カーリットホールディングスは戻り歩調、19年3月期も収益拡大期待

 カーリットホールディングス<4275>(東1)は、化学品事業を主力に、M&Aを積極活用して規模拡大や事業多様化を積極推進し、二次電池試験受託なども強化している。当社はロケット用固体推進薬原料を国内で唯一製造しており、宇宙関連銘柄の一つである。19年3月期も収益拡大を期待したい。株価は調整一巡して戻り歩調だ。なお5月15日に18年3月期決算発表を予定している。

■化学品、ボトリング、産業用部材を展開、M&Aで規模拡大と事業多様化

 グループ収益基盤と総合力強化に向けたM&A戦略で、規模拡大と事業多様化を推進している。

 12年1月工業用塗料販売・塗装工事の富士商事を子会社化、12年8月耐火・耐熱金物製造販売の並田機工を子会社化、13年10月一級建築士事務所の総合設計を子会社化、14年2月各種スプリング製造・販売の東洋発條工業を子会社化、15年10月並田機工がアジア技研からスタッド事業を譲り受け、16年2月合成樹脂原材料販売の三協実業を子会社化、17年3月総合設計がエスディーネットワークを子会社化した。

 17年3月期売上高構成比は、化学品事業(産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、信号炎管、危険性評価試験受託、二次電池試験受託、化成品関連、電子材料・機能性材料など)43%、ボトリング事業37%、産業用部材事業(半導体用シリコンウェーハ、耐火・耐熱金物など)17%、その他3%だった。

■中期経営計画「礎100」で事業基盤確立を推進

 中期経営計画「礎100」では、18年の創業100周年を迎え、次の100年企業の礎となる事業基盤確立を推進する方針としている。

 基本戦略には、成長基盤強化(新商品・新規事業の創出と育成、M&Aや資本・技術提携)、収益基盤強化(経営資源の有効配分、新商品開発のスピードアップ)、グループ経営基盤強化(グループシナジーの最大化、子会社・事業の再編・統廃合、R&Dの新体制構築、海外展開の強化、CSR経営の推進)を掲げている。

 注力分野と位置付ける電池受託評価試験分野では、17年11月東レリサーチセンターと業務提携した。顧客の需要動向を見て順次試験設備を導入し、幅広い受託試験体制を構築する。

 新商品・新規事業の創出と育成に関しては、ゲルマニウム精製事業、ロケット燃料(固体推進薬・液体推進薬)の製品化、茶殻の有用成分を抽出したスキンケア商品や洗浄・デオドラント商品原料の量産化などを推進している。

 目標数値は18年度売上高540億円、営業利益24億円、営業利益率4%、連結配当性向20~30%としている。

 なお4月23日には、群馬県内の製造拠点に電力を供給する広桃水力発電所の更新改修工事(総工費約23億円)が完了したと発表している。16年12月から更新改修工事に着手し、計画どおり4月から稼働再開している。

■18年3月期大幅増益予想、19年3月期も収益拡大期待

 18年3月期の連結業績予想(10月31日に利益を増額修正)は、売上高が17年3月期比6.8%増の510億円、営業利益が40.6%増の19億円、経常利益が38.9%増の20億円、純利益が56.8%増の12億円としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比6.1%増の379億04百万円、営業利益が48.9%増の12億16百万円、経常利益が49.4%増の14億01百万円、純利益が83.5%増の9億72百万円だった。化学品や産業用部材の損益が改善して大幅増益だった。売上総利益率は15.7%で0.3ポイント上昇、販管費比率は12.5%で0.6ポイント低下した。

 化学品は売上高が8.4%増の164億73百万円で、営業利益が45.9%増の7億52百万円だった。自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用とも増加した。受託評価分野では、電池試験が上期の受注減の影響で減少したが、危険性評価試験が電池案件で増加し、全体として増収だった。化成品分野は減収、電子材料分野は増収、セラミック材料分野は減収だった。

 ボトリングは売上高が3.5%増の142億48百万円で、営業利益が3.6%増の3億73百万円だった。茶系飲料が増加した。産業用部材は売上高が4.7%増の62億20百万円で、営業利益が22.9%増の1億85百万円だった。ばね・座金製品が増収となり、シリコンウェーハの不採算品目からの撤退も寄与した。

 通期は、化学品で収益性の低い無機工業薬品が減収となる一方で、自動車、電子機器、半導体関連の高収益製品の拡販が進展し、ボトリングと産業用部材の損益改善も寄与して大幅増益予想である。化学品は売上高が9.3%増の225億円で営業利益が22.7%増の9億50百万円、ボトリングは売上高が5.2%増の185億円で営業利益が37.9%増の5億20百万円、産業用部材は売上高が0.3%増の80億円で営業利益が47.5%増の3億20百万円の計画としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.3%、営業利益が64.0%、経常利益が70.1%、純利益が81.0%である。通期ベースでも好業績が期待される。そして19年3月期も収益拡大を期待したい。

 配当予想(2月27日に期末記念増配を発表)は、年間12円(期末一括、普通配当10円+創業100周年記念配当2円)としている。17年12月期との比較で2円増配となる。予想配当性向は23.7%となる。

■株主優待制度は毎年6月末に実施

 株主優待制度(19年3月期末から優待内容を変更)は、毎期末(3月31日)時点の株主に対して、保有株式数および保有期間に応じて6月末の株主総会終了後にUCギフトカードを贈呈する。

■株価は調整一巡して戻り歩調

 株価は1月高値1399円から反落して上値を切り下げる形となったが、4月17日の直近安値975円から切り返している。5月7日には1080円まで上伸した。調整一巡して戻り歩調だ。

 5月7日の終値1074円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想連結EPS50円69銭で算出)は約21倍、前期推定配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は約1.1%、前々期実績連結PBR(前々期実績連結BPS1010円55銭で算出)は約1.1倍である。時価総額は約258億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。基調転換を期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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