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インフォマートは17年12月期下振れ懸念の織り込み完了、18年12月期は収益改善期待
- 2017/12/21 08:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォマート<2492>(東1)は企業間電子商取引「BtoBプラットフォーム」を運営している。17年12月期は営業・経常増益だが、減損損失計上で最終減益予想である。また第3四半期の進捗率がやや低水準のため通期予想の下振れに注意が必要となる。ただし利用企業数が増加基調であり、18年12月期も収益拡大が期待される。株価は17年12月期下振れ懸念の織り込みが完了して売り一巡感を強めている。
■企業間(BtoB)電子商取引プラットフォームを運営
企業間の商行為を電子化する企業間電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」として、企業間受発注業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注、食の安全・安心の商品仕様書DBであるBtoBプラットフォーム規格書、企業間請求書発行・受取業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム請求書、BtoB専用の販売・購買システムであるBtoBプラットフォーム商談を運営している。
17年6月には受発注の新システム(卸・食品メーカー)の提供を開始、17年9月には無料で使えるBtoBプラットフォーム見積書の提供を開始した。17年11月にはBtoBプラットフォームが、一般社団法人クラウドサービス推進機構(CSPA)の「クラウドサービス認定プログラム」に認定された。
システムをネット経由で提供するクラウド型サービスであり、利用企業数増加に伴って月額課金のシステム使用料収入が拡大する。売上高の95%が月額システム使用料のストック型収益モデルである。配当政策は個別業績に応じた配当性向50%を基本方針としている。
■国内最大級のBtoBプラットフォームで利用企業数は増加基調
フード業界向けで外食と食材卸の間の受発注をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注を主力として、全業界を対象とするBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数も増加基調である。国内最大級のBtoBプラットフォームである。
17年9月末のBtoBプラットフォーム利用企業数(無料利用含む全業界ID数で集計、海外除く)は16年12月末比3万1065社増加の15万6115社、事業所数(本社・支店・営業所・店舗)は5万8540事業所増加の46万3097事業所となった。また16年度の流通金額(全業界の受発注金額と請求書金額の合計)は2兆2942億円である。
受発注(外食・卸)は買い手企業数(外食)が242社増加の2268社、売り手企業数(卸)が1558社増加の3万1453社、17年6月提供開始の受発注(外食・食品メーカー)は買い手企業数(卸)が15社、売り手企業数(卸・食品メーカー)が187社となった。システム連携は92社・111ソリューションである。
規格書は、買い手機能が75社増加の525社、卸機能が37社増加の574社、メーカー機能が37社増加の6222社となった。
15年1月サービス開始した請求書の利用企業数合計は3万834社増加の15万5235社(うち有料契約数は719社増加の2535社)となった。その後も増加ペースが加速し、利用企業数合計は17年10月に16万社を突破した。また17年1~9月の流通金額は2兆934億円となった。
商談は、買い手企業数が47社増加の6902社、売り手企業数が156社減少の1556社となった。
BtoB標準プラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化して利用企業数100万社への普及を目指すとしている。またFinTech分野に関しては、請求書関連業務の新たなモデル作りのため各金融機関・パートナーとともに実証実験を行い、17年12月に利用企業数30万社、電子請求の年間流通金額2兆円を目指すとしている。
■17年12月期は大幅営業・経常増益、減損計上で最終減益予想
今期(17年12月期)の連結業績予想(7月25日に減損損失計上で純利益を減額修正)は、売上高が前期(16年12月期)比28.4%増の79億円、営業利益が33.1%増の26億03百万円、経常利益が33.5%増の26億円、純利益が26.4%減の8億87百万円としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比8.5%増の49億28百万円だが、営業利益が10.1%減の12億78百万円、経常利益が8.4%減の12億66百万円、純利益が98.7%減の11百万円だった。売上高、利益とも計画を下回った。
利用企業数が増加基調で受発注が10.5%増収、規格書が10.1%増収、ESが3.5%増収だった。ただし売上高の計画未達やソフトウェア償却費の増加などで営業利益、経常利益とも減益だった。売上総利益率は63.9%で6.7ポイント低下、販管費比率は38.0%で1.3ポイント低下した。さらにBtoBプラットフォーム請求書に関する減損損失11億81百万円計上で純利益は大幅減益だった。
通期ベースでは、減損損失計上で純利益が減益となるが、利用企業数が増加基調でストック型収益の月額課金システム使用料が伸長し、ソフトウェア償却費や人件費の増加を吸収して大幅増収・営業増益・経常増益予想としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が62.4%、営業利益が49.1%、経常利益が48.7%、純利益が1.2%である。ストック型収益モデルであることを考慮してもやや低水準であり、通期会社予想は下振れに注意が必要だろう。ただし利用企業数が増加基調であり、来期(18年12月期)も収益拡大が期待される。
配当予想は年間6円54銭(第2四半期末3円27銭、期末3円27銭)としている。17年1月1日付株式2分割を考慮して前期の11円80銭を5円90銭に換算すると、実質的に64銭増配となる。予想配当性向は89.5%である。
■中期経営計画で18年12月期の受発注5万社と請求書100万社目標
中期経営計画では基本方針を、フード業界におけるBtoBプラットフォーム受発注の利用拡大・シェア拡大、BtoBプラットフォーム請求書の全業界展開・デファクト化、BtoB電子商取引プラットフォームの構築としている。
フード業界におけるシェア拡大では18年12月期までの目標として利用企業数5万社(15年12月期実績3.9万社)およびシステム取引高・外食シェア2兆円・30%(同1.2兆円・16%)を目指す。電子請求プラットフォームのデファクト化では18年12月期までの目標として利用企業数100万社(同4.8万社)およびシステム取引高3兆円(同1261億円)を目指す。BtoB電子商取引プラットフォームの構築ではシステムコンセプトとして全業界対応BtoBプラットフォーム(同フード業界ASPシステム)を目指す。
目標値には18年12月期売上高95億円(受発注47億28百万円、規格書15億44百万円、ES28億39百万円、その他4億29百万円)、営業利益36億03百万円、経常利益36億円、純利益24億23百万円を掲げている。
そして2020年までに、あらゆる業界にBtoBプラットフォームを提供し、グローバルなBtoBインフラ企業を目指すとしている。積極的な事業展開で中期成長シナリオに変化はないだろう。
■株価は17年12月期下振れ懸念の織り込み完了して売り一巡
株価は10月30日の戻り高値867円から急反落し、12月8日には634円まで調整する場面があった。ただし概ね650円近辺でモミ合う形だ。17年12月期下振れ懸念の織り込みが完了して売り一巡感を強めている。
12月20日の終値653円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS7円31銭で算出)は89倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円54銭で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS76円02銭で算出)は8.6倍近辺である。時価総額は約847億円である。
週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んで調整局面だが、売り一巡して反発を期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)