【アナリスト水田雅展の企業レポート】バルクホールディングスは日柄調整完了感、サイバーセキュリティ分野進出で中期的に収益改善期待

企業レポート

 バルクホールディングス<2467>(名セ)は、コンサルティング事業やマーケティング事業などを展開する持株会社である。収益基盤を強化するため経営資源集中戦略を加速している。18年3月期は先行投資負担で減益予想となったが、サイバーセキュリティ分野への進出を推進し、中期的に収益改善が期待される。株価は急伸後の日柄調整完了感を強めている。

■経営資源集中戦略を加速

 コンサルティング事業やマーケティング事業などを展開する持株会社である。連結子会社バルクがコンサルティング事業とマーケティング事業、連結子会社マーケティング・システム・サービスがマーケティング事業を展開し、アトラス・コンサルティングを持分法適用関連会社としている。

 収益基盤を強化するため、経営資源を情報セキュリティ分野とマーケティング分野に集中する動きを加速している。17年3月住宅関連事業のハウスバンクインターナショナル(HBI社)の全株式を売却、18年1月にはIT事業のヴィオの株式を売却した。ヴィオは18年3月期第4四半期から連結除外となる。

■プライバシーマーク・ISO27001認定取得支援に強み

 コンサルティング事業は、個人情報保護など情報セキュリティマネジメント分野におけるプライバシーマーク認定取得支援、ISO27001(ISMS)認証取得支援、および運用支援を主力としている。

 バルクは情報セキュリティマネジメント分野のリーディングカンパニーである。プライバシーマーク認定取得は国内トップクラスの1800件超、ISO27001認証取得は500件超の取得支援実績を誇っている。自社社員によるコンサルタント、ISMS審査員資格保有者の在籍、自社開発の支援ITツールによる作業負担軽減、教育支援メニューや取得後の継続維持・運用サポートメニューの充実などを強みとして、あらゆる業種・業態への対応実績を持つ。このため企業にとっては短期間での取得が可能になる。

 15年6月には業界初の情報セキュリティマネジメントシステム運用支援クラウドサービス「V-Cloud」をリリースし、16年5月には大企業向け効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」サービスを開始した。

■マーケティング事業は新製品モニター調査などが主力

 マーケティング事業は、バルクがマーケティングリサーチ事業、マーケティング・システム・サービスがSP(セールスプロモーション)事業や広告代理業を展開している。

 バルクのマーケティングリサーチ事業は、大手メーカーの新製品開発時のモニター調査などを主力としている。調査の企画・設計・分析・実査から商品企画などのマーケティング戦略支援まで、企業のマーケティング活動における課題を総合的にワンストップで解決・支援する。なお17年6月にはEverforth社とデジタルマーケティング分野で業務提携した。

 マーケティング・システム・サービスのマーケティング事業は、スーパーなど食品流通事業者のフリーペーパー、食品・飲料メーカーのSPツール・ノベルティ制作などでクライアントの課題解決を総合的に支援している。関東の大手スーパー向けを主力としている。

■サイバーセキュリティ分野への進出を推進

 17年10月には、大気中に含まれる様々な種類のガスの同時検知を可能とする超小型高精度ガスセンサを開発した米国のAerNos社に出資した。将来的に同社の技術の応用を検討するため株式取得して関係を強化した。

 17年11月には、イスラエルのサイバーセキュリティ分野におけるリーディングカンパニーであるサイバージム社と、共同事業に関する基本合意書を締結した。共同事業体を通じて、電力や金融など重要インフラストラクチャーセクターの民間企業、および政府機関等に対して、サイバー攻撃に対応するためのトレーニング施設を米国NY州に開設する。またサイバージム社独自開発のサイバー環境を模したトレーニング施設を米国および日本で販売し、サービス提供を行う。

 そして17年12月サイバージム社と共同事業に関する独占的ライセンス契約を締結し、18年1月には共同事業会社として米国子会社SCH社の設立を発表した。独占的ライセンス契約の契約上の地位は子会社SCH社に移転する。

 18年2月には子会社バルクがアクロホールディングス(東京都中央区)と業務提携した。相互の顧客に対して、より付加価値の高いIT・セキュリティソリューションを提供する。また西武信用金庫(東京都中野区)と、地域の包括的連携・協力に関する協定、およびビジネスマッチング契約を締結した。西武信用金庫の取引先に対して情報セキュリティ対策の支援を行う。

■18年3月期は先行投資負担で減益予想

 18年3月期連結業績予想(1月31日に減額修正)は、売上高が17年3月期比42.3%減の9億88百万円、営業利益が3百万円の赤字(17年3月期は25百万円の黒字)、経常利益が1百万円(同23百万円の黒字)、純利益が15百万円(同6百万円の黒字)としている。

 売上面ではコンサルティング事業が堅調だが、マーケティング事業が一部既存顧客における販促予算削減の影響を受ける。17年3月売却した住宅関連事業、18年1月売却したIT事業の連結除外も影響して大幅減収予想である。

 利益面では赤字だった住宅関連事業がなくなり、高付加価値案件の売上比率も上昇するが、一方でサイバーセキュリティ分野およびマーケティングリサーチ分野の収益拡大に向けた先行投資負担が発生するため、販管費が増加して減益予想としている。特別利益にはヴィオの株式売却に伴う関係会社株式売却益22百万円を計上する。

 なお第3四半期累計は、売上高が前年同期比46.3%減の7億84百万円、営業利益が45.3%減の19百万円、経常利益が30.1%減の22百万円、純利益が14.0%減の13百万円だった。コンサルティング事業は19.3%増収、マーケティング事業は14.1%減収だった。

 18年3月期は先行投資負担で減益予想となったが、経営資源集中戦略でサイバーセキュリティ分野への進出を推進し、中期的に収益改善が期待される。

■株価は急伸後の日柄調整完了感

 株価は安値圏140円~160円近辺でのモミ合いから上放れの展開となり、1月10日の昨年来高値490円まで急伸した。その後は反落したが、300円台で推移して日柄調整完了感を強めている。

 3月5日の終値は310円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円00銭で算出)は155倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS90円53銭で算出)は3.4倍近辺、時価総額は約23億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が接近している。急伸後の日柄調整が完了して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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