向けた検討を開始したと発表している。
■株価は売り一巡感
株価は出資先のタイGL社を巡る不透明感で10月13日の戻り高値1048円から急反落したが、11月15日の直近安値730円から切り返して売り一巡感を強めている。
11月28日の終値760円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS79円05銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1455円90銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約856億円である。月足チャートで見ると700円近辺はほぼ底値圏の形だ。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)