JPホールディングスは年初来高値更新の展開、19年3月期も増収増益見込み

 JPホールディングス<2749>(東1)は保育園業界最大手である。グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーとして、ベトナムにおいても幼稚園事業を推進している。19年3月期業績・配当予想は株主総会などを考慮して非開示だが、新規施設開設が順調で増収増益が見込まれる。株価は幼児教育・保育の全面無償化の前倒しを好感する形で年初来高値更新の展開だ。なお6月5日には、定時株主総会における株主提案の全てに反対すること、および臨時株主総会は開催しないことを決議したとリリースしている。

■保育園業界の最大手、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー

 保育園業界最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。保育園・学童クラブなどを運営する子育て支援事業を主力として、保育所向け給食請負事業、英語・体操・リトミック教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業なども展開している。

 18年3月末の運営施設数(16年9月子会社化したアメニティライフ含む)は、保育園183(認可保育園・公設民営11、認可保育園・民設民営148、東京都認証保育所21、その他認可外保育園3)、学童クラブ71、児童館12、民間学童クラブ5、海外幼稚園1、合計272園・施設(17年3月末比21園・施設増加)である。首都圏中心に展開している。

■保育士確保に向けて待遇改善や職場環境整備を推進

 大幅な賃上げなどの保育士待遇改善や職場環境整備を推進し、保育士の確保と社会的に評価される賃金制度の構築を目指している。また保育士の業務負担軽減、保育士と保護者のコミュニケーション強化に向けた取り組みの一環として、日本保育サービスが運営する全国の保育園に、ソフトバンクグループのhugmo(ハグモー)社の保育クラウドサービス「hugmo」を導入している。

 こうした待遇改善や職場環境の整備が奏功して、18年4月入社新卒保育士数は過去最多の276名となった。資格取得コースは46名だった。また中途採用(年間採用)は17年度合計327名で、18年4月には224名が入社した。

 なお保育園運営子会社である日本保育サービスにおいて、18年4月1日付で片柳千代子代表取締役社長が就任し、女性社長が誕生した。また18年5月にはhugmo社と共同で、午睡中の園児の体動異常を検知するIoTセンサーを共同開発すると発表している。

■新規事業で新学童クラブや海外展開などを推進

 中期経営計画では、安全対策の強化および保育の質のさらなる向上、新規開設および既存施設の保育士増員による受入児童数の拡大、人材投資の拡大、経営管理体制の再整備、収益基盤拡大に向けた新規事業への着手(民間児童クラブ、既存サービスの拡販、海外展開)を掲げている。

 補助金を申請せず料金設定の面で自由度が高い新タイプの民間学童クラブは、16年9月AEL(アエル)湯島、17年4月AEL横浜ビジネスパークを開設し、18年3月にはAELが学習教室「ガウディア」のFCに加盟した。

 コンサルティング事業は、子育て支援施設の新規開発・運営のコンサルティングを展開する。18年3月期の契約済みは17件、新規契約見込みは5件である。

 海外はベトナムにおいて、中間層共働き世帯をターゲットに幼稚園事業を展開している。17年9月ダナン市(100%出資現地法人が運営するCOHAS DA NANG)とホーチミン市(現地企業とのFC契約によるCohas Kids)に幼稚園を開園した。

■収益は稼働率や補助金などが影響する特性

 収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月だが、稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する傾向もある。

 利益配分については将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。

■19年3月期予想は非開示だが新規開設順調で増収増益見込み

 19年3月期の連結業績・配当予想は非開示としている。18年6月開催予定の定時株主総会の議案として、取締役の選任に係る株主提案を受けており、今後の経営体制について未確定な要素が多いためとしている。

 ただし新規開設予定の合計21施設のうち、18年4月時点で保育園15園、学童クラブ4園を開設済みである。企業主導型事業所内施設2園(いずれも沖縄県)は、18年8月以降に開園予定である。新規施設開設が順調で増収増益が見込まれる。

■待機児童解消政策が追い風の事業環境に変化なく、中期的に収益拡大期待

 都市部を中心に保育サービスの需要は高水準であり、待機児童解消に向けて保育士待遇改善、保育所運営補助金拡大、各種規制緩和などの政策が進展している。国や東京都の待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく、中期的に収益拡大が期待される。

■株主優待制度は毎年9月末

 株主優待制度は毎年9月末日現在の5単元(500株)以上保有株主を対象として実施している。公平な利益還元という観点から16年度に一旦廃止したが、旧優待制度を見直し、保有株式数および保有期間に応じた還元の基準を定めて17年9月末の対象株主から再開した。

■株価は年初来高値更新の展開

 株価は幼児教育・保育の全面無償化の前倒しを好感する形で年初来高値更新の展開だ。そして17年10月の434円に接近している。6月5日の終値は394円、時価総額は約346億円である。週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスで先高観を強めている。上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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