■トランプ大統領の大判振る舞いで金利上昇懸念
株価の乱高下は企業にも衝撃を与えている。嘆きは絶えない。
「わが社の株価はせっかく騰がってきていたのに騰がった分が吹き飛んでしまった」
「これで経営者は賃上げに慎重になるだろう」etc
「大判振る舞い」も時期を間違うと顰蹙を買うということがある――。トランプ大統領の経済政策が「過剰」すぎたのではないか。
アメリカの景気はもともと好調だった。就業者が増加し、完全雇用に近い状態になり、賃金もアップする寸前にあった。そこにトランプ大統領の法人税減税、個人減税に加え財政出動という大判振る舞いが打ち出された。
人手不足で賃金が騰がり、インフレになる。財政出動のために国債が増発される。国債の消化のために金利上昇という運びになる。
当初のところ、株式市場はトランプ大統領の大判振る舞いを歓迎していた面がある。しかし、金利上昇による株式市場からの資金離れを懸念し、一転して株価は大きく下落に転じた。株価は騰がりすぎていたといえばそうだったわけだから酷いことになっている。
■株式市場からNOを突きつけられる
「よいニュースが報じられたときに株式市場が下がる。大間違いだ」
トランプ大統領のツイートである。フェイクニュースどころか、現実がフェイクだというわけである。
問題は景気のよいときに景気のよい話を打ち出したことである。要するにエンジンの吹かし過ぎというか、屋上に屋を重ねるように景気をよくしようとした。金利上昇という副作用を呼び、株式市場からNOを突きつけられた格好である。
誰が間違っているのか――。マーケットか、トランプ大統領か。ここを正さないと再び乱高下が起こりかねない。あるいはマーケットはそれを織り込んでいくのか。
ステーキを食べて、すき焼きをたいらげ、お寿司をつまんで、おまけにハンバーガーをほうばってみたいなものだ。てきめんにお腹を壊すことになる。すこしは反省して謹慎しなさいということになる。
■バブルに至る前に破裂というトランプ流
トランプ大統領は、「アメリカを再び偉大にする」というのだから、アメリカの現状は偉大ではないという認識になる。
――だから大型減税をする、財政出動をする、核など軍備更新をする、さらに軍事パレードをする、なんでもやりたがるクセがある――。さらにいえば、やり過ぎるクセがある。
普通は念入りにバブルに至って破裂するのだが、バブルに至る前に粗忽に破裂してしまっている。トランプ流というか、いままでにないトレンドといえるのではないか。
リーマンショックからほぼ10年、世界はトランプ流の「過剰」に直面している。過ぎたるは及ばざるがごとし――、満つれば欠けると悠長に構えていられないのがいまなのかもしれない。
(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)