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ゼリア新薬工業は調整一巡感、18年3月期2桁増益・増配予想
- 2018/3/14 06:22
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。18年3月期は2桁増益予想、そして増配予想である。株価は1月の昨年来高値圏から反落したが、調整一巡感を強めている。自己株式取得期間延長も評価材料だろう。出直りが期待される。
■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。
17年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業53%、コンシューマーヘルスケア事業47%、その他0%、営業利益構成比(連結調整前)は医療用医薬品事業17%、コンシューマーヘルスケア事業80%、その他2%だった。海外売上比率は24.6%だった。
医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、H2受容体拮抗剤アシノン、亜鉛含有胃潰瘍治療剤プロマック、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども展開している。
子会社ティロッツ社は15年7月、アストラゼネカ社から炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの米国を除く全世界における権利を取得した。IBDは潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を含めて世界中に約500万人の患者が存在すると推定されている疾患である。CDを適応症とするEntocortの権利取得により、IBD治療においてUCの第1選択薬として用いられているアサコールを補完する。そして16年11月国内でCDを適応症するゼンタコートカプセルを発売した。
17年5月には潰瘍性大腸炎治療剤アサコールの用法・用量を追加(開発番号Z-206、協和発酵キリンと共同開発)した。また17年9月には、日医工<4541>が製造販売承認を取得したバイオシミラー製剤『インフリキシマブBS点滴静注用100mg「日医工」』について、両社で共同プロモーションを行うと発表した。
コンシューマーヘルスケア事業は、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども、全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
消化器分野を最重点領域と位置付けて、新薬開発を推進している。膵臓癌を適応症とする「Z-360」は日本を含むアジア地域でフェーズ2国際共同治験中、子宮頸癌を適応症とする「Z-100」は日本を含むアジア地域でフェーズ3国際共同治験中、ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズ3段階である。
海外は、中国で潰瘍性大腸炎を適応症として「Z-206」を承認申請中、欧州で潰瘍性大腸炎を適応症とする「TP05」を承認申請中である。自社開発「Z-338」は欧州で機能性ディスペプシアを対象としたフェーズ3を実施し、北米ではフェーズ2が終了している。
■18年3月期2桁増益・増配予想
18年3月期連結業績予想(2月6日に売上高を減額、営業利益を据え置き、経常利益を増額、純利益を増額)は、売上高が17年3月期比1.8%増の660億円、営業利益が10.1%増の50億円、経常利益が17.2%増の52億円、純利益が15.7%増の41億円としている。配当予想は2円増配の年間34円(第2四半期末17円、期末17円)で、予想配当性向は42.8%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比1.2%増の496億44百万円、営業利益が26.0%増の45億87百万円、経常利益が39.6%増の48億90百万円、純利益が37.6%増の39億55百万円だった。競争激化などで売上高が伸び悩んだが、販管費の減少で大幅増益だった。
売上高は、医療用医薬品事業が3.2%増の266億54百万円、コンシューマーヘルスケア事業が1.0%減の228億73百万円、その他が8.9%増の1億16百万円だった。
医療用医薬品事業では、主力のアサコールが国内で後発品および競合品の影響を受けたが、海外が好調に推移した。Entocort(国内販売名ゼンタコート)は国内・海外とも増収だった。アコファイドは市場構築が計画より遅れている。コンシューマーヘルスケア事業は競争激化で苦戦した。
差引売上総利益率は71.6%で0.8ポイント低下、販管費比率は62.3%で2.7ポイント低下した。営業外では為替差損益が大幅改善した。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.2%、営業利益が91.7%、経常利益が94.0%、純利益が96.5%と高水準である。第4四半期に研究開発費の増加を見込んでいるが、通期ベースでも好業績が期待される。
■株主優待は毎年9月末と3月末の年2回実施
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主に対して実施している。保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈する。
■株価は調整一巡感
17年6月16日発表の自己株式取得(8月4日取得枠拡大を発表、11月2日取得期間延長を発表、2月6日取得期間延長を発表、取得株式総数の上限360万株、取得価額総額の上限72億円、取得期間17年6月19日~18年5月11日)を実施している。2月6日時点の累計取得株式数は248万5100株だった。
株価は1月の昨年来高値2348円から反落したが、2000円近辺で推移して調整一巡感を強めている。
3月13日の終値2087円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS79円53銭で算出)は26~27倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間34円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1192円73銭で算出)は1.7倍近辺である。時価総額は約1109億円である。
週足チャートで見ると52週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。自己株式取得期間延長も評価材料だろう。出直りが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)