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PALTEKは戻り歩調、FPGAの一部取引形態変更による18年12月期業績へのマイナス影響の織り込み完了
- 2017/12/27 08:25
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
PALTEK<7587>(東2)はザイリンクス社のFPGAを主力とする半導体輸入商社である。株価は調整一巡して戻り歩調だ。FPGAの一部取引形態変更に伴う18年12月期業績へのマイナス影響の織り込みは完了したようだ。
■FPGAなどの半導体事業が主力
ザイリンクス社のFPGA(PLDの一種で設計者が手元で変更を行いながら論理回路をプログラミングできるLSI)を主力として特定用途IC、汎用IC、アナログ、メモリなどを扱う半導体事業、および試作ボードや量産ボードなどを受託設計・開発・製造(ODM、EMS、OEM)するデザインサービス事業、新規分野としてスマートエネルギー事業(病院・介護施設向け停電対策システム)を展開している。海外は香港に拠点展開している。
16年12月期売上構成比は半導体事業94.6%(FPGA36.0%、特定用途IC16.6%、汎用IC10.3%、アナログ7.6%、メモリ24.2%)、デザインサービス事業5.0%、その他0.4%だった。
主要仕入先は、FPGAがザイリンクス社、汎用ICがNXPセミコンダクターズ社、マイクロチップテクノロジー社、アナログがリニアテクノロジー社、メモリがマイクロンテクノロジー社である。用途別には産業機器向けを主力としてFA機器、通信機器、放送機器、医療機器、車載機器向けなどに展開し、センサ分野ソリューションも強化している。主要販売先はNEC<6701>、京セラ<6971>、オリンパス<7733>などである。
■M&A・アライアンスも活用して事業領域拡大
M&A・アライアンスも活用して事業領域を拡大している。17年3月ソラコムおよびIoTクラウドプラットフォームのUPRと連携してインダストリアルIoTソリューションパッケージの販売を開始、企業向けビデオソリューションのHaivision社(カナダ)と販売代理店契約を締結、産業用コンピュータモジュール専業メーカーcongatec社(独)と販売代理店契約を締結した。
17年7月紙梱包資材・システムのRanpak社と販売代理店契約を締結、17年8月TPMS・車両向けセンサーネットワークのLDLテクノロジーと販売代理店契約を締結した。17年9月にはPLUNIFY社(シンガポール)と販売代理店契約を締結した。PLUNIFY社の機械学習による知能ベースのFPGA最適化ソリューションを提供する。
■仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動する収益特性
一部の主要仕入先に対して保有する仕入値引きドル建て債権評価額が為替によって変動し、売上総利益の増減に影響を与える収益特性がある。ドル高・円安は売上総利益押し上げ要因、ドル安・円高は売上総利益押し下げ要因となる。為替影響は15年12月期が4億31百万円の売上総利益増加要因、16年12月期が5億30百万円の売上総利益減少要因だった。
■17年12月期大幅増益予想
17年12月期の連結業績予想(8月3日に減額修正)は、売上高が16年12月期比3.1%減の325億円、営業利益が2.0倍の10億50百万円、経常利益が9.6倍の10億60百万円、純利益が7億円(16年12月期は11百万円)としている。
半導体は通信機器向けが低調だが民生機器向けメモリ製品の復調を見込んでいる。第3四半期以降の前提為替レートは1ドル=110円32銭である。仕入値引きドル建て債権の評価額減少を含む為替影響を織り込み、売上総利益率は2.5ポイント上昇の13.2%を見込んでいる。配当予想は前期と同額の年間13円(期末一括)で、予想配当性向は20.3%となる。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比0.5%減の248億21百万円、営業利益が6億91百万円(前年同期は6百万円)、経常利益が7億59百万円(同35百万円)、純利益が5億04百万円(同15百万円の赤字)だった。仕入値引きドル建て債権の評価額も寄与して大幅増益だった。
売上高は半導体が0.4%減の235億02百万円、デザインサービスが6.2%減の11億74百万円、その他が38.8%増の1億44百万円だった。半導体はアナログ半導体のスーパーコンピュータ向けが増加したが、メモリ製品の海外向け、GPGAの通信機器向け、汎用ICのオフィス機器向けが減少した。デザインサービスは産業機器向けが増加したが、医療機器向けや航空・宇宙向けが減少した。
