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ワイヤレスゲートは売られ過ぎ感、18年12月期2桁増益予想
- 2018/7/3 06:59
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ワイヤレスゲート<9419>(東1)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを主力に、中期成長に向けてWi-Fiインフラ構築やIoTプラットフォームなどBtoB事業を強化している。18年12月期2桁増益予想である。6月29日には訪日外国人向けモバイルWi-Fiレンタル開始を発表している。株価は5月の年初来高値から反落して水準を切り下げたが、売られ過ぎ感を強めている。
■ワイヤレス・ブロードバンド事業が主力
通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。
17年12月期事業別売上構成比は、ワイヤレス・ブロードバンド事業(BtoC事業)が97%(モバイルインターネットサービス91%、公衆無線LANサービス5%、オプションサービス1%)で、ワイヤレス・ビジネスドメイン事業(BtoB事業)が3%(認証プラットフォームサービス1%、その他法人向けサービス1%)だった。販売チャネルはヨドバシカメラと携帯電話販売最大手ティーガイアを主力としている。
個人向けワイヤレス・ブロードバンド事業は有料会員に対する月額課金収入、法人向けWi-Fiインフラ事業はアクセスポイント管理(クラウド管理)に対する月額課金収入が主力である。有料会員数およびアクセスポイント数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型ビジネスモデルである。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)を重視し、機動的かつ柔軟な自社株買いも実施する方針としている。
■中期成長に向けてBtoB事業を拡大
中期経営計画「ワイヤレスゲート2020年ビジョン中期経営計画」では、経営目標値に20年12月期売上高150億円~200億円規模、営業利益20億円~30億円規模、営業利益率13%~15%程度を掲げている。
事業戦略としては、安定収益源であるBtoC事業を堅持(Wi-Fiインフラの強化、通信サービスの再編成、通信サービスと親和性の高い周辺機器ベンダーとの協業、通信サービスの卸販売などによる販売経路の多様化)しつつ、成長事業であるBtoB事業に経営資源を集中投資(持続可能なフリーWi-Fi環境の構築、セキュアで高速・大容量な通信インフラの構築、投資を含めたビジネスアライアンス推進)する。また安定的な配当を行いつつ、中期的な企業価値の増大を目指す。
BtoB事業分野では14年11月スペインのFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年11月フォン・ジャパンを持分法適用関連会社化している。また16年9月モバイル・インターネットキャピタルと合弁でLTE-X社を設立し、産業用IoTプラットフォーム事業に本格参入した。
17年12月には、BeaconおよびIoTマネージメントプラットフォームを提供するTangerine社に追加出資した。18年3月には、スマホアプリにWi-Fi自動接続機能を簡単に組み込むことができる新サービス「WIRELESS GATE SDK」の開発を発表した。
18年4月には、VR・MR等を使った教育コンテンツ制作および学習塾を展開するテンアップと資本提携した。18年5月にはチェル社およびLTE-X社と、国内文教市場における「LTE over IP技術を活用した教育用通信サービス」に関する戦略的提携で合意した。
■18年12月期2桁増益予想
18年12月期連結業績予想は、売上高が17年12月期比1.7%増の120億34百万円、営業利益が11.1%増の10億24百万円、経常利益が13.0%増の8億83百万円、純利益が24.1%増の5億72百万円としている。配当予想は1円増配の年間29円(期末一括)で、予想配当性向は53.0%となる。
BtoC事業のワイヤレスゲートWi-Fi+WiMAXサービスでは費用対効果を見極めた会員獲得・退会防止策や販路拡大、ワイヤレスゲートSIMサービスではプリペイドSIMの販売、公衆無線LANサービスでは法人向けバルク販売、オプションサービスでは新しいサービスの投入を推進する。
BtoB事業の認証プラットフォームは、継続案件が前期と同程度で、新規受注は小型案件が中心としている。またその他法人向けサービスではLTE-X事業が順調に拡大する見込みだ。
コスト面では、BtoC事業の新サービス開始に伴う一時的費用の増加、BtoB事業で子会社LTE-Xの本格業務展開に伴うコスト増加を見込んでいるが、一方では施策見直しで顧客獲得・退会防止関連コストを抑制する見込みだ。営業外費用ではフォン・ジャパンののれん償却(10年で約16億円を償却予定)を前期と同程度計上する。
第1四半期は、売上高が前年同期比4.3%減の29億20百万円だが、営業利益が49.3%増の3億24百万円、経常利益が60.3%増の2億85百万円、純利益が2.0倍の1億90百万円だった。
ワイヤレス・ブロードバンド事業は競争激化などで5.0%減収(モバイルインターネットサービスが4.5%減収、公衆無線LANサービスが12.4%減収、オプションサービスが9.8%減収)だった。ワイヤレス・ビジネスドメイン事業は引き合いが活発で14.7%増収(認証プラットフォームサービスが61.9%減収、その他法人向けサービスが69.7%増収)だった。その他は22.2%減収だった。
競争激化などで減収だが、費用の抑制、NTTドコモからの帯域借受単価変更に伴う遡及返還額の増加などで大幅増益だった。通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高24.3%、営業利益31.6%、経常利益32.3%、純利益33.2%と順調である。通期ベースでも好業績が期待される。
■株価は売られ過ぎ感
株価は5月の年初来高値1841円から反落して水準を切り下げた。7月2日には1209円まで下押した。ただし売られ過ぎ感を強めている。
7月2日の終値1217円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS54円71銭で算出)は約22倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間29円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS307円96銭で算出)は約4.0倍である。時価総額は約129億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が17%程度まで拡大して売られ過ぎ感を強めている。反発を期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)