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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】久世は16年3月期の収益改善期待で戻り歩調、3月期末の株主優待も注目
- 2015/3/17 14:21
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
業務用食材卸の久世<2708>(JQS)の株価は戻り歩調の展開だ。2月27日に戻り高値755円まで上伸し、その後も堅調に推移している。今期(15年3月期)の営業赤字を織り込み済みであり、来期(16年3月期)の収益改善期待で続伸展開だろう。3月期末の株主優待も注目点だ。
首都圏を中心にファーストフード・ファミレス・カフェ、居酒屋・パブ、ディナーレストラン・ホテル・専門店、惣菜・デリカ・娯楽施設・ケータリングなど、外食・中食産業向けに業務用食材の卸売事業を展開し、大手飲食チェーンも主要顧客としている。子会社のキスコフーズは国内(静岡市)とニュージーランドで業務用高級ソース・高級スープの製造、久世フレッシュワンは東京都内で生鮮野菜など農産品の卸売を展開している。
中期経営計画では目標値として20年3月期売上高1000億円を掲げ、重点戦略として首都圏・関西圏・中部圏での販路拡大、全国物流ネットワークの強化、中食市場や高齢者施設給食市場の開拓強化、PB商品の拡販や製造利益の拡大、海外事業の基盤確立などを推進している。
販路拡大に向けたM&A・アライアンス戦略では、12年6月に中部圏で酒類販売大手サカツコーポレーションと業務提携し、14年4月には高級飲食店向けに強みを持つ水産物中卸会社の旭水産を子会社化した。
15年1月には、海外子会社の久世(香港)が所有する中国・上海峰二食品有限公司の株式(保有割合10%)を国分に譲渡(15年3月上旬予定)すると発表した。09年から上海峰二食品有限公司と業務用食材分野で協力関係にあり12年に出資したが、上海峰二食品有限公司が国分の資本参加を受け、業務用食材卸売事業に加えてスーパー等一般消費者向けの食品・酒類の卸売業務を強化することになった機会に譲渡することを決定した。なお中国事業は久華世(成都)商貿有限公司を軸に今後も継続するとしている。
今期(15年3月期)の連結業績見通し(11月10日に売上高を増額、利益を減額修正)は、売上高が前期比11.0%増の685億円、営業利益が3億50百万円の赤字(前期は41百万円の利益)、経常利益が1億75百万円の赤字(同2億38百万円の利益)、純利益が1億95百万円の赤字(同1億円の利益)、配当予想(5月12日公表)が前期と同額の年間12円(期末一括)としている。
第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比10.2%増収だったが、営業利益、経常利益、純利益とも赤字だった。仕入価格の上昇、物流コストの上昇、人件費の増加などが影響した。しかし新規顧客の開拓や既存顧客の底上げ(インストアシェアアップ)など営業強化の効果で売上高は増加基調だ。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)163億73百万円、第2四半期(7月~9月)172億19百万円、第3四半期(10月~12月)183億76百万円、売上総利益率は第1四半期16.2%、第2四半期16.7%、第3四半期16.9%、営業利益は第1四半期1億79百万円の赤字、第2四半期91百万円の赤字、第3四半期23百万円の利益である。営業利益も第3四半期に黒字化して改善基調だ。
営業損益悪化の主因となった物流コストについては、採算性を考えた配送コースの実現、誤配の撲滅、時限管理の徹底と定時出発、イレギュラー配送の抑制などで物流の採算改善・精度向上を図り、新システム(ボイスピッキングシステム、新発注システム、配送運行管理システム)導入による効率化も推進している。
来期(16年3月期)は採算性を重視した営業活動の強化、仕入価格上昇に対する販売価格への転嫁推進、代替商品・メニューの提案強化、高付加価値商品やPB商品の拡販、物流コスト改善に向けた取り組みなどの効果も寄与して収益改善が期待される。
株主優待制度については14年9月に導入を発表した。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株数に応じて当社ブランド特選無洗米(山形県天童産はえぬき・新米)を贈呈する。100株以上~1000株未満保有株主に2.5kg、1000株以上~3000株未満保有株主に5kg、3000株以上保有株主に10kg贈呈し、15年3月期末から実施する。
株価の動きを見ると、14年10月の安値650円をボトムとして戻り歩調の展開だ。2月27日には755円まで上伸して14年3月以来の水準に回復した。その後も戻り高値圏で堅調に推移している。今期の赤字見通しは織り込み済みであり、来期の収益改善を期待する動きだろう。
3月16日の終値746円を指標面で見ると、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.6%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1235円43銭で算出)は0.6倍近辺である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。来期の収益改善期待で続伸展開だろう。3月期末の株主優待も注目点だ。