為替影響含む売上総利益は12.6%増加し、売上総利益率は12.6%で3.3ポイント上昇した。為替影響額は34百万円の売上総利益減少要因だったが、前年同期の8億08百万円の売上総利益減少要因に比べて、減益要因が減少した。為替影響を除く実力値ベースの売上総利益は12.8%増加し、売上総利益率は12.8%で0.3ポイント上昇した。半導体事業で売上総利益率の低い案件の売上が減少した。販管費は5.8%増加し、販管費比率は9.8%で0.5ポイント上昇した。営業外では為替差益が増加した。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が76.4%、営業利益が65.8%、経常利益が71.6%、純利益が72.0%である。為替が想定よりドル高・円安水準に推移して上振れが期待される。
■FPGAの一部取引形態変更で18年12月期業績にマイナス影響
17年11月にザイリンクス社製品販売における取引形態変更を発表した。一部の主要大手顧客への販売活動のうち、販売・物流オペレーション業務のみを当社が担当し、それ以外のFPGA活用ニーズの調査・案件発掘・案件獲得・技術サポートに関する業務はザイリンクス社が担当する。主要大手顧客以外の顧客については従来どおり当社が全ての販売業務を担当する。18年1月から実施する。
収益面への影響は、当該販売に係る売上総利益率が大幅に低下する。17年12月期想定売上高をベースにすると、18年12月期の売上総利益が17年12月期比で最大約7.5億円減少する見込みで、18年12月期の営業利益は約5億円に減少する可能性があるとしている。売上高は影響ないとしている。
今後の対応として、FPGAに対応していたリソースをデザインサービス事業やソリューション事業といった収益性の高い事業に振り向けて、中期計画の目標値20年12月期売上高400億円、営業利益20億円の達成を目指すとしている。
■FPGAの市場拡大に注目
中期的な収益向上に向けた取り組みとして、半導体事業では高付加価値製品の取り扱い拡大、中核製品であるFPGAのさらなる拡販、第2の柱となる製品の売上拡大(センサー関連やIoT関連製品の拡充など)、医療・産業・通信・放送など成長分野への注力、デザインサービス事業では医療・放送・通信分野の受託設計・開発・ODM強化、自社製品の開発・販売強化、スマートエネルギー事業では病院・介護施設向け停電対策システムの構築・販売を強化する方針だ。
中核製品のFPGAは論理回路構成を自由に書き換えられるため、世界的なトレンドとしてプロセッサーを内蔵したFPGAをメインチップとする傾向を強めている。そして今後は自動車の先進運転支援システム(ADAS)分野やIoT関連などを中心として市場拡大が予想されている。
センサ関連に関しては、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の赤外線カメラモジュールを、産業機器(検査機器、防災機器、産業向け携帯情報端末)やセキュリティ用監視カメラ向けに拡販する方針だ。
■株主優待制度は12月末に実施
株主優待制度は毎年12月31日現在100株以上保有株主を対象として、保有株式数と継続保有期間に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HPを参照)する。16年12月期末から実施した。
■株価は戻り歩調
株価は800円台のモミ合いから下放れの形となって水準を切り下げたが、12月1日の直近安値720円から切り返して戻り歩調だ。FPGAの一部取引形態変更に伴う18年12月期業績へのマイナス影響の織り込みは完了したようだ。
12月26日の終値776円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS63円90銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS812円01銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約92億円である。
週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んだが、調整一巡して出直りを期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)