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ソラストは地合い悪化の影響が一巡して上値試す、18年3月期3Q累計2桁営業増益で通期も2桁営業増益予想
- 2018/2/27 07:08
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ソラスト<6197>(東1)は医療事務・介護・保育関連サービスを展開し、地域の女性人材を活用するため女性が働きやすい職場づくりやICTの積極活用を推進している。18年3月期第3四半期累計は2桁営業増益だった。通期も2桁営業増益予想、そして増配予想である。18年1月介護サービス利用状況も好調だ。株価は上場来高値圏から反落したが、地合い悪化の影響が一巡して上値を試す展開が期待される。
■医療事務受託を主力に介護・保育サービスも展開
医療事務・介護サービスのパイオニア(旧・日本医療事務センターが12年に現ソラストに社名変更)である。
医療関連受託事業(医療事務請負・派遣)を主力として、介護事業(訪問介護、通所介護、居宅介護支援、グループホーム、有料老人ホーム・サービス付高齢者向け住宅など)・保育事業(認可保育所運営)、その他事業(教育サービスなど)を展開している。17年3月期セグメント別売上構成比は医療関連受託事業78%、介護・保育事業21%、その他事業1%だった。
医療関連受託事業では請負が9割強を占め、大病院との長期取引を中心に医療機関取引先は1500以上に達している。介護事業は東名阪地域に展開して、17年3月期末の介護事業所数は246拠点(訪問介護63、デイサービス58、居宅介護支援58、グループホーム24、有料老人ホーム・サービス付高齢者向け住宅10、その他33)だった。保育園は13施設(東京都認証保育所12、千葉県認可保育所1)である。
なお17年3月期末連結ベース従業員数2万3747人で女性比率が約90%である。地域の女性人材を活用するため、女性が働きやすい職場づくりとともに、ICTの積極活用も推進している。
■離職率低下による生産性向上やM&A活用で中期成長目指す
中期経営ビジョンでは基本戦略を、ICTによるサービスモデル高度化、採用・キャリア支援モデルの強化、M&Aの積極活用として、経営目標値には21年3月期売上高1000億円(セグメント別成長率は医療関連受託事業3%、介護事業30%、保育事業20%)、営業利益70億円(営業利益率は医療関連受託事業15%、介護事業10%、保育事業15%)を掲げている。配当政策は安定した配当を継続することを基本方針として、配当性向50%を目安としている。
医療事務の市場規模は約6800億円(うち約5000億円が潜在市場)と推定され市場開拓余地は大きい。医療関連受託事業における利益率向上に向けた戦略としては、原価の大部分を占める人件費に関して、無駄の削減・効率性の向上、定着率・モチベーションの向上、離職率の飛躍的な低下を目指している。
社員退職に伴う配置転換や新入社員の教育などに係る無駄を減らすことで現場の生産性を改善し、全社的なコスト競争力の向上や売上成長に繋げるため、ICTを積極活用し、コミュニケーションの向上、業務・職場環境の改善、待遇改善などを通じて離職率を大幅に低下させる方針だ。
介護事業はM&Aを積極活用して中期成長を目指している。17年3月期には神奈川県で通所介護事業を展開する住センターなど、事業譲受や子会社化などで11件のM&Aを実行した。18年3月期売上高への貢献は15億円の見込みである。
17年10月末にはデイサービス中心に介護事業所35ヶ所を運営するベストケア(愛媛県松山市、16年9月期売上高28億66百万円)を子会社化、17年11月末には首都圏でグループホーム中心に展開する日本ケアリンク(東京都、17年3月期売上高42億45百万円)を子会社化した。
また通所介護における業務効率化と顧客満足度向上を目的として、インフォコム<4348>と協働で介護記録システム「Daily」を構築し、全事業所への導入を推進している。
さらに人工知能を活用して新入社員の離職を防ぐ取り組みも開始している。データ解析事業を手掛けるFRONTEO<2158>の人工知能エンジン「KIBIT」を用いて、新入社員の面談記録から不安や不満を抱える人を早期に発見してフォローを行い、社員の離職防止や定着率向上に向けた取り組みを推進する。
■18年3月期3Q累計2桁営業増益で、通期も2桁営業増益・増配予想
