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アイリッジは目先的な売り一巡して反発期待、18年7月期1Q減収減益だが通期は増収増益予想
- 2017/12/28 09:06
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)は、スマホ向けO2Oソリューション事業を展開し、FinTechソリューションも推進している。18年7月期第1四半期は大型案件の反動などで減収減益だったが、popinfo利用ユーザー数が7500万を突破して、ストック型収益の月額報酬は大幅増収基調である。そして18年7月期通期は増収増益予想である。株価は目先的な売り一巡して反発が期待される。
■O2Oソリューション事業を展開
自社開発O2Oソリューション(組み込み型プログラム)である位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfo(ポップインフォ)提供から、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を包括的に展開している。
popinfoは企業や店舗のスマホアプリに組み込み、アプリユーザーのスマホ待ち受け画面に伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報やメッセージを、プッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。位置情報・属性情報・時間を組み合わせて指定した場所・人・時間帯で配信が可能なため、実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。
収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。導入企業数増加と利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型ビジネスモデルだ。
なお現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期の構成比が高い特性がある。また案件の大型化に伴ってアプリ開発・コンサル等の四半期売上が変動しやすい特性がある。ただしpopinfo利用ユーザー数が増加基調であり、今後はストック型収益の月額報酬の構成比上昇が期待される。
■導入アプリ数・利用ユーザー数は増加基調
O2Oマーケティングやオムニチャネル化の進展も背景として、popinfoはGU、ファミリーマート、三井ショッピングパーク、三菱東京UFJ銀行、三井住友カード、阪急阪神、東急電鉄、トリンプ、朝日新聞社など、業種を問わず大企業のアプリ中心に採用されている。popinfoを活用したNTTデータ<9613>の「バンキング機能」付アプリの採用も増加基調である。O2Oソリューションを包括的に展開していることが強みだ。
09年にサービス開始したpopinfoの利用ユーザー数(プッシュ通知配信に同意したユーザー数、アプリごとにカウント)は14年1月1000万突破、15年3月2000万突破、16年1月3000万突破、16年5月4000万突破、16年11月5000万突破、17年4月6000万突破、17年6月6500万突破、17年9月7000万突破、そして17年11月7500万を突破した。導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。
■新規事業・サービスへの取り組み強化
中期成長戦略として、O2O事業の進化(より効果の高いスマートフォン・マーケティングの提供)、新規事業・サービスへの取り組み(継続した新規事業・サービスの創出・育成・収益化)、組織力向上(積極的な採用活動と経営基盤の強化)、成長を加速するための積極的なM&Aの検討に取り組んでいる。
アライアンスでは、15年12月テックビューロと業務提携している。popinfoとテックビューロのプライベート・ブロックチェーン技術「mijin」を組み合わせて、FinTechとO2Oの融合を推進する。
16年3月NTTドコモ<9437>のO2O戦略子会社であるロケーションバリューと業務提携した。国内最大級のO2O連携である。16年3月にはクレディセゾン<8253>が当社株式を追加取得し、当社、クレディセゾンおよびデジタルガレージ<4819>との3社連携を強化した。FinTechソリューションの共同開発を推進する。
新規事業・サービス関連では、飛騨信用組合と共同で取り組んでいるスマホアプリを活用した電子地域通貨プラットフォーム「さるぼぼコイン」について、12月4日から約100店舗が加盟して、地元住民および観光客向けに商用化スタートした。金融機関による地域通貨の電子化は業界初である。
17年7月には、電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy(マネーイージー)」の技術をベースとして、企業内電子通貨「オフィスコイン」の提供開始を発表した。17年11月には「MoneyEasy」が、ハウステンボスが決済システムの実証実験として導入する電子通貨「テンボスコイン」に採用された。
ユーザーの位置や行動履歴に基づいた最適な広告配信を提供するため、17年2月popinfoとサイバーエージェントの「AIR TRACK」の機能を連携し、17年8月にはpopinfo位置情報を活用した行動解析ソリューション「ジオリーチ」として第1号案件がスタートした。
17年10月にはスマホアプリを活用したクラウド型勤怠管理アプリ「LEAP」の提供を開始した。ビーコンを活用して位置情報と連動し、従業員一人ひとりの勤怠管理から残業予測までを一元管理できる。ラクラスと共同開発し、ファーストクライアントとしてKADOKAWAに導入された。
■18年7月期増収増益予想
今期(18年7月期)非連結業績予想(9月8日公表)は、売上高が前期(17年7月期)比33.9%増の20億円、営業利益が23.4%増の2億60百万円、経常利益が22.9%増の2億60百万円、純利益が20.1%増の1億82百万円としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比18.2%減の3億07百万円となり、営業利益が13百万円の赤字(前年同期は65百万円の黒字)、経常利益が13百万円の赤字(同65百万円の黒字)、純利益が9百万円の赤字(同46百万円の黒字)だった。
売上高は、月額報酬が32.0%増の1億37百万円、アプリ開発・コンサル等が37.5%減の1億69百万円だった。アプリ開発・コンサル等が前年同期の大型案件の反動で減収となり、コスト面では人件費や採用費などが増加して各利益とも減益(赤字)だった。
通期ベースでの売上高の計画は、月額報酬が34.0%増の6億50百万円、アプリ開発・コンサル等が33.9%増の13億50百万円としている。popinfo利用ユーザー数は2000万~2500万増加を見込んでいる。新規事業・サービスへの経営資源の投入、採用活動の強化などを増収効果で吸収して増益予想である。
ストック型収益の月額報酬は増収基調である。そして第1四半期のアプリ開発・コンサル等の減収は一時的要因だろう。通期ベースでは好業績が期待される。
■popinfo利用ユーザー数増加基調でストック型収益拡大期待
popinfo利用ユーザー数の目標は20年を目途に1億人超としている。顧客層の拡大、ポイントやアプリ決済などサービスラインナップ拡充による単価上昇、開発内製化進展による売上総利益率上昇、そしてpopinfo利用ユーザー数増加に伴うストック型収益(月額報酬)の構成比上昇などで、中期的にも収益拡大基調が期待される。
配当は無配継続としている。利益配分については成長過程にあるため、人材確保・育成やサービス強化のための投資、営業強化のための広告宣伝は販売促進、その他成長投資に対して迅速に対応することが重要と考え、現在まで配当を実施していない。今後においても当面は成長投資に備えて内部留保の充実を図る方針としている。将来的には利益還元を検討するが、配当実施の可能性および実施時期等については現時点において未定としている。
■株価は目先的な売り一巡して反発期待
株価は第1四半期業績を嫌気し、1900円~2000円近辺のモミ合いから下放れて12月25日の年初来安値1614円まで調整した。ただし26日と27日は反発して目先的な売り一巡感を強めている。
12月27日の終値1673円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS32円89銭で算出)は51倍近辺、実績PBR(前期実績BPS189円64銭で算出)は8.8倍近辺である。時価総額は約93億円である。
週足チャートで見ると窓を空ける形で水準を切り下げたが、目先的な売り一巡して反発が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)