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Jトラストは年初来高値更新、19年3月期大幅増益予想、18年6月末から株主優待制度導入
- 2018/5/23 06:33
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
Jトラスト<8508>(東2)は、銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指して事業基盤を強化している。18年3月期は投資関連損失を計上したが、金融事業が大幅改善した。そして19年3月期も大幅増益予想である。また18年6月末から株主優待制度を導入する。株価は年初来高値更新の展開だ。
■国内外で金融事業を中心に業容拡大
国内外でM&Aや債権承継などを積極活用して業容を拡大している。そして銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指し、国内外において事業基盤の強化に取り組み、特に韓国やインドネシアなどアジア地域での金融事業拡大を推進している。
事業セグメントは、国内金融事業(信用保証、債権回収、クレジット・信販、その他の金融)、韓国金融事業(貯蓄銀行、債権回収、キャピタル)、東南アジア金融事業(銀行、債権回収、販売金融)、総合エンターテインメント事業(アミューズメント施設運営など)、不動産事業(戸建分譲中心の不動産売買、流動化不動産中心の収益物件仕入・販売)、投資事業、その他事業としている。
18年3月期のセグメント別営業収益構成比は国内金融事業12%、韓国金融事業47%、東南アジア金融事業18%、総合エンターテインメント事業3%、不動産事業9%、投資事業10%、その他事業3%だった。
国内金融事業は日本保証、Jトラストカード、パルティール債権回収など、韓国金融事業はJT親愛貯蓄銀行、JT貯蓄銀行、JTキャピタル、TA資産管理など、東南アジアは金融事業をJトラスト銀行インドネシア、投資事業をJトラストアジアが展開している。
4月19日にはJトラストアジアによるOMF社(インドネシア)の株式取得および第三者割当増資引き受け(合計出資比率60.0%)の決議を発表した。5月14日にはJトラストアジアによるCCI社(モンゴルのファイナンス事業会社CCI)の子会社化完了を発表した。さらに5月17日にはANZR社(カンボジア)の株式取得(出資比率55.0%)の決議を発表した。
なおJトラストアジアは、東南アジアにおけるリテール分野への進出を企図して販売金融事業のタイGL社に出資するとともに、タイGL社と共同でインドネシアに割賦販売金融事業のGLFI社(出資比率20%)を設立したが、17年10月タイGL社CEOである此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発されたため、現在はタイGL社、此下益司氏およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。
総合エンターテインメント事業および不動産事業は、子会社のKeyHolder(アドアーズが17年10月1日付で持株会社に移行して商号変更)<4712>が展開している。なおKeyHolderは18年3月、100%子会社アドアーズの全株式をワイドレジャーに譲渡してアミューズメント施設運営から撤退した。
■収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動
収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。18年3月期から国際財務報告基準(IFRS)を任意適用した。利益配分については、将来の経営環境や業界動向を総合的に勘案しながら、積極的な利益還元を図ることを基本方針としている。
■18年3月期は金融3事業が好調で営業増益、19年3月期も大幅増益予想
18年3月期連結業績(IFRS)は、営業収益が17年3月期比14.8%増の762億66百万円、営業利益が3.9倍の23億55百万円、親会社所有者帰属当期利益が7億31百万円の赤字(17年3月期は12億70百万円の赤字)だった。Jトラストアジアにおいて、前期のマヤパダ銀行株式売却益計上の反動や、タイGL社関連の投資関連損失約64億円計上があったが、金融事業の好調が牽引した。特に東南アジア金融事業の営業利益が大幅改善した。
18年3月期連結業績(IFRS)予想は、営業収益が18年3月期比9.3%増の833億78百万円、営業利益が3.0倍の70億73百万円、親会社所有者帰属当期利益が53億18百万円(18年3月期は7億31百万円の赤字)としている。
韓国金融事業は、IFRS第9号の適用を見据えた貸倒引当金繰り入れや、韓国当局の規制強化等の影響で減益見込みだが、国内金融事業が堅調に推移し、東南アジア金融事業の収益も一段と改善する。投資事業におけるタイGL社関連の損失計上一巡も寄与する。
18年3月期の配当は17年3月期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)とした。19年3月期の配当予想は18年3月期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)で、予想配当性向は23.2%となる。
■中期的に銀行業の収益拡大期待
中期ビジョンとして「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業を目指す」を掲げている。事業拡大が望めるアジア銀行業からの利益貢献を中心として、成長市場におけるIRR15%以上の投資案件をターゲットに、3年間で500億円~1000億円の投資を目指す。また株式価値の最大化を経営の最重要課題の一つとして位置付け、株価が割安であると判断したときには機動的に自社株買いを実施する。
国内金融事業では消費者金融事業から撤退し、不良債権の買取回収と信用保証事業を推進する。特に信用保証事業は地方銀行や電鉄会社と提携し、国内の不動産関連の保証事業を強化する。ハワイやテキサスなど海外の不動産担保ローンの保証も積極的に行い、事業を拡大する。韓国金融事業ではJトラストブランドの積極的なマーケティング活動により、グループ内の相互連携を通じて各事業を有機的に連携させ、債権残高積み増しと収益拡大に取り組む。東南アジア金融事業では、Jトラストインドネシア銀行のアセット拡大と、不良債権回収事業の収益強化に取り組むとともに、インドネシア以外の東南アジア地域においても、さらなるM&Aを推進する方針だ。
中期成長に向けて、M&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、M&A・事業再編および事業構造改革に伴う一時的利益・費用の計上で収益が大幅に変動する可能性もあるが、中期的に韓国金融事業の収益改善、東南アジアへの積極的な業容拡大、グループシナジーなどの効果で銀行業の収益拡大が期待される。なお16年5月には東証1部への申請に向けた検討を開始したと発表している。
■株主優待制度を18年6月末から導入
5月14日に株主優待制度の導入を発表した。毎年6月末または12月末時点の3単元(300株)以上保有株主を対象として、2500ポイント分の楽天ポイントギフトコードを贈呈する。18年6月末か対象の株主から実施する。
■株価は年初来高値更新
株価は3月安値616円から切り返して年初来高値更新の展開だ。5月21日には927円まで上伸した。
5月22日の終値899円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS51円64銭で算出)は約17倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は約1.3%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1401円64銭で算出)は約0.6倍である。時価総額は約1012億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスで先高観を強めている。上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)