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ワイヤレスゲートは基調転換して戻り歩調、18年12月期は収益改善期待
- 2018/1/11 07:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ワイヤレスゲート<9419>(東1)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを展開し、中期成長に向けてWi-Fiインフラ構築やIoTプラットフォームなどBtoB事業に集中投資する方針を打ち出している。17年12月期は先行投資負担で減益予想だが、18年12月期は収益改善が期待される。株価は基調転換して戻り歩調だ。なお2月13日に17年12月期決算発表を予定している。
■ワイヤレス・ブロードバンド事業が主力
通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。
16年12月期事業別売上高構成比は、ワイヤレス・ブロードバンド事業(BtoC事業)のモバイルインターネットサービス92%、公衆無線LANサービス6%、オプションサービス1%、ワイヤレス・ビジネスドメイン事業(BtoB事業)の認証プラットフォームサービス0%、その他法人向けサービス1%だった。販売チャネルはヨドバシカメラと携帯電話販売最大手ティーガイアを主力としている。
個人向けワイヤレス・ブロードバンド事業は有料会員に対する月額課金収入、法人向けWi-Fiインフラ事業はアクセスポイント管理(クラウド管理)に対する月額課金収入が主力である。有料会員数およびアクセスポイント数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型ビジネスモデルである。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)を重視し、機動的かつ柔軟な自社株買いも実施する方針としている。
■中期成長に向けてBtoB事業に経営資源を集中投資
中期経営計画「ワイヤレスゲート2020年ビジョン中期経営計画」では、経営目標値に20年12月期売上高150億円~200億円規模、営業利益20億円~30億円規模、営業利益率13%~15%程度を掲げている。
事業戦略としては、安定収益源であるBtoC事業を堅持(Wi-Fiインフラの強化、通信サービスの再編成、通信サービスと親和性の高い周辺機器ベンダーとの協業、通信サービスの卸販売などによる販売経路の多様化)しつつ、成長事業であるBtoB事業に経営資源を集中投資(持続可能なフリーWi-Fi環境の構築、セキュアで高速・大容量な通信インフラの構築、投資を含めたビジネスアライアンス推進)する。また安定的な配当を行いつつ、中期的な企業価値の増大を目指す。
BtoB事業分野では、14年11月スペインのFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年11月フォン・ジャパンを持分法適用関連会社化している。Fon社のルータを活用して国内Wi-Fiエリア構築を推進する。
16年9月モバイル・インターネットキャピタルと合弁でLTE-Xを設立し、産業用IoTプラットフォーム事業に本格参入した。17年9月にはLTE-XがVAIO社とLTE over Wi-Fi技術を活用したセキュリティソリューションの共同開発で業務提携した。
17年12月には、BeaconおよびIoTマネージメントプラットフォームを提供するTangerine社に追加出資した。Wi-Fi事業における業務提携を推進する。
■17年12月期減益予想だが、18年12月期の収益改善期待
前期(17年12月期)連結業績予想(8月3日に売上高を据え置き、利益を増額修正)は、売上高が前々期(16年12月期)比7.0%増の130億97百万円、営業利益が34.5%減の8億19百万円、経常利益が37.8%減の6億83百万円、純利益が40.2%減の4億15百万円としている。
ワイヤレス・ブロードバンド事業における新規会員獲得、既存顧客退会防止、販売単価向上に向けた施策を実施する。ワイヤレス・ビジネスドメイン事業ではLTE-Xの業務展開が本格化する。ただし事業ポートフォリオ転換に向けてBtoB事業に経営資源を集中投資するため、前期との比較では先行投資負担で減益予想である。営業外費用ではフォン・ジャパンののれん償却(10年で約16億円を償却予定)を前期と同程度計上する。配当予想は1円増配の年間28円(期末一括)で、予想配当性向は69.9%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比3.6%減の88億90百万円、営業利益が29.0%減の7億円、経常利益が31.2%減の5億81百万円、そして純利益が35.8%減の3億37百万円だった。売上総利益率は24.1%で0.6ポイント低下、販管費比率は16.2%で2.2ポイント上昇した。利益率の高い公衆無線LANサービスの減収、ワイヤレスゲートWi-Fi+WiMAXサービスの顧客獲得に関わる販売関連費用の増加、子会社LTE-Xにおける事業展開コストの増加が影響した。
事業別売上高は、ワイヤレス・ブロードバンド事業が5.3%減の86億05百万円(モバイルインターネットサービスが4.8%減の80億81百万円、公衆無線LANサービスが13.1%減の4億47百万円、オプションサービスが5.7%減の76百万円)だが、ワイヤレス・ビジネスドメイン事業が2.1倍の2億61百万円(認証プラットフォームサービスが38.5%増の58百万円、その他法人向けサービスが2.5倍の2億02百万円)と拡大している。その他は79.7%増の24百万円だった。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が67.9%、営業利益が85.5%、経常利益が85.1%、純利益が81.2%である。新たなSIMサービス投入を見送ったため関連経費が発生しなかったこと、子会社LTE-Xのコストが想定を下回ったこと、さらにワイヤレスゲートWi-Fi+WiMAXサービスの利益率が想定を上回ったことなどで利益進捗率が高水準である。通期利益予想は再増額余地がありそうだ。また今期(18年12月期)の収益改善が期待される。
■株価は基調転換して戻り歩調
株価は水準を切り下げたが、17年11月の上場来安値1174円から徐々に下値を切り上げている。基調転換して戻り歩調だ。
1月10日の終値1366円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS40円07銭で算出)は34倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間28円で算出)は2.0%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS287円91銭で算出)は4.7倍近辺である。時価総額は約144億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。基調転換して出直りが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)