アイビーシーは18年9月期1Q黒字化で通期2桁増収増益予想

 アイビーシー<3920>(東1)は、ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニーで、IoT分野への展開も積極推進している。2月13日発表した18年9月期第1四半期の非連結業績は、大幅増収で黒字化した。通期も2桁増収増益予想である。株価は戻り歩調だ。

■ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニー

 ネットワークシステム性能監視ツール(ソフトウェア)のリーディングカンパニーである。ネットワークシステム性能監視ツールとは、ネットワークシステムを構成する様々なメーカーのネットワーク機器や仮想サーバーの稼働・性能状況を監視し、俯瞰的かつきめ細やかに収集して表示・解析・通知を行うソフトウェアである。ネットワークシステムの障害発生を未然に防ぐことを可能にする。

 クラウドコンピューティングなど新たな技術が浸透し、情報通信ネットワークシステムが高度化・複雑化・ブラックボックス化する一方で、システム環境変化による障害予兆の特定が困難になる問題が深刻化している。このためネットワークシステムの安定稼働や品質向上を実現するネットワークシステム性能監視ツールの重要性が一段と増している。
■自社開発の性能監視ツールおよび運用支援サービスを提供

 マルチベンダーの機器で構成される複雑なネットワークシステム全体の稼働・性能状況を、精度の高いデータを取得して分析するネットワークシステム性能監視ツールの開発・販売および導入支援サービス、顧客のネットワークシステムに内在する問題点や課題を抽出して最適な改善策を提示する分析・性能評価サービス、ネットワークシステム設計・構築・運用支援のコンサルティングサービスを提供している。

 17年9月期の事業別売上高構成比は、ネットワークシステム性能監視ソフトウェアに係る自社開発製品のライセンス(ソフトウェア使用権)販売が72%、自社製品導入支援やネットワークシステム構築に係るコンサルティングなどのサービス提供が15%、その他物販(他社製情報通信機器等の販売)が13%だった。

 パートナー企業との連携強化による販売力強化では、伊藤忠テクノソリューションズ、富士通エフサス、日立システムズ、ユニアデックス、NECフィールディングなど、大手システムインテグレーターとの連携を強化している。

■マルチベンダー対応製品の自社開発とデータ・ノウハウの蓄積が強み

 問題・障害発生後に気付く従来型の手法ではなく、問題・障害の予兆をいち早く検知して問題・障害発生を未然に防ぐ新たな手法で、ネットワークシステム性能監視に必要なマルチベンダー対応ソフトウェアを自社開発し、様々な環境下でのデータおよび統計分析・解析ノウハウを蓄積して、サービスをワンストップで提供していることが強みだ。

 継続的に自社開発製品の機能拡張を推進して、対応メーカー数と分析ポイント数は06年9月期末22社・339ポイントから、17年9月期末116社・3541ポイントまで拡張した。ほぼ全ての主要メーカーに対応し、100社を超えるマルチベンダー対応で使い勝手の良い性能監視ソフトウェアは世界でも類がない。

■主力は新製品「System Answer G3」へ順次移行

 主力製品はネットワーク性能監視ソフトウェア「System Answer」シリーズである。マルチベンダー対応で幅広いメーカー機器の性能情報を可視化できる点が同業他社に対する圧倒的なアドバンテージとなり、業種・業態・規模を問わず幅広く採用されている。累計販売実績は08年12月リリース「System Answer」シリーズと11年7月リリース「System Answer G2」シリーズの合計で、17年9月現在1200システム以上に達している。

 同社の製品開発は創業以来、システムが正しく動いているかどうかを監視し、問題が発生した際にどこで発生したのかを検知・把握する「死活監視」「状態監視」のための「保守ツール」から、性能上問題がないかどうかを分析し、障害が発生する前に問題点を検知して適切な対処を施す「性能監視」のための「収集ツール」へと発展してきた。

 今後はコンピュータやネットワークシステムを維持・改善するための根拠ある「判断ツール」として活用できる「情報監視」機能を備えた製品が必要とされ、17年7月にコンセプトを「性能監視から情報監視へ」とする新製品「System Answer G3」シリーズを発売した。今後は新製品へ順次移行する。

■中期成長戦略は「新製品発売」「成長分野進出」「サービス領域拡大」

 中期成長戦略として「新製品発売」「成長分野進出」「サービス領域拡大」を掲げている。性能監視のリーディングカンパニーからITサービスへの事業展開を目指す方針だ。

 新製品発売では17年7月発売の新製品「System Answer G3」シリーズの販売が、18年9月期の下期から順次本格化する見込みだ。また今後は継続的にオプション機能の充実も進める方針だ。

