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三洋貿易は調整一巡して戻り歩調、18年9月期横ばい予想だが上振れの可能性
- 2018/4/12 06:39
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
三洋貿易<3176>(東1)は、自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。M&Aも積極活用して業容拡大戦略・グローバル展開を加速している。18年9月期は意識的な基礎固めの年と位置付けて横ばい予想だが、上振れの可能性が高いだろう。株価は調整一巡して戻り歩調だ。
■自動車業界向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社
ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開する専門商社である。メーカー並みの技術サポート力に加えて、財務面で実質無借金経営であることも特徴だ。
17年9月期セグメント別(連結調整前)売上高構成比は化成品39%、機械資材32%、海外現地法人22%、国内子会社6%、その他0%で、営業利益構成比は化成品30%、機械資材45%、海外現地法人13%、国内子会社10%、その他2%だった。
業界別売上構成比(単体ベース)は自動車が過半を占め、OA・家電、塗料・インキ、その他化学などが続いている。自動車関連は各種合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーターはカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポートは世界市場6割を占有している。
飼料・エネルギー・リサイクル関連では飼料や固定燃料などを製造するペレットミルが高シェアだ。国内子会社のコスモス商事は地熱・海洋資源開発関連分野で掘削用機材の輸入販売・レンタルを手掛けている。
なお収益面では、設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高くなりやすい特性がある。また配当の基本方針は連結配当性向25%を下限の目途としている。
■M&Aも活用して業容拡大戦略・グローバル展開を推進
グループとして重点志向する事業領域への経営資源集中を進めるとともに、国内外でM&Aも活用して業容拡大戦略・グローバル展開を推進している。
16年6月洸陽電機と小型高効率の独ブルクハルト社製木質バイオマスコージェネレーション(熱電併給)システムの販売拡大で業務提携、16年7月医療機器開発・製造販売や医療機器・理科学機器の輸入販売を手掛ける日本ルフトを子会社化、17年2月子会社の三洋テクノスがマイクロポンプ専業メーカーの古江サイエンスを子会社化(17年9月吸収合併)した。17年7月精密鋳造用副資材・型材輸入販売の日本フリーマンを子会社化した。
17年10月には16年2月子会社化したソートの吸収合併(18年4月1日付)を発表した。また医農薬品中間体や電子材料など精密化学品を主力とする化学品専門商社アズロを子会社化した。
海外は米国、メキシコ、タイ、中国(上海、香港)、インド、ベトナム、インドネシアに展開している。18年1月にはタイの連結子会社San-Thap International社の増資および完全子会社化を発表した。
■18年9月期横ばい予想だが保守的、上振れの可能性
18年9月期連結業績予想は、売上高が17年9月期比9.7%増の743億円、営業利益が0.2%増の49億50百万円、経常利益が2.3%減の51億50百万円、純利益が1.2%減の33億10百万円としている。配当予想は17年9月期と同額の年間59円(第2四半期末30円、期末29円)としている。予想配当性向は25.5%となる。
売上高の計画は化成品が9.0%増の291億円、機械資材が9.7%増の237億円、海外現地法人が11.3%増の168億円、国内子会社が5.1%増の43億円、その他が80.2%増の4億円としている。主力の自動車関連商材が好調に推移し、M&A効果も寄与する。海外現地法人はグローバル戦略による大幅伸長を見込んでいる。
売上総利益率は0.5ポイント低下の17.6%、販管費比率は0.2ポイント上昇の11.0%の想定としている。新中期経営計画において18年9月期を意識的な基礎固めの年と位置付け、中長期成長に向けて組織再編や人材拡充などの先行投資を実行するため、関連費用の増加を見込んでいる。また前期の大型スポット案件の一巡も考慮して営業利益は横ばい、経常利益と純利益は微減益予想としている。
第1四半期は売上高が前年同期比13.4%増の190億38百万円、営業利益が0.2%増の13億21百万円、経常利益が4.8%減の14億03百万円、純利益が2.2%増の9億19百万円だった。
化成品は5.8%増収、0.5%営業減益だった。売上面ではゴム関連製品中心に堅調だったが、利益面では原材料価格高騰が影響した。機械資材は19.9%増収、26.8%営業増益だった。機械・環境関連でバイオマス大型案件の検収が第2四半期にズレ込んだが、産業資材で自動車内装用部品が好調に推移した。海外現地法人は27.3%増収、29.3%営業減益だった。売上面ではゴム関連や自動車部品関連中心に伸長したが、利益面では三洋物産貿易(上海)における販売費の大幅増加が影響した。国内子会社は16.4%減収、18.0%営業減益だった。コスモス商事の地熱分野が低迷した。
通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高25.6%、営業利益26.7%、経常利益27.2%、純利益27.8%である。第2四半期の構成比が高い特性を考慮すれば高水準である。通期予想は上振れの可能性が高いだろう。
■長期ビジョンで20年9月期までにROE15%以上目指す
長期ビジョン「VISION2020」では、目標数値に20年9月期までに経常利益50億円、ROE15%以上、自己資本比率50%以上を掲げている。
基本方針は、盤石な財務基盤、強みを通じた価値創造、自由闊達な社風と機会創出の組織として、6つの戦略には、既存ビジネスの深化、ビジネスポートフォリオの明確化、新規ビジネスのプロジェクト立ち上げ、グローバル展開の加速、新規投資案件の推進、国内外の組織の強化を掲げている。
そして新中期経営計画(18年9月期~19年9月期)では、目標数値に19年9月期売上高828億円、経常利益54億80百万円を掲げている。新規プロジェクトとして重点推進している木質バイオマスプロジェクトについては、独ブルクハルト社製の熱電併給装置を宮崎県串間市の大型案件向けに受注している。
■株価は調整一巡して戻り歩調
株価は3月26日安値1920円から切り返して4月11日には2185円まで上伸した。調整一巡して戻り歩調だ。
4月11日の終値2127円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS231円32銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間59円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1663円75銭で算出)は約1.3倍である。時価総額は約308億円である。
週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んだが、調整一巡して出直りが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)