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アイリッジは売り一巡、18年7月期大幅減益予想だが利用ユーザー数増加基調で電子地域通貨の展開も加速
- 2018/3/23 06:32
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)は、スマホ向けO2Oソリューション事業を展開し、FinTechソリューション事業も推進している。popinfo利用ユーザー数が8000万を突破し、ストック型収益の月額報酬は大幅増収基調である。また電子地域通貨の展開も加速している。18年7月期は開発案件の大型化・長期化の影響で大幅減益予想となったが、中期的には収益拡大基調が期待される。株価は売り一巡感を強めている。大幅減益予想の織り込みが完了して反発が期待される。
■O2Oソリューション事業を展開
自社開発O2Oソリューション(組み込み型プログラム)である位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfo(ポップインフォ)提供から、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を包括的に展開している。
popinfoは企業や店舗のスマホアプリに組み込み、アプリユーザーのスマホ待ち受け画面に伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報やメッセージを、プッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。位置情報・属性情報・時間を組み合わせて指定した場所・人・時間帯で配信が可能なため、実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。
収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。導入企業数増加と利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型ビジネスモデルだ。
現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期の構成比が高い特性がある。また案件の大型化に伴ってアプリ開発・コンサル等の四半期売上が変動しやすい特性がある。ただしpopinfo利用ユーザー数が増加基調であり、今後はストック型収益の月額報酬の構成比上昇が期待される。
■導入アプリ数・利用ユーザー数は増加基調
O2Oマーケティングやオムニチャネル化の進展も背景として、popinfoは業種を問わず大企業のアプリ中心に採用されている。18年2月には大阪市交通局の公式アプリ「Otomo!」に採用された。popinfoを活用したNTTデータ<9613>の「バンキング機能」付アプリの採用も増加基調である。O2Oソリューションを包括的に展開していることが強みだ。
09年にサービス開始したpopinfoの利用ユーザー数(プッシュ通知配信に同意したユーザー数、アプリごとにカウント)は14年1月1000万突破、15年3月2000万突破、16年1月3000万突破、16年5月4000万突破、16年11月5000万突破、17年4月6000万突破、17年6月6500万突破、17年9月7000万突破、17年11月7500万突破、18年2月8000万を突破した。導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。
■新規事業・サービスへの取り組み強化
中期成長戦略として、O2O事業の進化(より効果の高いスマートフォン・マーケティングの提供)、新規事業・サービスへの取り組み(継続した新規事業・サービスの創出・育成・収益化)、組織力向上(積極的な採用活動と経営基盤の強化)、成長を加速するための積極的なM&Aの検討に取り組んでいる。
16年3月NTTドコモ<9437>のO2O戦略子会社であるロケーションバリューと業務提携した。国内最大級のO2O連携である。16年3月にはクレディセゾン<8253>が当社株式を追加取得し、当社、クレディセゾンおよびデジタルガレージ<4819>との3社連携を強化した。FinTechソリューションの共同開発を推進する。
O2O事業の進化では、ユーザーの位置や行動履歴に基づいた最適な広告配信を提供するため、17年2月popinfoとサイバーエージェントの「AIR TRACK」の機能を連携し、17年8月にはpopinfo位置情報を活用した行動解析ソリューション「ジオリーチ」として第1号案件がスタートした。
新規事業・サービス関連では、15年12月テックビューロと業務提携した。popinfoとテックビューロのプライベート・ブロックチェーン技術「mijin」を組み合わせて、FinTechとO2Oの融合を推進する。
