Jトラストはほぼ底値圏、18年3月期減額して最終赤字予想だが19年3月期の収益改善期待

 Jトラスト<8508>(東2)は、銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指して事業基盤を強化している。18年3月期は投資事業におけるタイGL社関連の影響などで減額修正して最終赤字予想となったが、前期比では実質増益予想である。また主力の金融事業の好調が牽引して19年3月期の収益改善を期待したい。株価は水準を切り下げたが売り一巡感を強めている。

■国内外で金融事業を中心に業容拡大

 国内外でM&Aや債権承継などを積極活用して業容を拡大している。そして銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指し、国内外において事業基盤の強化に取り組み、特に韓国やインドネシアなどアジア地域での金融事業拡大を推進している。

 事業セグメントは、国内金融事業(信用保証、債権回収、クレジット・信販、その他の金融)、韓国金融事業(貯蓄銀行、債権回収、キャピタル)、東南アジア金融事業(銀行、債権回収、販売金融)、総合エンターテインメント事業(アミューズメント施設運営など)、不動産事業(戸建分譲中心の不動産売買、流動化不動産中心の収益物件仕入・販売)、投資事業、その他事業としている。

 17年3月期のセグメント別営業収益構成比は国内金融事業13%、韓国金融事業34%、東南アジア金融事業21%、総合エンターテインメント事業18%、不動産事業8%、投資事業3%、その他事業3%だった。

 国内金融事業は日本保証、Jトラストカードなどが展開している。韓国金融事業はJT親愛貯蓄銀行、JT貯蓄銀行、JTキャピタル、TA資産管理など総合金融サービスを展開するための事業基盤整備が完了している。東南アジアでは、金融事業はJトラスト銀行インドネシア、投資事業はJトラストアジアを中心に展開している。

 なおJトラストアジアは、東南アジアにおける戦略的パートナーとして販売金融事業のタイGL社に順次出資するとともに、タイGL社と共同でインドネシアに割賦販売金融事業のGLFI社(出資比率20%)を設立したが、17年10月タイGL社CEOである此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発され、現在は補償請求・賠償請求の訴訟を提起している。

 総合エンターテインメント事業および不動産事業は、KeyHolder(アドアーズが17年10月1日付で持株会社に移行して商号変更)<4712>が展開している。なおKeyHolderは1月23日、100%子会社アドアーズの全株式をワイドレジャーに譲渡し、特別利益に関係会社売却益12憶11百万円を計上すると発表している。

■収益はM&A・のれん償却・事業再編・不良債権処理などで変動

 収益はM&A・のれん償却・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。18年3月期から国際財務報告基準(IFRS)を任意適用した。利益配分については、将来の経営環境や業界動向を総合的に勘案しながら、積極的な利益還元を図ることを基本方針としている。

■18年3月期(IFRS)減額修正して最終赤字予想だが実質増益

 18年3月期連結業績(IFRS)予想は2月13日に、営業収益を9億13百万円、営業利益を72億14百万円、親会社の所有者に帰属する純利益を85億85百万円、それぞれ減額修正した。

 JトラストアジアがタイGL社の転換社債取消に伴う債権分類変更によってその他営業収益に53億86百万円計上する一方で、転換社債取消に伴って新株予約権部分に対する評価損を計上し、保有株式についてもその他営業費用で減損損失82億30百万円計上する。また総合エンターテインメント事業の既存ゲーム店舗における集客伸び悩みや、東南アジア金融事業における貸出ポートフォリオ入れ替えに伴う貸出金残高伸び悩みなども影響する。

 修正後の18年3月期連結業績(IFRS)予想は、営業収益が885億77百万円、営業利益が28億44百万円、親会社の所有者に帰属する純利益が4億48百万円の赤字とした。なお継続事業としてのアドアーズの数値は含んでいない。アドアーズの売却が実行された場合、同社の経営成績ならびに譲渡に伴う損益を非継続事業として開示する。

 前期の実績をIFRS表示した場合の営業収益791億円、営業利益9億円、純利益22億円の赤字との比較で見ると、営業収益は約95億円増収、営業利益は約19億円増益、親会社の所有者に帰属する純利益は約17億円増益となる。実質的に増収増益予想である。

 なお第3四半期累計連結業績は、営業収益が前年同期比5.0%増の668億95百万円、営業利益が64.7%減の26億91百万円、親会社の所有者に帰属する純利益が20百万円の赤字(前年同期は61億87百万円の黒字)だった。投資事業における株式評価の影響で大幅営業減益だったが、主力の金融事業が牽引して営業黒字を確保した。投資事業を控除すれば50億円超の営業増益だった。

 なお配当予想は据え置いて前期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としている。

 18年3月期は投資事業におけるタイGL社関連の影響などで減額修正して最終赤字予想となったが、前期比では実質増益予想である。また主力の金融事業の好調が牽引して19年3月期の収益改善を期待したい。

■中期的に銀行業の収益拡大期待

 中期経営計画では、中期ビジョンとして「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業を目指す」を掲げている。事業拡大が望めるアジア銀行業からの利益貢献を中心として、成長市場におけるIRR15%以上の投資案件をターゲットに3年間で500億円~1000億円の投資を目指す。また株式価値の最大化を経営の最重要課題の一つとして位置付け、株価が割安であると判断したときには機動的に自社株買いを実施する。

 国内金融事業では消費者金融事業を縮小し、不動産関連の信用保証事業および債権回収事業を拡大する。またM&Aを活用して新分野への進出を目指す。韓国金融事業ではグループ内の相互連携を通じて各事業を有機的に連携させ、債権残高積み増しと収益拡大に取り組む。東南アジア金融事業では、Jトラストインドネシア銀行の不良債権回収事業の収益強化と財務健全性の向上に取り組むとともに、さらなるM&Aを推進する方針だ。

 中期成長に向けて、M&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、M&A・事業再編および事業構造改革に伴う一時的利益・費用の計上で収益が大幅に変動する可能性もあるが、中期的に韓国金融事業の収益改善、東南アジアへの積極的な業容拡大、グループシナジーなどの効果で銀行業の収益拡大が期待される。なお16年5月には東証1部への申請に向けた検討を開始したと発表している。

■株価はほぼ底値圏

 株価は出資先のタイGL社を巡る不透明感に対する売りが一巡し、700円台でモミ合う形だったが、地合い悪化の影響で水準を切り下げ、2月16日の653円まで調整した。

 2月28日の終値684円を指標面で見ると、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.8%近辺で、前期実績の連結PBR(前期実績の連結BPS1455円90銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約770億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、ほぼ底値圏だろう。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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