久世は戻り歩調、18年3月期下振れ懸念の織り込み完了して低PBRも見直し

 久世<2708>(JQ)は、外食・中食産業向け業務用食材卸売事業を首都圏中心に展開している。18年3月期第2四半期累計が大幅減益となり、通期も下振れに注意が必要だが、株価は戻り歩調だ。下振れ懸念の織り込みが完了して低PBRも見直し材料だろう。

■業務用食材卸売事業を首都圏中心に展開

 首都圏中心に外食・中食産業向け業務用食材の卸売事業を展開し、子会社キスコフーズは国内とニュージーランドで業務用高級ソース・高級スープの製造、久世フレッシュ・ワンは東京都内を中心に生鮮野菜など農産品の卸売を展開している。

 17年3月期のセグメント別売上高構成比は、食材卸売事業92%、食材製造事業7%、不動産賃貸事業0%だった。食材卸売事業の販売チャネル別売上高構成比は、ファーストフード・ファミリーレストラン・カフェ41%、ディナーレストラン・ホテル・専門店25%、デリカ・惣菜・ケータリング・娯楽施設・その他19%、居酒屋・パブ15%だった。

 低採算だった大口取引先(居酒屋業態)との取引を16年1月解消し、効率性を意識した営業推進、高付加価値商品の拡販、競争力のある商品提案、物流改善の効果などで収益改善を目指している。

■連結売上高1000億円を中長期目標としてチェーン戦略推進

 中長期目標に連結売上高1000億円を掲げ、基本戦略(5つの柱)として、チェーン戦略(KZN=久世全国ネットワーク)=効率的な全国物流ネットワークの構築と機能の強化、エリア戦略=3大都市圏のエリア特性にあった戦略、フルライン戦略=ワンストップショッピングを可能とするフルライン機能の強化、商品開発・加工・製造戦略=マーチャンダイズ機能の強化、海外事業戦略=新しいマーケットの開拓を推進している。

 販路拡大に向けたM&A・アライアンス戦略では、12年6月中部圏の酒類販売大手サカツコーポレーションと業務提携、14年4月高級飲食店向けに強みを持つ水産物中卸会社の旭水産を子会社化した。子会社の久世フレッシュ・ワンは15年9月横浜中央市場の青果仲卸会社である丸ユ商店と業務提携した。また横浜事業所の開設、大田市場と横浜市場での買参権取得など、営業エリア拡大戦略を推進している。

■18年3月期増収増益予想、下期挽回期待だが下振れに注意

 今期(18年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比3.1%増の635億円、営業利益が5.5%増の6億円、経常利益が1.0%増の6億70百万円、純利益が0.5%増の4億90百万円としている。配当予想は前期と同額の年間12円(期末一括)で予想配当性向は9.3%となる。

 第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比2.4%増の310億72百万円、営業利益が74.1%減の52百万円、経常利益が53.9%減の1億15百万円、純利益が39.9%減の1億03百万円だった。

 売上高はほぼ計画水準で増収だが、仕入価格や物流費の上昇で営業利益と経常利益は大幅減益だった。売上総利益率は18.8%で0.3ポイント低下、販管費比率は18.7%で0.2ポイント上昇した。

 食材卸売事業は売上高が2.8%増の290億20百万円で営業利益が19.4%減の3億32百万円、食材製造事業は売上高が2.7%減の20億59百万円で営業利益が39.0%減の1億43百万円、不動産賃貸事業は売上高が0.5%増の73百万円で営業利益が2.6%増の53百万円だった。

 通期ベースでは、新規取引先の開拓や既存取引先のインストアシェアアップで増収基調となり、高付加価値商品拡販による売上総利益率の改善、一段の物流業務効率化による物流費の削減などで増益予想としている。

 ただし通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.9%、営業利益が8.7%、経常利益が17.2%、純利益が21.0%と低水準である。下期の挽回に期待したいが下振れに注意が必要だろう。

■株主優待制度は毎年3月末に実施

 株主優待制度は、毎年3月31日現在1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株数に応じて当社ブランド特選無洗米(山形県天童産はえぬき・新米)を贈呈する。

■株価は戻り歩調、下振れ懸念の織り込み完了して低PBRも見直し

 株価は9月の直近安値873円から切り返して戻り歩調だ。18年3月期下振れ懸念の織り込みが完了したようだ。

 12月15日の終値962円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS129円14銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1423円89銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約37億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。基調転換を確認した形だ。低PBRも見直し材料だろう。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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