 成長分野進出では、ブロックチェーンやIoT分野への進出を加速している。16年7月ブロックチェーン・IoT関連ソフトウェアのiBeed社を完全子会社化、16年8月コンセンサス・ベイス社とブロックチェーン分野で業務提携、17年6月パクテラ・コンサルティング・ジャパンとブロックチェーン分野で業務提携、17年7月iBeed社がコンセンサス・ベイス社など複数社と業務・資本提携、17年8月iBeed社が一般社団法人Fintech協会に入会した。

 そして17年12月にはIoTデバイス向けセキュリティサービス「kusabi(楔)」の実証実験を開始した。ブロックチェーン技術による電子証明システムと独自のデバイスプロビジョニング技術により、ソフトウェアだけでIoTセキュリティを実現する画期的なサービスである。3つの不要(専用チップが不要、認証局が不要、マルウェア対策が不要)を実現し、新たなIoT時代のセキュリティエコシステムを構築するサービスだ。

 サービス領域拡大では、16年11月特化型クラウドインテグレーションサービス「SCI」を開始、アマゾンウェブサービス(AWS)のパートナープログラムに認定、17年4月インターネットサーバ構築・監視・運用・保守のネットフォースへ出資、17年8月「SCI」のサービスメニューの一つとして次世代MSPサービス「SAMS」を開始、17年12月マイクロソフトのAzureに特化したソリューションサービスを開始した。

■ソフトウェアのライセンス販売で高収益のストック型ビジネスモデル

 収益面では、主力の「System Answer」シリーズのソフトウェアライセンス販売という、高収益のストック型ビジネスモデルが特徴である。顧客の検収時期の影響で、第2四半期(1~3月)と第4四半期(7~9月)の構成比が高い季節要因がある。また大手優良企業を中心とした顧客構成で売上債権の貸倒実績が無く、安定的な財務体質を維持していることも特徴だ。

 利益配分については、今後の業績の推移や財務状況等を考慮したうえで将来の事業展開のための内部留保等を総合的に勘案しながら配当を検討することを基本方針としているが、現在は成長過程にあるため、事業上獲得した資金については事業拡大のための新規投資等に充当することを優先するとしている。

■18年9月期1Q大幅増収で黒字化
 2月13日発表した18年9月期第1四半期の非連結業績は、売上高が前年同期比28.0%増の3億05百万円、営業利益が34百万円(前年同期は58百万円の赤字)、経常利益が35百万円(同76百万円の赤字)、純利益が23百万円(同51百万円の赤字)だった。

 新製品「System Answer G3」の新規大型案件が寄与して大幅増収だった。売上高の内訳は、ライセンス販売が92.3%増の2億29百万円、サービス提供が11.5%減の38百万円、その他物販が大型案件の一巡で50.4%減の37百万円だった。

 営業利益はライセンス販売の増収や、物販の減収に伴う原価の減少などで黒字化した。売上総利益率は80.0%で15.5ポイント上昇、販管費比率は68.6%で20.2ポイント低下した。営業外では上場関連費用が一巡した。

■18年9月期2桁増収増益予想

 18年9月期の非連結業績予想(11月14日公表)は、売上高が17年9月期比15.1%増の14億円で、営業利益が15.8%増の2億16百万円、経常利益が27.8%増の2億16百万円、そして純利益が12.8%増の1億29百万円としている。配当予想は未定としている。

 事業別売上高の計画はライセンス販売が18.2%増の10億38百万円、サービス提供が13.0%増の2億08百万円、その他物販が横ばいの1億53百万円としている。

 17年9月期に一時的に低下したライセンス販売が回復し、新サービスも寄与して2桁増収増益予想である。新製品「System Answer G3」シリーズの販売は下期から順次本格化する見込みだ。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高21.8%、営業利益16.1%、経常利益16.2%、純利益17.9%と低水準の形だが、第2四半期と第4四半期の構成比が高い季節要因のためネガティブ要因とはならない。通期ベースでも好業績が期待される。

■株価は戻り歩調

 株価は戻り歩調だ。1月29日の戻り高値1750円まで上伸した。その後は地合い悪化の影響で一旦反落したが、1400円近辺で下げ渋る形だ。

 2月13日の終値1372円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS23円47銭で算出)は58倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS271円47銭で算出)は5.1倍近辺である。時価総額は約76億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。戻りを試すが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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