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アイビーシーは上場来高値に接近、18年9月期は上振れ濃厚でIoT分野への展開も加速
- 2018/7/13 07:29
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイビーシー<3920>(東1)はネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニーである。ブロックチェーン技術の活用やIoT分野への展開も加速している。18年9月期は2桁増収増益予想である。新製品も寄与して上振れが濃厚だろう。株価は15年9月IPO時の上場来高値に接近している。中期成長力を評価して上値を試す展開が期待される。なお8月13日に第3四半期決算発表を予定している。
■ネットワークシステム性能監視ツールのリーディングカンパニー
ネットワークシステム性能監視ツール(ソフトウェア)のリーディングカンパニーである。ネットワークシステムを構成する機器や仮想サーバーの稼働・性能状況を監視し、俯瞰的かつきめ細やかに収集して表示・解析・通知を行うソフトウェアで、ネットワークシステムの障害発生を未然に防ぐことを可能にする。
情報通信ネットワークシステムが高度化・複雑化・ブラックボックス化する一方、システム環境変化による障害予兆の特定が困難になる問題が深刻化している。このためネットワークシステムの安定稼働や品質向上を実現するネットワークシステム性能監視ツールの重要性が一段と増している。
■自社開発の性能監視ツールおよび運用支援サービスを提供
マルチベンダーの機器で構成される複雑なネットワークシステム全体の稼働・性能状況を、精度の高いデータを取得して分析するネットワークシステム性能監視ツールの開発・販売および導入支援サービス、顧客のネットワークシステムに内在する問題点や課題を抽出して最適な改善策を提示する分析・性能評価サービス、ネットワークシステム設計・構築・運用支援のコンサルティングサービスを提供している。
17年9月期の事業別売上高構成比は、ネットワークシステム性能監視ソフトウェアに係る自社開発製品のライセンス(ソフトウェア使用権)販売が72%、自社製品導入支援やネットワークシステム構築に係るコンサルティングなどのサービス提供が15%、その他物販(他社製情報通信機器等の販売)が13%だった。
パートナー企業との連携強化による販売力強化では、伊藤忠テクノソリューションズ、富士通エフサス、日立システムズ、ユニアデックス、NECフィールディングなど、大手システムインテグレーターとの連携を強化している。
■マルチベンダー対応製品の自社開発とデータ・ノウハウの蓄積が強み
問題・障害の予兆をいち早く検知して問題・障害発生を未然に防ぐ手法で、ネットワークシステム性能監視に必要なマルチベンダー対応ソフトウェアを自社開発し、様々な環境下でのデータおよび統計分析・解析ノウハウを蓄積して、サービスをワンストップで提供していることが強みだ。
自社開発製品の機能拡張を推進して、対応メーカー数と分析ポイント数は06年9月期末22社・339ポイントから、17年9月期末116社・3541ポイントまで拡張した。ほぼ全ての主要メーカーに対応し、100社を超えるマルチベンダー対応で使い勝手の良い性能監視ソフトウェアは世界でも類がない。
主力製品はネットワーク性能監視ソフトウェア「System Answer」シリーズである。マルチベンダー対応で幅広いメーカー機器の性能情報を可視化できる点が圧倒的なアドバンテージとなり、累計販売実績は08年12月リリース「System Answer」シリーズと11年7月リリース「System Answer G2」シリーズの合計で、17年9月現在1200システム以上に達している。
製品開発は創業以来、システムが正しく動いているかどうかを監視し、問題が発生した際にどこで発生したのかを検知・把握する「死活監視」「状態監視」のための「保守ツール」から、性能上問題がないかどうかを分析し、障害が発生する前に問題点を検知して適切な対処を施す「性能監視」のための「収集ツール」へと発展してきた。
今後はコンピュータやネットワークシステムを維持・改善するための根拠ある「判断ツール」として活用できる「情報監視」機能を備えた製品が必要とされ、17年7月新製品「System Answer G3」シリーズを発売した。18年9月期から販売を順次本格化している。
■ライセンス販売で高収益のストック型ビジネスモデル
収益面では、主力の「System Answer」シリーズのライセンス販売という、高収益のストック型ビジネスモデルが特徴である。顧客の検収時期の影響で、第2四半期と第4四半期の構成比が高い季節要因がある。また大手優良企業を中心とした顧客構成で売上債権の貸倒実績が無く、安定的な財務体質を維持していることも特徴だ。
