カーリットホールディングスは過熱感解消して切り返し、18年3月期大幅増益予想で車載電池関連のテーマ性

 カーリットホールディングス<4275>(東1)は化学品事業を主力に、M&Aを積極活用して規模拡大や事業多様化を積極推進し、2次電池試験受託なども強化している。当社はロケット用固体推進薬原料を国内で唯一製造しており、宇宙関連銘柄の一つである。18年3月期は増額修正して大幅増益予想である。株価はEV(電気自動車)電池関連で人気化した11月高値から反落したが、過熱感が解消して切り返しの動きを強めている。

■化学品、ボトリング、産業用部材を展開、M&Aで規模拡大と事業多様化

 グループ収益基盤と総合力強化に向けたM&A戦略で、規模拡大と事業多様化を推進している。

 12年1月工業用塗料販売・塗装工事の富士商事を子会社化、12年8月耐火・耐熱金物製造販売の並田機工を子会社化、13年10月一級建築士事務所の総合設計を子会社化、14年2月各種スプリング製造・販売の東洋発條工業を子会社化、15年10月並田機工がアジア技研からスタッド事業を譲り受け、16年2月合成樹脂原材料販売の三協実業を子会社化、17年3月総合設計がエスディーネットワークを子会社化した。

 17年3月期売上高構成比は、化学品事業(産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、信号炎管、危険性評価試験受託、二次電池試験受託、ロケット固体推進薬原料などの化成品関連、電子材料・機能性材料など)43%、ボトリング事業37%、産業用部材事業(半導体用シリコンウェーハ、耐火・耐熱金物・スプリングワッシャーなど)17%、その他3%である。

 化学品事業の自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用を展開し、国内市場シェアは約8~9割と想定されている。ボトリング事業は伊藤園<2593>向けが主力である。産業用部材事業の半導体用シリコンウェーハは小口径4~6インチのニッチ市場を主力としている。海外は並田機工がベトナムで耐火・耐熱金物を製造販売する子会社を設立した。

■中期経営計画「礎100」で事業基盤確立を推進

 中期経営計画「礎100」では、18年の創業100周年を迎え、次の100年企業の礎となる事業基盤確立を推進する方針としている。

 基本戦略には、成長基盤強化(新商品・新規事業の創出と育成、M&Aや資本・技術提携)、収益基盤強化(経営資源の有効配分、新商品開発のスピードアップ)、グループ経営基盤強化(グループシナジーの最大化、子会社・事業の再編・統廃合、R&Dの新体制構築、海外展開の強化、CSR経営の推進)を掲げている。

 注力分野と位置付ける電池受託評価試験分野では、17年3月危険性評価複合施設を新設した。17年11月には東レリサーチセンターと業務提携した。幅広い受託試験体制を構築する。18年1月には大型リチウムイオン電池圧壊試験機を導入する。さらに順次試験設備を導入する計画だ。

 新商品・新規事業の創出と育成に関しては、高エネルギー研究所における高性能でコスト競争力のあるロケット燃料の製品化、ライフサイエンス研究所における茶殻から有用成分を抽出する技術の高付加価値製品化、新材料技術研究所における高透過率シリコン、ゲルマニウムなどのサーモグラフィー用材料の製品化など、重点分野を一段と強化する。

 目標数値(事業環境変化、事業拡大計画修正、新規開発品立ち遅れなどで17年5月に下方修正)は18年度売上高540億円、営業利益24億円、営業利益率4%、連結配当性向20~30%としている。

■18年3月期2Q累計は大幅増益

 今期(18年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.8%増の249億64百万円、営業利益が71.4%増の6億74百万円、経常利益が75.1%増の7億77百万円、純利益が2.0倍の5億18百万円だった。化学品や産業用部材の損益が改善した。売上総利益率は15.5%で0.7ポイント上昇、販管費比率は12.8%で0.4ポイント低下した。

 化学品は売上高が5.2%増の108億68百万円で、営業利益が58.9%増の4億25百万円だった。自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用とも増加した。受託評価分野では電池試験が減少したが、危険性評価試験が伸長し、全体として増収だった。化成品分野は減収、電子材料分野は増収、セラミック材料分野は減収だった。

 ボトリングは売上高が2.5%増の92億83百万円で、営業利益が3.3%増の1億24百万円だった。主力の茶系飲料が増加した。産業用部材は売上高が7.2%増の41億75百万円で、営業利益が99.1%増の1億49百万円だった。ばね・座金製品が販路拡大や中国向け製品の市場環境回復などにより寄与した。

■18年3月期増額修正して大幅増益予想

 今期(18年3月期)連結業績予想(10月31日に利益を増額修正)は、売上高が前期(17年3月期)比6.8%増の510億円、営業利益が40.6%増の19億円、経常利益が38.9%増の20億円、純利益が56.8%増の12億円としている。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)としている。予想配当性向は19.7%となる。

 化学品で収益性の低い無機工業薬品などが減収となる一方で、自動車、電子機器、半導体関連の高収益製品の拡販が進展する。ボトリングと産業用部材の損益改善も寄与して大幅増益予想である。化学品は売上高が9.3%増の225億円で営業利益が22.7%増の9億50百万円、ボトリングは売上高が5.2%増の185億円で営業利益が37.9%増の5億20百万円、産業用部材は売上高が0.3%増の80億円で営業利益が47.5%増の3億20百万円の計画としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.9%、営業利益が35.5%、経常利益が38.9%、純利益が43.2%である。利益進捗率が低水準の形だが、ボトリング事業は下期の構成比が高い特性を考慮すればネガティブ要因とはならない。通期ベースでも好業績が期待される。

■株価は過熱感解消して切り返し

 株価はEV電池関連で人気化した11月27日高値1369円から反落したが、過熱感が解消して1000円近辺から切り返しの動きを強めている。12月22日には1235円まで上伸した。

 12月22日の終値1199円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS50円69銭で算出)は23~24倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1010円55銭で算出)は1.2倍近辺である。時価総額は約288億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が接近して切り返した。過熱感が解消したようだ。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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