【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは戻り歩調の展開、電子書籍配信サービスが拡大して中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ITサービスや電子書籍配信サービスを展開するインフォコム<4348>(JQS)の株価は戻り歩調の展開だ。17日には980円まで上伸して1月の戻り高値975円を突破した。電子書籍配信サービスが拡大基調であり、中期成長力を評価して14年7月1092円、さらに13年10月1124円を目指す展開だろう。

 企業向けにITソリューションを提供するITサービス(ヘルスケア、エンタープライズ、サービスビジネス)事業、一般消費者向けに各種デジタルコンテンツを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。

 業容拡大に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用している。13年9月に医薬品業界のCRM事業強化に向けてミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立、BCP(事業継続計画)分野のビジネス拡大に向けて危機管理関連ソリューションを手掛ける江守商事<9963>と協業した。

 グループ会社の統合・再編も進めている。14年3月にEC事業の運営効率化に向けてアムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。さらに15年2月には米国SYSCOMの株式を譲渡した。

 中期経営計画では、目標数値として17年3月期売上高550億円、営業利益50億円を掲げている。医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」事業、ネットビジネス事業(電子書籍配信サービスやソーシャルゲーム)を重点3事業として、クラウドサービス関連、ソーシャルメディア関連、ビッグデータ領域のデータサイエンス関連、農業IT化関連、海外展開なども強化する方針だ。

 14年9月には米国シリコンバレーに連結子会社としてコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。ヘルスケア関連やネットビジネス関連を中心に、成長が期待される新技術や有力ベンチャーなど投資先候補探索・発掘を推進する。

 06年開始のスマートフォン・ガラケー向け電子コミック配信サービス「めちゃコミック」は、各携帯キャリアのスマートフォン公式キャリアサービス電子書籍カテゴリーで1位(15年2月1日時点)を独占している。13年11月に開始したマルチデバイス対応の電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調だ。14年10月にはシフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。

 アムタスの電子書籍配信サービス「めちゃコミック」と「ekubostore(エクボストア)」の15年3月期売上高は、15年1月時点で100億円を突破した。前期よりも2ヶ月早い達成で拡大基調だ。

 また15年2月にはアムタスが、中国全土でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ、中国福建省)、ならびにグローバルに恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート)(東京都千代田区)と業務提携したと。ユーラボが制作・保有する電子コミック作品を15年5月から「めちゃコミック」で配信する。コヨンプリートに関しては第三者割当増資も引き受ける。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(4月24日公表)は売上高が前期比9.9%増の430億円、営業利益が同8.8%増の40億円、経常利益が同8.5%増の40億円、純利益が同12.6%増の23億円、配当予想が同1円増配の年間18円50銭(期末一括)としている。なお2月26日に米国SYSCOMの株式譲渡に伴う特別利益計上を発表している。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比5.0%増収、同21.2%営業減益、同18.4%経常減益、同35.9%最終減益だった。ITサービスの売上構成比変化が影響して減益だったが、ネットビジネスは電子書籍配信サービスが拡大し、eコマース分野の構造改革効果も進展しているようだ。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)81億99百万円、第2四半期(7月~9月)104億98百万円、第3四半期(10月~12月)94億11百万円で、営業利益は第1四半期2億26百万円の赤字、第2四半期8億16百万円の黒字、第3四半期3億99百万円の黒字である。営業損益は改善基調だ。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が65.4%、営業利益が24.7%、経常利益が25.7%、純利益が16.4%と低水準だが、ITサービスは売上と利益が第4四半期(1月~3月)に集中する収益構造であり、ヘルスケア事業の売上回復も期待される。ネットビジネスの収益が拡大基調であり、通期ベースで好業績が期待される。

 中期的にも、GRANDIT事業や電子書籍配信サービスなど重点分野の一段の業容拡大が牽引し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調だろう。

 株主優待制度については14年7月に導入を発表した。毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。

 株価の動きを見ると、14年11月の直近安値圏800円近辺から徐々に下値を切り上げて戻り歩調の展開だ。3月17日には980円まで上伸して1月の戻り高値975円を突破した。

 3月19日の終値948円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円13銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円50銭で算出)は2.0%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS698円41銭で算出)は1.4倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。電子書籍配信サービスが拡大基調であり、中期成長力を評価して14年7月1092円、さらに13年10月1124円を目指す展開だろう。

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