利益配分については、現在は成長過程にあるため、事業上獲得した資金については事業拡大のための新規投資等に充当することを優先するとしている。
■18年9月期2桁増収増益予想で上振れ濃厚
18年9月期の非連結業績予想は、売上高が17年9月期比15.1%増の14億円、営業利益が15.8%増の2億16百万円、経常利益が27.8%増の2億16百万円、純利益が12.8%増の1億29百万円としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比12.1%増の7億15百万円、営業利益が91.6%増の1億61百万円、経常利益が2.4倍の1億62百万円、純利益が2.5倍の1億07百万円だった。計画超の大幅増収増益だった。
売上高の内訳はライセンス販売が21.8%増の4億95百万円、サービス提供が4.9%増の1億09百万円、その他物販が12.9%減の1億10百万円だった。新製品「System Answer G3」の新規大型案件、および「G2」から「G3」への切り替え案件の増加が寄与した。
主力のライセンス販売が増加し、販管費の減少も寄与して大幅営業増益だった。売上総利益率は78.0%で0.8ポイント上昇、販管費比率は55.5%で8.5ポイント低下した。
通期ベースでは、新製品「G3」の販売が下期から本格化し、新サービスも寄与して2桁増収増益予想である。事業別売上高の計画は、ライセンス販売が18.2%増の10億38百万円、サービス提供が13.0%増の2億08百万円、その他物販が横ばいの1億53百万円としている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が51.1%、営業利益が74.5%、経常利益が75.0%、純利益が82.9%である。通期予想は上振れが濃厚だろう。
■中期成長戦略は「新製品発売」「成長分野進出」「サービス領域拡大」
中期成長戦略として「新製品発売」「成長分野進出」「サービス領域拡大」を掲げ、ブロックチェーン技術の活用やIoT分野への展開を加速し、性能監視のリーディングカンパニーからITサービスへの事業展開を目指している。
16年7月ブロックチェーン・IoT関連ソフトウェアのiBeed社を完全子会社化、16年8月コンセンサス・ベイス社とブロックチェーン分野で業務提携、17年6月パクテラ・コンサルティング・ジャパンとブロックチェーン分野で業務提携、17年7月iBeed社がコンセンサス・ベイス社など複数社と資本業務提携した。
17年12月IoTセキュリティ基盤サービス「kusabi(楔)」の実証実験を開始した。ブロックチェーン技術による電子証明システムと独自のデバイスプロビジョニング技術により、ソフトウェアだけでIoTセキュリティを実現する画期的なサービスである。3つの不要(専用チップが不要、認証局が不要、マルウェア対策が不要)を実現し、新たなIoT時代のセキュリティエコシステムを構築する。
18年2月IoTセキュリティ標準化に向けたコンソーシアム「kusabiコンソーシアム」設立、18年3月「kusabi」のパートナーライセンス(開発と販売の2種類)販売を開始した。18年5月にはiBeed社が、ナレッジソリューションズグループ(KSG)と連携し、保険業務プラットフォーム「iChain Base」のサービス展開に向けて、ブロックチェーン技術の商用化検証を開始した。
18年5月には「kusabi」のブロックチェーン技術を利用した電子証明システムとデバイスプロビジョニングシステムについて特許を取得した。
サービス領域拡大では、16年11月特化型クラウドインテグレーションサービス「SCI」を開始、アマゾンウェブサービス(AWS)のパートナープログラムに認定、17年4月インターネットサーバ構築・監視・運用・保守のネットフォースへ出資、17年8月「SCI」のサービスメニューの一つとして次世代MSPサービス「SAMS」を開始、17年12月マイクロソフトのAzureに特化したソリューションサービスを開始した。
■株価は15年9月IPO時の上場来高値に接近
株価は年初来高値更新の展開で7月9日には2822円まで上伸した。そして15年9月IPO時の上場来高値3075円に接近している。
7月12日の終値2684円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS23円47銭で算出)は約114倍、前期実績PBR(前期実績BPS271円47銭で算出)は約9.9倍である。時価総額は約153億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインだ。自律調整を交えながら上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)