生化学工業は戻り歩調、18年3月期3Q累計大幅増益で通期も大幅増益予想

 生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。18年3月期第3四半期累計は大幅増益だった。海外の好調が牽引して通期も大幅増益予想である。株価は下値を切り上げて戻り歩調だ。そして地合い悪化の影響も限定的のようだ。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。

 中期経営計画(17年3月期~19年3月期)の経営目標値は、19年3月期売上高320億円、営業利益25億円、経常利益45億円としている。
■新薬開発は糖質科学分野に焦点

 研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞り、開発中の新薬には腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603(コンドリアーゼ)、変形性膝関節症改善剤SI-613(NSAID結合ヒアルロン酸)、ドライアイ治療剤SI-614(修飾ヒアルロン酸)がある。

 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603は、日本で14年1月に製造販売承認申請して審査継続中である。16年8月にはスイスのフェリング社とSI-6603の日本を除く全世界におけるライセンス契約を締結した。フェリング社から契約一時金5百万米ドル、および今後の開発や販売等の進捗に応じて複数年にわたり最大で90百万米ドルのマイルストーン型ロイヤルティを受領する。日本における独占的販売契約は12年12月に科研製薬<4521>と締結している。

 なお17年11月、米国で実施したSI-6603第3相臨床試験について、薬理効果が認められた一方で、主要評価項目である投与後13週での下肢痛軽減において統計学的に有意な改善効果が認められなかったと発表した。今後は米国食品医薬品局(FDA)やライセンス先であるフェリング社と協議しながら、最速で再試験を開始すべく準備を進めるとしている。

 変形性膝関節症治療剤SI-613は米国を含めたグローバル展開を目指す製品と位置付けている。17年2月日本で第3相臨床試験を開始、17年6月米国で第2相臨床試験を開始した。また17年9月小野薬品工業<4528>と日本における共同開発・販売提携に関する契約を締結した。小野薬品から契約締結一時金として20億円を受領するとともに、今後の開発や販売等の進捗に応じて複数年にわたり最大で総額100億円のマイルストーン型ロイヤルティを受領する。

 なお17年9月にSI-613の腱・靱帯付着部症を対象とした後期第2相臨床試験(SI-613-ETP)を開始した。

 ドライアイ治療剤SI-614は、米国・欧州で15年1月第2・3相試験が終了し、次相試験について検討中である。

■18年3月期3Q累計は研究開発費の一部ズレ込みも寄与して大幅増益

 今期(18年3月期)第3四半期累計の連結業績は売上高が前年同期比5.8%増の234億01百万円、営業利益が3.6倍の31億31百万円、経常利益が2.9倍の58億89百万円、純利益が2.9倍の43億50百万円だった。

 売上高は国内医薬品が4.7%増の128億81百万円、海外医薬品が13.3%増の55億84百万円と好調だった。国内アルツは医療機関納入本数が微減だが、出荷タイミング要因などで増加した。米国Gel-Oneは、一部大口顧客への価格対応で現地販売価格低下の影響を受けたが、現地販売数量が2割弱増加した。出荷数量増に円安も寄与した。米国SUPARTZ-FXは、現地販売が微減だったが、販売提携先の現地在庫積み増しで増加した。なお医薬品原体は12.0%減の6億92百万円、LAL事業は3.3%増の42億43百万円だった。

 利益面では、増収効果に加えて、アルツ新容器投入に伴って生産効率が進展したこと、研究開発費の一部が第4四半期にズレ込んだこと、米国におけるSI-6603オープン試験費用が減少したことも寄与した。売上総利益率は58.3%で4.0ポイント上昇、販管費比率は44.9%で5.4ポイント低下した。営業外では受取ロイヤリティーが増加し、為替差損益が改善した。

■18年3月期大幅増益予想、海外が牽引

 今期(18年3月期)連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比2.4%増の303億円、営業利益が17.0%増の15億円、経常利益が51.4%増の37億50百万円、純利益が51.0%増の27億円としている。配当予想は前期から記念配当5円を落として年間26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。予想配当性向は54.6%となる。

 国内医薬品は前期並みだが、米国Gel-Oneの出荷増加、LAL事業の米国子会社ACC社の売上拡大が牽引して大幅増益予想である。想定為替レートは1米ドル=108円で、為替感応度(米ドル1円変動時の年間影響額)は売上高で約1億10百万円、営業利益で約45百万円としている。営業外収益ではロイヤリティーの増加を見込んでいる。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が77.2%、営業利益が208.7%、経常利益が157.1%、純利益が161.1%である。研究開発費が第4四半期に集中することを考慮しても、通期ベースで好業績が期待される。

■株価は戻り歩調、地合い悪化の影響限定的

 株価は17年11月安値1535円から徐々に下値を切り上げている。2月5日には1592円まで調整する場面があったが、素早く切り返している。米国SI-6603臨床結果に対する失望売りが一巡して戻り歩調だ。そして地合い悪化の影響も限定的のようだ。

 2月13日の終値1738円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS47円65銭で算出)は36~37倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1248円07銭で算出)は1.4倍近辺である。時価総額は約987億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が上向きに転じて先高観を強めている。出直りが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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