また電子地域通貨の展開を加速している。17年7月には電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy(マネーイージー)」の技術をベースとして、企業内電子通貨「オフィスコイン」の提供開始を発表した。17年11月には「MoneyEasy」が、ハウステンボスが決済システムの実証実験として導入する電子通貨「テンボスコイン」に採用された。
飛騨信用組合と共同で取り組んでいるスマホアプリを活用した電子地域通貨プラットフォーム「さるぼぼコイン」は、17年12月から約100店舗が加盟して、地元住民および観光客向けに商用化スタートした。金融機関による地域通貨の電子化は業界初である。
さらに18年2月には、伊予銀行と電子地域通貨「IYOGIN CO-in」の実証実験を開始した。18年3月には木更津市役所、木更津商工会議所、君津信用組合が取り組む電子地域通貨アクアコイン(仮称)の実証実験を開始する。
新サービスでは17年10月、スマホアプリを活用したクラウド型勤怠管理アプリ「LEAP」の提供を開始した。ビーコンを活用して位置情報と連動し、従業員一人ひとりの勤怠管理から残業予測までを一元管理できる。ラクラスと共同開発し、ファーストクライアントとしてKADOKAWAに導入された。
■18年7月期大幅減益予想だが、月額報酬は大幅増収基調
18年7月期の非連結業績予想(3月2日に売上高、利益とも減額修正)は、売上高が15億円~16億円、営業利益が50百万円~1億円、経常利益が50百万円~1億円、純利益が35百万円~70百万円のレンジ予想としている。
17年7月期との比較で見ると、売上高が0.4%増収~7.1%増収、営業利益が76.3%減益~52.6%減益、経常利益が76.4%減益~52.7%減益、純利益が76.9%減益~53.8%減益となる。
popinfo利用ユーザー数が増加基調で月額報酬は増収基調だが、スマホ・マーケティングへの取り組み拡大で開発案件が大型化・長期化し、事業年度をまたぐ案件が増加しているため、アプリ開発・コンサル等の売上が期初計画を下回る見込みとなった。利益面では売上計画未達に加えて、自社サービスの積極展開に向けた人財採用が順調に進捗しているため、採用費や人件費の増加も影響する見込みだ。
なお第2四半期累計は、売上高が前年同期比11.3%増の7億16百万円だが、営業利益が46.8%減の40百万円、経常利益が46.4%減の40百万円、純利益が48.8%減の27百万円だった。
第1四半期の立ち上がり遅れを挽回できず、売上高、利益とも計画を下回った。売上高の内訳は、月額報酬が28.0%増の2億85百万円、アプリ開発・コンサル等が2.4%増の4億30百万円だった。売上総利益率は36.2%で0.8ポイント低下、販管費比率は30.6%で5.3ポイント上昇した。コスト面では人件費が増加した。
18年7月期は開発案件の大型化・長期化の影響で大幅減益予想となったが、popinfo利用ユーザー数が8000万を突破し、ストック型収益の月額報酬は大幅増収基調である。
■popinfo利用ユーザー数増加基調でストック型収益拡大期待
popinfo利用ユーザー数の目標は20年を目途に1億人超としている。顧客層の拡大、ポイントやアプリ決済などサービスラインナップ拡充による単価上昇、開発内製化進展による売上総利益率上昇、そしてpopinfo利用ユーザー数増加に伴うストック型収益(月額報酬)の構成比上昇などで、中期的に収益拡大基調が期待される。
なお配当は無配継続としている。利益配分については成長過程にあるため、人材確保・育成やサービス強化のための投資、営業強化のための広告宣伝は販売促進、その他成長投資に対して迅速に対応することが重要と考え、現在まで配当を実施していない。今後においても当面は成長投資に備えて内部留保の充実を図る方針としている。将来的には利益還元を検討するが、配当実施の可能性および実施時期等については現時点において未定としている。
■株価は売り一巡感
株価は18年7月期予想の減額修正を嫌気して急落した。ただし16年2月の上場来安値1323円まで下押すことなく、3月7日の直近安値1415円から切り返して売り一巡感を強めている。3月16日には1589円まで上伸する場面があった。
3月22日の終値1496円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想レンジ下限のEPS6円28銭で算出)は238倍近辺で、実績PBR(前期実績のBPS189円64銭で算出)は7.9倍近辺である。時価総額は約84億円である。
週足チャートで見ると安値圏の下ヒゲで売り一巡感を強めている。18年7月期大幅減益予想の織り込みが完了して反発が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)