今期(18年3月期)連結業績予想(5月9日公表)は売上高が前期(17年3月期)比7.0%増の700億03百万円、営業利益が10.3%増の40億32百万円、経常利益が10.7%増の40億15百万円、純利益が6.7%増の26億40百万円としている。
M&A効果も寄与して2桁営業増益予想である。配当予想は1円増配の年間44円(第2四半期末21円、期末23円)で、予想配当性向は50.6%となる。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比11.6%増の543億45百万円、営業利益が11.9%増の30億12百万円、経常利益が13.3%増の30億03百万円、純利益が10.2%増の18億98百万円だった。
医療関連受託、介護・保育とも好調に推移し、増収効果や生産性改善効果でM&A費用や人材投資費用を吸収した。売上総利益率は17.4%で0.6ポイント上昇、販管費比率は11.8%で0.5ポイント上昇した。
医療関連受託は売上高が5.7%増の400億80百万円で営業利益が14.7%増の40億80百万円だった。営業利益率は0.8ポイント上昇して10.2%となった。医療機関からの新規契約獲得や既存顧客との取引拡大に加えて、処遇改善への取り組みの成果として離職率が低下し、生産性が向上したことも寄与した。
介護・保育は売上高が35.1%増の137億70百万円で営業利益が3.5%増の7億24百万円だった。介護のM&Aの一時的費用増加を吸収した。期末事業所数は介護が17年3月末比115ヶ所増加の361ヶ所、保育が1ヶ所増加の14ヶ所となった。
その他(キャリアセンターなど)は売上高が12.2%減の4億94百万円で営業利益が2億23百万円の赤字(前年同期は1億54百万円の赤字)だった。教育事業の受講者数が減少した一方で、採用プロセス改善に係る投資およびトレーニングの積極的実施による費用が増加した。
通期ベースでも、医療関連受託では離職率低下による生産性向上と利益率改善が進展し、介護ではM&A効果も寄与して利用者数が増加基調である。M&A関連費用や社員待遇改善に伴う人材投資費用の増加を吸収して2桁営業増益予想である。
セグメント別の計画は、医療関連受託の売上高が2.3%増の520億円で営業利益が13.0%増の55億95百万円、介護・保育の売上高が24.7%増の172億88百万円で営業利益が14.7%増の10億14百万円、その他事業の売上高が2.5%減の7億15百万円で営業利益が3億84百万円の赤字(前期は2億26百万円の赤字)としている。
18年1月介護サービス利用状況(速報値)によると、月間サービス利用者数は訪問介護が前年同月比23.2%増、デイサービスがM&Aも寄与して84.4%増だった。また施設系サービスの月末入居率はグループホーム98.0%、有料老人ホーム94.3%、サービス付高齢者向け住宅92.7%と高水準を維持している。1月末の介護サービス事業所数(17年11月末子会社化した日本ケアリンク含む)は合計361ヶ所で17年3月末比115ヶ所増加した。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が77.6%、営業利益が74.7%、経常利益が74.8%、純利益が71.9%と順調である。通期ベースでも好業績が期待される。
なおベストケアと日本ケアリンクを第3四半期から新規連結している。その他のM&Aも含めると介護の売上規模は年間換算ベースで約232億円となった。そして医療関連受託、保育も含めた全社ベースの年間売上規模は約800億円となった。中期成長シナリオに変化はなく収益拡大基調が期待される。
■株価は地合い悪化の影響が一巡して上値試す
株価は1月25日の上場来高値3130円から反落したが、2月15日の2484円から切り返している。地合い悪化の影響が一巡したようだ。
2月26日の終値2885円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS86円90銭で算出)は33~34倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS337円64銭で算出)は8.5倍近辺である。時価総額は約893億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返している。地合い悪化の影響が一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)