日本インタビュ新聞 編集長・浅妻昭治
株高を演出した2017年、果たして2018年はどうなる?
「アベノミクス相場」の株高は円安・ドル高の2点セット
「アベノミクス相場」の株高は、常に総選挙での自民・公明党の圧勝を起点に、異次元金融緩和策、円安・ドル高の2点セットで構成されるのを特徴としてきた。3年3カ月ぶりに政権を奪回した2012年12月16日投開票の総選挙では、為替相場は、1ドル=83円台から96円台まで円安・ドル高となり、さらに2013年3月に日銀総裁に就任した黒田東彦総裁が、4月4日に異次元金融緩和策を決定したことからさらに103円台にまで進んだ。日経平均株価は、投開票日翌日から28.5%の底上げをし、さらに黒田総裁が「戦力の逐次投入はしない」と大見得を切った異次元金融緩和策が二段ロケットの推進力となって、2013年5月23日の1万5942円まで62.2%の急騰を演じた。
新春相場の最大のキーポイントは何か?
2014年12月14日投開票の総選挙では、為替相場は、1ドル=117円台から123円台への円安・ドル高が進み、日経平均株価は、2015年6月24日の2万0952円まで22.5%の急騰となった。この先例で明らかなように、アベノミクス相場は、異次元金融緩和策の深掘りと円安・ドル高が「両肺」となって株高を演出したことになった。
翻って昨年2017年10月22日に投開票された総選挙後のアベノミクス相場は、どのような経緯を辿ったか?為替相場は、1ドル=113円台から一時、114円台への円安・ドル高にフレたものの、昨年12月下旬には112円台へ揺り戻された。アベノミクス相場の「両肺飛行」が、異次元緩和策の「片肺飛行」を余儀なくされた。航空機エンジンに例えれば、「単発エンジン」の推進力は、「双発エンジン」大出力に及ぶべくもなく、日経平均株価も、11月9日の2万3382円へと7.7%の上昇にとどまり、その後も、もみあいながら2万3000円台を前に押し返され膠着感を強めた。
だから新春相場の最大のキーポイントは、この「片肺飛行」が「両肺飛行」に発展するのかしないのかにある。この為替相場の動向は、国内要因だけで決まるわけではない。米国FRB(連邦準備制度理事会)は、昨1017年12月13日に今年3回目の政策金利引き上げを決定し、同12月21日に黒田日銀総裁は、異次元緩和策の現状維持を決めたが、米10年国債利回りは、2.3%~2.4%の低水準にとどまり、日米金利差拡大による円安・ドル高は不発となった。
2018年はアベノミクス相場並みのベスト・シナリオも
日銀短観の昨年12月調査では、大企業製造業の想定為替レートは、1ドル=110円と現状の為替レートより円高・ドル安水準にあるが、今後、1月末から本格化する3月期決算会社の第3四半期業績発表での上方修正ののりしろは狭まり、期待されている業績相場発進にもカゲを落とすことになる。もちろん、新春相場には下ぶれ・波乱リスクは尽きない。米朝軍事衝突不安の地政学リスク、経済減速懸念の中国リスク、イスラエルの首都をエレサレムと認定したトランプ・リスク、サウジアラビアの政情動揺による中東リスクなどである。
しかし、現状の「片肺飛行」が、「両肺飛行」に発展する兆しさえ生まれれば、こうしたリスクを吸収して2012年、2014年の前2回のアベノミクス相場並みのベスト・シナリオも期待できる。前2回の日経平均株価の平均上昇率(2012年は2013年4月までの上昇率)は25.5%となっており、これを今回も繰り返すとすれば、2万7000円台の上値目標が弾き出され、新年相場は、ここを目指して全員歓迎のアップトレンドが続く可能性も高まる。米国の長期金利動向、為替相場の先行きからは目を離せない。
2018年の注目銘柄はこれだ!
リスクを低減しリターンを最大化することが不可欠
「片肺飛行」か「両肺飛行」かまだ不確かな新春相場では、投資スタンスも「硬軟両様」のフレキシブルな対応でリスクを低減しリターンを最大化することが不可欠となる。
「両肺飛行」の兆しが生まれれば、大きく下げた株ほど大きく戻すとする「リターン・リバーサル」の投資セオリー通りの出番である。まず東京エレクトロン<8035>(東1)などの半導体関連のハイテク株の値動きが活発化するはずだ。また、米長期金利上昇を先取りして利ざや拡大や運用環境向上を期待して三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>(東1)などの銀行株、保険株などの上値余地が拡大する。
一方、なお「片肺飛行」を余儀なくされるとすれば、下値で待機している個人投資家主導の小型株、材料株の出番となる。折からの厳冬到来で雪害対策のコロナ<5909>(東1)、浅香工業<5962>(東2)、スノーピーク<7816>(東1)、北朝鮮リスク関連の石川製作所<6208>(東1)、アゼアス<3161>(東2)、興研<7963>(JQS)、原油・非鉄価格動意を背景にした国際石油開発帝石<1605>(東1)、住友金属鉱山<5713>(東1)、三菱商事<8058>(東1)などの資源関連株、さらに年末相場ではIPO(新規株式公開)ラッシュのカゲで鳴りをひそめていた自動運転関連株、量子コンピューター関連株などのテーマ株に再出番も想定されマークするところだろう。(本紙編集長・浅妻昭治)