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アイリッジは戻り歩調、電子地域通貨事業を加速
- 2018/6/20 06:41
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アイリッジ<3917>(東マ)は、スマホ向けO2Oソリューション事業を主力として、電子地域通貨事業も加速している。18年7月期は開発案件大型化の影響で減益予想だが、ストック型収益の月額報酬は大幅増収基調である。19年7月期はストック型収益の伸長などで収益改善が期待される。株価は戻り歩調だ。
■O2Oソリューション事業が主力
自社開発の位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfo提供から、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を主力としている。
popinfoはスマホアプリに組み込み、アプリユーザーのスマホ待ち受け画面に伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報やメッセージを、プッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。
17年10月には新サービスとして、スマホアプリを活用したクラウド型勤怠管理アプリ「LEAP」の提供を開始した。ラクラスと共同開発し、ファーストクライアントとしてKADOKAWAに導入された。
18年5月にはデジタルガレージ<4819>との業務・資本提携を発表した。デジタルガレージに対して第三者割当増資を実施するとともに、デジタルガレージが新設分割で設立する新設分割設立会社(DGマーケティングデザイン)の株式80%を取得、デジタルガレージからDGコミュニケーションズの株式14%を取得する。デジタルマーケティング・ソリューションやマーケティング・フィンテック領域において連携する。なおデジタルガレージは当社の第2位株主となる。
また6月15日には、ロケーションデータ(位置情報)を活用した広告配信を展開するクロスロケーションズとの、ロケーションビジネス領域における業務提携契約、および同社株式の一部取得(6月22日予定)を発表した。
■導入アプリ数・利用ユーザー数は増加基調
O2Oマーケティングやオムニチャネル化の進展も背景として、popinfoは業種を問わず大企業のアプリ中心に採用されている。
09年にサービス開始したpopinfoの利用ユーザー数(プッシュ通知配信に同意したユーザー数、アプリごとにカウント)は14年1月1000万突破、15年3月2000万突破、16年1月3000万突破、16年5月4000万突破、16年11月5000万突破、17年4月6000万突破、17年6月6500万突破、17年9月7000万突破、17年11月7500万突破、18年2月8000万を突破した。導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。
なおpopinfo利用ユーザー数の目標は20年を目途に1億人超としている。
■ストック型収益の構成比上昇期待
収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。月額報酬はpopinfo利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型収益である。
現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期の構成比が高い特性がある。また案件の大型化に伴ってアプリ開発・コンサル等の四半期売上が変動しやすい特性がある。ただしpopinfo利用ユーザー数が増加基調であり、今後はストック型収益の月額報酬の構成比上昇と収益拡大が期待される。
■電子地域通貨事業の展開も加速
中期成長戦略としてFinTechソリューションの拡大を目指し、O2O事業の進化(より効果の高いスマートフォン・マーケティングの提供)、新規事業・サービスへの取り組み(継続した新規事業・サービスの創出・育成・収益化)、組織力向上(積極的な採用活動と経営基盤の強化)、成長を加速するための積極的なM&Aの検討に取り組んでいる。
新規事業関連では電子地域通貨事業の展開を加速している。17年7月電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」をベースとして、企業内電子通貨「オフィスコイン」の提供開始を発表した。17年11月には「MoneyEasy」が、ハウステンボスが決済システム実証実験として導入する電子通貨「テンボスコイン」に採用された。
飛騨信用組合と共同で取り組んでいるスマホアプリを活用した電子地域通貨プラットフォーム「さるぼぼコイン」は、17年12月から約100店舗が加盟して、地元住民および観光客向けに商用化スタートした。金融機関による地域通貨の電子化は業界初である。
18年2月には伊予銀行と電子地域通貨「IYOGIN CO-in」の実証実験、18年3月には木更津市役所、木更津商工会議所、君津信用組合が取り組む電子地域通貨アクアコイン(仮称)の実証実験を開始した。
6月15日には電子地域通貨事業に関する業務・資本提携を発表した。デジタルガレージ、日本ATM、飛騨信用組合、ひだしんイノベーションパートナーズが運営する「飛騨・高山さるぼぼ結ファンド2号」(総称して本提携先)と間で業務・資本提携を締結した。当社の子会社として新たに設立する分割準備会社(Fintech子会社=フィノバレー)に電子地域通貨事業を会社分割で承継し、さらにFintech子会社が本提携先に対して第三者割当増資(18年8月予定)を行う。電子地域通貨事業の展開を加速する。
■18年7月期減益予想だが、ストック型収益の月額報酬は大幅増収基調
18年7月期の非連結業績予想(3月2日に売上高、利益とも減額修正)は、売上高が15億円~16億円、営業利益が50百万円~1億円、経常利益が50百万円~1億円、純利益が35百万円~70百万円のレンジ予想としている。
17年7月期との比較で見ると、売上高が0.4%増収~7.1%増収、営業利益が76.3%減益~52.6%減益、経常利益が76.4%減益~52.7%減益、純利益が76.9%減益~53.8%減益となる。
スマホ・マーケティングへの取り組み拡大で開発案件が大型化・長期化し、事業年度をまたぐ案件が増加しているため、アプリ開発・コンサル等の売上が期初計画を下回る見込みだ。利益面では採用費や人件費の増加も影響する。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比7.4%増の11億87百万円、営業利益が37.7%減の99百万円、経常利益が37.9%減の99百万円、そして純利益が38.7%減の70百万円だった。
アプリ開発・コンサル等は開発案件の大型化・長期化の影響、積極的な人材採用に伴う採用費や人件費の増加で減益だが、ストック型収益の月額報酬は23.3%増収で、増収基調に変化はない。なお18年4月末時点のpopinfo利用ユーザー数は17年7月期末比1466万人増加の8235万人となった。
18年7月期は開発案件の大型化・長期化の影響で大幅減益予想だが、popinfo利用ユーザー数が8000万を突破し、ストック型収益の月額報酬は大幅増収基調である。19年7月期はストック型収益の伸長などで収益改善が期待される。
なお配当は無配継続としている。将来的には利益還元を検討するが、当面は成長投資に備えて内部留保の充実を図る方針で、配当実施の可能性および実施時期等については現時点において未定としている。
■株価は戻り歩調
株価は18年7月期減益予想の織り込みが完了して戻り歩調だ。3~4月の安値圏1400円台で下値固めが完了し、6月19日には1934円まで上伸した。
6月19日の終値1830円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想レンジ下限のEPS6円28銭で算出)は約291倍、実績PBR(前期実績BPS189円64銭で算出)は約9.6倍である。時価総額は約120億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。また13週移動平均線が上向きに転じて先高観を強めている。上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)