【どう見るこの相場】「強気相場は悲観の中で生まれる」で売られ過ぎの半導体関連株は決算発表を前に「リターン・リバーサル」の目

どう見るこの相場

 本当に悪材料出尽くしなのか?本当ならジョン・テンプルトンの箴言の「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」そのものだ。米国のトランプ政権が、中国に対して340億ドル(約3兆8000億円)の追加関税を発動し、中国も、直ちに同規模の報復関税を発動した。にもかかわらず、日経平均株価は、241円高した。6月15日に500億ドルの追加関税を発表してから、日経平均株価は、7月5日のザラ場安値まで約1400円安していたのである。日経平均株価だけではない。中国・上海株も欧州株も上昇し、一巡りして震源地の米国のニューヨーク工業株30種平均も、続伸した。

 二大経済大国の間で勃発した貿易戦争は、「悪材料出尽くし」、「悪材料織り込み済み」で世界同時株高を示現したとマーケットコメントされ、その後の週末には、残りの160億ドルの追加関税の発動は8月に持ち越しとか制裁合戦の小休止とかポジティブに観測され、トランプ大統領のお膝元では、産業界や支持者たちからの不満、反発などの不協和音もチラホラ報道されている。たとえ梅雨の中休みとしても、ともかく株高は大賛成である。相場の方向性は、トランプ大統領が決めるのではなく、マーケットが主体性、自律性を取り戻すステージに転換するかもしれない。今こそ「株価は株価に聞け」である。とすると、問題はこの株高にどう乗るかである。もちろん、当座は大きく下げた銘柄ほど大きく戻すとする投資セオリーの「リターン・リバーサル」狙いである。折から日米両市場は、決算発表のシーズンに差し掛かる。またフィラデルフィア半導体指数(SOX)も、前週末に続伸して、今年6月央からの下落幅の3分の1戻しをクリアした。下落率が大きい一方、決算発表日が間近に迫った業績期待の高い半導体関連株を両睨みすれば、期間を限定しながらだが、7月相場前半の有望銘柄がセレクトできそうだ。

■7月12日~13日に決算発表の週間下落率上位2銘柄が方向性を決めるキー・ストック

 「リターン・リバーサル」狙いの第1の候補株は、足元の7月第1週(7月2日~6日)に大きく下落した半導体関連株である。東証第1部週間値下がり率ランキングでは、第13位にローツェ<6323>(東1)、第25位にインターアクション<7725>(東1)が、それぞれ名を連ねている。この小型2銘柄の決算発表が迫っており、半導体関連株の今後を占うキー・ストックになる展開も十分にあり得る。

 ローツェは、今年1月に前2018年2月期第3四半期の高利益進捗率業績を手掛かりに年初来高値3140円まで買い進まれたが、その前期業績が、昨年10月の上方修正値より下ぶれて着地し、なおかつ増益転換を予想した今2019年2月期業績が市場コンセンサスを下回ったとして調整を続け、前週は年初来安値1720円まで売られ、週末6日は93円高したものの、週間下落率は15.19%に達した。この今期業績は、明7月12日に第1四半期(2018年3月~5月期、1Q)決算を発表予定であり、前期業績を下ぶれ着地させた韓国子会社が大量受注したガラス基板関連の自動化装置の納入は完了し、超短納期費用も一巡することから業績面の期待もでき、決算発表が要注目となる。

 一方、インターアクションは、7月13日に2018年5月期決算の発表を予定している。同5月期業績は、今年2月に発表した第3四半期決算が、通期予想業績対比で高利益進捗率を示し、このほか月2回ペースでイメージセンサ検査装置などの大口受注を発表してきた。このため株価も、2月の年初来安値から大きく居所を変え、今年6月21日に大口受注を発表したことで年初来高値1547円をつけ、83%高した。それが米中貿易戦争勃発で前週の週間下落率は、13.63%に達した。決算発表では、次期2019年5月期業績のガイダンスが問題となるが、大口受注の次期売り上げ計上があるほか、次期が同社の中期経営計画の最終年度に当たり続伸の目標数値を掲げているだけに、業績、株価とも期待の持てる展開となりそうだ。

■6月の月間下落率上位の5銘柄はPER、PBR、配当利回りの評価でも底上げ余地

 「リターン・リバーサル」狙いの第2の候補株は、前月6月の月間下落率の大きい半導体関連株である。日経平均株価は、今年6月12日に5月31日終値から3.64%高したが、6月15日に米国の制裁関税の最終案が公表され、対象品目に半導体が含まれたことで6月月末にかけ3.07%下げほぼ往って来いとなったが、前月末対比では0.46%のプラス上昇率となった。これに対して6月月間下落率ワースト50に並んだ半導体関連株の下落率は、第4位の日本電子材料<6855>(東1)が25.57%、第11位のミライアル<4238>(東1)が20.85%、第21位のCKD<6407>(東1)が19.49%、第33位のTOWA<6315>(東1)が17.38%、第46位のSUMCO<3436>(東)が15.55%と日経平均株価に大きく負け越した。しかも、ミライアル、TOWA、CKDは7月第1週に入って年初来安値へ売られ、SUMCOも、6月末に年初来安値をつけた。

 2019年3月期第1四半期(2018年4月~6月期、1Q)決算の発表は、7月31日のCKD、8月8日のTOWAと続き、日本電子材料が8月上旬に予定し、SUMCOは、8月8日に今2018年12月期第2四半期(2018年1月~6月期、2Q)累計業績を発表、ミライアルも、今年6月8日の今2019年1月期第1四期(2018年2月~4月期)業績に次ぎ9月上旬に第2四半期(2018年2月~7月期、2Q)累計決算を発表する。各社とも前期は、この四半期決算発表のたびに前期業績の上方修正が相次ぎ、増配も打ち出しており、この再現があるか注目される。なお日本電子材料は、昨年11月までは業績の下方修正と減配が続いたが、12月、今年2月に相次ぐ上方修正に転じ、今3月期業績も2ケタ増益予想にある。

 投資バリュー的にも、5社のPER評価は8倍台から12倍台と評価不足で、PBRではミライアル、TOWA、日本電子材料の3社が1倍台を割り、配当利回りもSUMCOが2.50%、CKDが2.33%と東証1部全銘柄平均を上回っており、「リターン・リバーサル」を強力サポートしよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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